SSブログ

井堀利宏『大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる』 [書評]

「1日で学べる」とかいう類の本はほとんどいい加減なのだが、本書は確かに10時間ぐらいの読書時間で、大学で教える経済学のエッセンスがざっと理解できる、という構成になっていて、「看板に偽りなし」と言えるのではないかと思われる。もちろん、何も知らないでこれを10時間でよんでも理解できないかとは思うが、ある程度の経済的な素養、教養があれば、さっと理解することができるであろう。もちろん、「コースの定理」とか、言葉は出てきても具体的には一切、説明がされていないような点は不十分だが、これは逆にいえば「コースの定理」は、内容はわからなくても、ざっと経済学を理解するというレベルでは言葉さえ知っておけばいいということなのかもしれない。おおまかに大学で教えるレベルの経済学を概観するのには、無駄がなく、エッセンスが凝縮されている良書であると思われた。

大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる

大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる

  • 作者: 井堀 利宏
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/中経出版
  • 発売日: 2015/04/12
  • メディア: 単行本



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

加藤寛『日本再生最終勧告』 [書評]

 慶應義塾大学の名誉教授であり、また日本の経済政策において理論と実践面で多くの貢献をされてきた著者の遺作。「原発即時ゼロ」を見届けない限り、死んでも死にきれないと言う著者が「本書は私の遺言である」というだけあって、その主張は強く、説得力がある。本書は5つの章から成り、1章から4章までは日本の電力政策の歩みを概観し、原子力政策が進められてきた背景を浮き彫りにすると同時に、その非効率性、非民主主義性を明るみにする。そして最後の章では「自立分散型電源社会」をどうすれば実現できるのか、現状の課題とその対処法を提示している。さらに城南信用金庫理事長の吉原毅と東京大学大学院教授の江崎浩との対談、また特別寄稿として曽根泰教慶応義塾大学大学院教授の原稿が付け加えられている。
 本書を読むと、原発がいかに無駄であり、正義がないことがよく理解できる。公共政策を勉強するものにとってもためになる点が多く、お勧めできる。


日本再生最終勧告 ‐原発即時ゼロで未来を拓く

日本再生最終勧告 ‐原発即時ゼロで未来を拓く

  • 作者: 加藤寛
  • 出版社/メーカー: ビジネス社
  • 発売日: 2013/03/08
  • メディア: 単行本



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

江弘毅『街場の大阪論』 [書評]

「所謂「まち」あるいは「まちづくり」についての話は、そのスタンスが経済軸からのものであるのと、そうでないのではぜんぜん違った内容になってくる。すなわち街を「消費の場」および「ビジネスの場」としてとらえるのか、あるいは「生活の場」や「遊びの場」として見るのかの違いである。」
 伝説的なまち情報誌「ミーツ・リージョナル」の編集長を長年、務めた著者の視点は、圧倒的に後者である。まちを消費の対象として分析し、カテゴライズする世の中の流れで、まちの魅力が分かるないやろ、と言う彼の舌鋒は鋭い。消費の記号といった表層論では捉えられないまちの魅力を、論理的に解説する彼の考えに触れていると、自分もまちで何かしたくなるような気分にさせられる。本書は、まちを消費の場、ビジネスの場にさせてなるものか、といった気持ちを高揚させるアジテーション的な役割も果たしていると思う。


街場の大阪論

街場の大阪論

  • 作者: 江弘毅
  • 出版社/メーカー: バジリコ
  • 発売日: 2009/03/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



nice!(5) 
共通テーマ:日記・雑感

『社会的共通資本』宇沢弘文 [書評]

ノーベル経済学賞候補にもなったという噂もある日本を代表する経済学者宇沢弘文の新書。社会的共通資本とは「一つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置」である。本書は、この社会的共通資本の考え方と役割を解説し、その重要な構成要素である自然環境、農村、都市、教育、医療、金融といった個別な事例をとりあげ、持続的な経済発展が可能になるためには、どのような制度的前提条件がみたさなければならないか、著者の考えが提示されている。ただ、これらは新書にまとめられるような内容ではなく、そういった意味では社会的共通資本はどのような考え方ぐらいは分かるが、持続的な経済発展の可能性といった著者の考えは別書を参照することが必要である(例えば東京大学出版会の『社会的共通資本』など)。


社会的共通資本 (岩波新書)

社会的共通資本 (岩波新書)

  • 作者: 宇沢 弘文
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2000/11/20
  • メディア: 新書



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

集合住宅の時間 [書評]

東京大学の建築学科の大月教授が10年ほど前に書かれたエッセイをまとめたもの。月刊誌『住宅建築』の二年連載を改訂を加えて単行本にまとめたものだが、それは人々の生活の記憶のメディアである国内の魅力的な古き良き集合住宅を紹介したものである。全部で24章、24事例(最後の事例だけおばさんが事例となっている)から構成される。日本の「消し去りの文化」によって、貴重で魅力溢れる集合住宅がどんどんと消えていくことで社会が記憶喪失になっている危機意識をゆるやかに伝える。その緩やかさが逆に、その喪失の意味の深刻さを読者に気づかせる。


集合住宅の時間

集合住宅の時間

  • 作者: 大月 敏雄
  • 出版社/メーカー: 王国社
  • 発売日: 2006/10
  • メディア: 単行本



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

「街的」ということ – お好み焼き屋は街の学校だ [書評]

 関西を中心とする街雑誌『ミーツ』の前編集長が著した新書。情報化、カテゴライズ化されている街に対する違和感、消費のランドスケープとして街を捉えるようにすることが、いかに街の理解を遠ざけるか、街を楽しむ作法から離れていくのか、ということを指摘している。それは、街は消費する対象ではなく、街にいかに受け入れられるかを考えて、自分を街の仕様に合わせることこそ、街を楽しむポイントである、と述べている。
 また、魅力ある街は「何かやろう」という人が前触れなく突然出てきて、「自分でつくった店」を出汁、そこで「自分が好きなもの」をつくったり見つけてきたりして、「自分で流行させ」、そしてそのような店が集積することでつくられる、と言う。
「それは行政による再開発や鉄道会社の駅ターミナル造成、はたまたショッピングモールやファッションビルなどが建って、それが引き金となってできた類の街とは全く違った「仕方」で」できている、と言及する。
 非常に鋭く、街の本質を解説している本であると考えられる。


「街的」ということ――お好み焼き屋は街の学校だ (講談社現代新書)

「街的」ということ――お好み焼き屋は街の学校だ (講談社現代新書)

  • 作者: 江 弘毅
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/08/18
  • メディア: 新書



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

『自由が丘スイーツ物語』 [書評]

この本は単なる自由が丘のスイーツ本ではない。それは、スイーツをテーマとした消費文化論であり、またスイーツをめぐるマチ論でもある。自由が丘というマチになぜ、スイーツ店が集まり、ユニークで個性的な魅力あるスイーツ店がつくられたのか。その要因分析をしているのだが、それはチェーン店ではなく、個店であるから。また、大企業ではなく地元の商店街がしっかりと拘った街づくりを展開してきているからだ、と言及している。自由が丘はお洒落だが、浮ついた腰の座っていないミーハーなマチというイメージがあるが、実態は企業ではなく地元の人達が、自主独立精神とチャレンジ精神で、本気で商いを展開してきたマチである。だから魅力があるのだが、本書は、その本質を見事に掴んでいる。自由が丘に住んで、都市を対象とした研究をしているものとしては、「この著者、相当、切れ者である」という印象をこの著書からは受けた。文献もしっかり押さえているし、相当数の取材もこなしている。消費文化論に関しても、ちゃんと流れを把握しており、その流れの中でいかにして日本人が洋菓子を受け入れてきたのかを分析し、整理している。しかし、それを重くせずに、スポンジケーキのようにフワッと論じているので読みやすい。口当たりはフワッとしているが中身は濃厚。まさに、この本で書かれているモンサンクレールのセラヴィのような味わいの本である。

ただ、素場らしい内容ではあるのだが、著者がこの本でお勧めとして紹介した3店のうち2店はもう閉店になっていた。出版してから5年で、著者の眼力に適ったお店が2店も潰れてしまうというのは、この街の厳しさを示唆していると思われる。


自由が丘スイーツ物語―ケーキで人を幸せにする街

自由が丘スイーツ物語―ケーキで人を幸せにする街

  • 作者: 阿古 真理
  • 出版社/メーカー: エヌティティ出版
  • 発売日: 2011/10/12
  • メディア: 単行本



nice!(1) 
共通テーマ:日記・雑感

岡部明子『バルセロナ』 [書評]

著者は東京大学の教授であるが、それ以前、磯崎新建築事務所の番頭として、バルセロナで10年間ほど働いただけあって、単にアカデミックな視点で丁寧にバルセロナを描写しただけでなく、生活者としての視点からもバルセロナを捉えており、バルセロナという世界でも最も魅力溢れる都市の特徴を時間軸、空間軸から見事に整理している。バルセロナのこれまでの歩みを理解できるだけでなく、なぜ、ここまで魅力を放つことに成功したのか、その背景を知ることができる素場らしい著書である。都市の語り部としての著者の力量の凄さが滲み出ている力作である。


バルセロナ―地中海都市の歴史と文化 (中公新書)

バルセロナ―地中海都市の歴史と文化 (中公新書)

  • 作者: 岡部 明子
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2010/08
  • メディア: 新書



タグ:バルセロナ
nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

『キャラクター・パワー』 [書評]

 なぜ日本人はキャラクターが好きなのか、という問題提起のもと、キャラクターをもとに国際文化比較論までをも展開する。しかし、その比較論の分析は出鱈目に近い。というのも「本家アメリカと日本の大きな違いは、アメリカでは、大人になると一般的にはキャラクターから卒業していく傾向があるのに対して、日本では、大人もキャラクター好きであってもおかしくないことです」という仮説に基づいているからである。キャラクターの収集癖は、アメリカでも大人になってもする人は多い。例えば、ゆるくはないかもしれないが、ティム・バートンのナイト・ビフォア・クリスマスのキャラクターを集める大人はたくさんいるし、カリブの海賊のキャラクターのコレクティブルを集める大人はたくさんいる。つまり、この著者はあまり海外のことを分かっていないのである。そのようなことは、ハーレーダビッドソンの解説で如実に分かる(p.153)。ここで著者は「(ハーレーダビッドソンは)ロックグループの大物で麻薬やスキャンダラスな事件をおこしているローリング・ストーンと組み合わされることで、そのイメージはより鮮明なものになりました」と書いているが、ハーレーダビッドソンが組んだのは雑誌の「ローリング・ストーン」誌であって、バンドのローリング・ストーンではない。こういうことも分かっていなくても、平気で本にできる人が大手広告代理店で働いていたり、大学の教員になれたりするのか、というのがちょっと驚きである。
http://www.rollingstone.com/topic/harley-davidson

 そのような知識のもとに「日本はキャラクター先進国として特異な発展を遂げたのでしょうか」などの持論を展開されても、白けるばかりである。ボードリャールとかジャック・ラカンなどの説をところどころに入れて、信憑性を高めるような手法も嫌だなあ。
 私は間違えてこの本を学生に課題図書として読ませてしまったのだが大失敗であった。そのうち、私がこの手の本を書かなくてはいけないと思わせるほどの駄本である。

キャラクター・パワー―ゆるキャラから国家ブランディングまで (NHK出版新書 426)

キャラクター・パワー―ゆるキャラから国家ブランディングまで (NHK出版新書 426)

  • 作者: 青木 貞茂
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2014/02/06
  • メディア: 新書



nice!(3) 
共通テーマ:日記・雑感

『孤独のグルメ2』 [書評]

 人は生きるために食べなくてはならない。したがって、食べることは真剣勝負である。私が会社で新人の時、部の人は皆そろって駅地下の不味い定食屋に行っていたが、一人だけこのグループに入らず一人で食事に行く先輩がいた。私は先輩に「何で一緒に行かないんですか」と言うと、「人生は短いのに、あんな不味い昼食を食べているのは人生への冒涜だ」と返事をしたので、「私も連れて行って下さい」と彼と一緒に昼食をするようにしたことがある。その先輩はしばらくして会社を辞めたのだが、私はたかが勤務中の昼食でも、このメンタリティをしっかりと持って食事に臨みたいと今でも思っている。さて、孤独のグルメの主人公であるゴローさんも食べる(生きる)ことには真剣勝負である。ただ、基本的には自分でつくるのではなく、誰かがつくったものを食堂という場所で食するのが基本だ。したがって店選びがとても重要で、そして、その後はメニュー選び。この選択をするという行為をゴローさんは真剣にする。しかし、決して優柔不断でもないし、また選択する対象に対しては謙虚である。しかし、思えば、我々の人生は選択の連続である。その選択というスリルを食事を通して、我々に伝えてくれているのではないか、と思ったりする。そこが、この漫画の面白いところであると思う。
 さて、ただし、本作、一作目に比べると、ちょっとその選択が安易になりつつあるような印象を受ける。あと、落ちがほとんどの場合、食欲を抑えられずに「食い過ぎた−、げっぷ」で終わっている。これは、原作者もちょっとストーリーづくりに安易になってしまっているような印象を受ける。満腹というルール違反をせずに、しっかりとメニューを選択してくれるゴローさんの方が好感が私は持てる。


孤独のグルメ2

孤独のグルメ2

  • 作者: 久住 昌之
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2015/09/27
  • メディア: 単行本



nice!(1) 
共通テーマ:日記・雑感

『空き家問題』 [書評]

センセーショナルな時宜的なテーマを取り扱った新書は、比較的、根拠に乏しく、一面的なものの見方をした内容のものが少なくないのだが、本書はデータに基づいて、空き家問題の実態、そして、それが日本社会にとって、どういう影響をもたらしているのか、今後、どのような影響をもたらしていくのかを、書き方は扇情的なところもあるが、しっかりと述べていて、なかなか読み応えがあった。唯一、日本創成会議の提案を鵜呑みにして、それを論拠として主張を展開していたところだけは残念であったが、供給過剰になってしまった学校やオフィスを高齢化に対応してリノベーションする具体的な事例にもとづく提案、高齢者用のシェアハウスの提案などは、実際、不動産業を営んでいるだけあって、単なるアイデアではなく、より実践的な検証もされていて参考になった。空き家問題の深刻さがよく分かるし、また、それを日本人が解決するのが苦手である、ということも本書を読むと理解できる。空き家問題に関心がある方は手に取るとよいと思う。


空き家問題 (祥伝社新書)

空き家問題 (祥伝社新書)

  • 作者: 牧野知弘
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2014/07/01
  • メディア: 新書



タグ:空き家問題
nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

『中央線がなかったら』 [書評]

 中央線がなかったら東京西部はどのように再認識されるであろうか。なかなか、興味深い着想によって本書はまとめられている。中央線はあまりにも真っ直ぐであり、あまりにも東京西部の都市構造を認知するうえでも影響が大きいので、それなくして東京西部はイメージしにくくなっているが、その先入観を取り払われたら、何が出てくるのであろうか、という問題提起は面白い。ということでわくわくして本書を読み始めた。
 本書は1部と2部とから成る。東中野周辺、中野や阿佐ヶ谷を論じた1部と、府中と日野を論じた2部である。1部は3章、2部は2章とから構成される。ちなみに本書の著者として名前があがっている三浦展も陣内秀信も、単著で書いた章はなく、おもにフリーライターと陣内さんのお弟子さん達が書いている。それでも、1部は三浦、陣内も執筆者として名前を挙げているだけあって興味深い内容だ。確かに中央線が出来る前の東京西部の空間構成は、我々が現在、抱いている空間イメージとは違うのだな、ということが分かって面白い。しかし、2部の府中と日野の章は興味深くない訳ではないが、中央線との関係性が薄い。特に、府中はそもそも中央線とは関係がそれほどないと思われる。さらに、日野は中央線の真っ直ぐの一直線が折れ曲がっており、新宿—立川間のような空間支配力は薄れている。
 私はむしろ、吉祥寺や三鷹や武蔵境、さらには立川のこと(立川は中央線ができてから、その重要性が増したと思うのだが、それ以前はどうであったかを知りたかった。特に万願寺など歴史的にもそれなりに重要な役割を果たした寺が、なぜあのようなところにあるのか、高幡不動の位置づけなども知りたかった)をむしろ書いてもらった方が、本書のテーマとは合致していたと思われる。ということで、コンセプトは非常に興味深かったのだが、若干、肩すかしの印象を持った。読んで損とまでは思わないが、結局、一番面白かったのがプロローグの陣内氏と三浦氏との対談というのは、やはり今ひとつの誹りは免れないかもしれない。値段を高くしても、頁を増やして、上記の点も網羅してもらった方が読者としては有り難かった。

中央線がなかったら 見えてくる東京の古層

中央線がなかったら 見えてくる東京の古層

  • 作者: 陣内 秀信
  • 出版社/メーカー: エヌティティ出版
  • 発売日: 2012/12/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

『郊外の衰退と再生』 [書評]

日本の郊外には多くの放棄住宅地がある、という「不都合な真実」に注目をした著者の8年間の研究をまとめたもの。著者は「いつまで経っても空き地が多いままの住宅地がある。住宅開発してから10年、20年が経過しても、空き地は減る様子がないし。少しは家が建てられ、人が住み始めている様子はあるが、とにかく空き地が多い住宅地」を「未成住宅地」と名付けた。この「未成住宅地」の実態を現地踏査と住民のアンケート調査など、まさに現場に足を運ぶ作業の積み重ねで明らかにした。その調査結果は、そのオリジナリティと着眼点の新しさから、非常に価値のあるものと思われる。日本が抱える郊外の縮退を理解するうえでは多くの知見が含まれている。ただし、おそらく出版社からの依頼かもしれないが、その対策も提示されているが、それに関してはまだ弱いところがある印象を受ける。というか、この問題の対策はそう簡単には出ないであろう。これは、世界中の多くの縮退地域が頭を抱えている政策課題であるからだ。本書の価値は、時間をかけて丹念に郊外の縮退状況を明らかにしていった調査結果にある。大変、貴重な情報である。


郊外の衰退と再生―シュリンキング・シティを展望する

郊外の衰退と再生―シュリンキング・シティを展望する

  • 作者: 吉田 友彦
  • 出版社/メーカー: 晃洋書房
  • 発売日: 2010/12
  • メディア: 単行本



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

『ライネフェルデの奇跡』 [書評]

ライネフェルデは驚くべき奇跡的な事例であることが、本書からはよく分かる。このような本が日本語で読めるのは大変有り難い。しかし、日本語訳は決してよくない。である、ですます、といった語尾が統一されていないことや、ヴィッテンベルクがウィッテンベルゲ、ライプツィヒをライプチヒ(ライプチッヒならまだ分かる)という標記ミスがやたら多い。というか、訳者はドイツ語ではWを英語のVと発音することをどうも理解していないようなのだ。他にもレクリエーションをレクレーションと記述するなど、カタカナがおかしい。これは出版社が当然、チェックするべきことであるので、訳者の責任ではないと思うが、読みにくい。訳者は大学の先生であるが、おそらく学生か誰かバイトが訳したのであろう。その点は残念だ。ドイツ語が得意な人は原書を読むことをお勧めする。


ライネフェルデの奇跡 まちと団地はいかによみがえったか (文化とまちづくり叢書)

ライネフェルデの奇跡 まちと団地はいかによみがえったか (文化とまちづくり叢書)

  • 作者: W キール
  • 出版社/メーカー: 水曜社
  • 発売日: 2009/09/03
  • メディア: 大型本



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

東京五輪で日本はどこまで復活するのか [書評]

著者は本当に大学の教員なのであろうか?その分析の視座、自分勝手な推論。私も同職だが、このレポートは学部の卒論の中間発表でも書き直させる。本当に森ビルの研究所はこの著者に仕事を任せているのだろうか。そもそも、都市政策専門家というが、都市政策の目的のビジョンが21世紀のものとは思えない。著者はどうも東京オリンピックには随分と思い入れがあるようだ。後書きに堂々と書いている。そして、再び復活、というシナリオを描いているが、ドリーム効果とかいう訳の分からない概念を応用させての効果測定はまったくもって非論理的で、ほとんど妄想のレベルである。私は、むしろエンブレムにしろ、新国立競技場にしろ、この東京オリンピックで気持ちは浮かれるどころかどんどん沈んでいる。ここまで日本は駄目なのか、というのを世界中に知らしめている。特にザハ・ハディドの国であるイギリスの攻撃は凄いものがある。著者は日本国民が全員、著者と同じようにわくわくしている前提でこの本を書いているが、実態とは大きく遊離していると思う。ロンドン・オリンピックがこれだけ効果があったということで、東京オリンピックも同様かそれ以上の効果があるとの分析も出鱈目だ。ロンドンと東京では、不動産投資に関連する法律などがまったく違う(ロンドンは外国人でも土地を容易に購入することができる)。また、ロンドン・オリンピックはブラウン・フィールドを再開発するための手段として都市計画的に極めてしっかりと位置づけられていて、跡地利用も素場らしいものがある。東京のどこに、そのような都市計画が存在しているのか。本当に著者は都市計画の専門家なのか。とても信じられない。本書の内容というよりかは、著者が社会的にちゃんとした職業についていることの方がより大きなショックを受ける。
nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

『機械との競争』 [書評]

150頁強の薄い本ではあるが、内容は極めて濃い。MIT(マサチューセッツ工科大学)の経済学教授と同大学のビジネス・スクールに務める科学者による共著。機械というよりかは、コンピューターの発展によって今後、多くの雇用が奪われるだろうという仮説を前半では検証する。どのような仕事がコンピューターに奪われ、どのような仕事は奪われないか、などの推測はたいへん興味深い。ただ、内容的には悲観的と思うかもしれないが著者は、将来展望は明るくなるのではないかと推察している。「デジタル技術は、分散した人それぞれの知識を経済全体の利益のために活用する機会を大量に生み出している」ため、うまくそれを活用する企業にとってチャンスはますます増えてくる、という見解を示している。ただし、「大学を出たら毎日上司にやることを指示されるような従来型の仕事に就こうなどと考えていると、いつの間にか機械との競争に巻き込まれていることに気づくであろう。」これから仕事に就こうとしている大学生や、またリストラされそうな社会人に読むと益が大きい本であると思われる。

機械との競争

機械との競争

  • 作者: エリク・ブリニョルフソン
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2013/02/07
  • メディア: 単行本



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

『日本の絶景鉄道』 [書評]

日本の美しい風土の中を走り抜ける鉄道。日本という国は美しいこと、そして、その美しい国土は鉄道によって我々と結ばれていることを再認識でき、日本で生まれ育っている幸せと、その美しい国土を鉄道に乗って見に行かなくては、という旅情をかき立てる写真集である。惜しいことは、北海道が函館本線と釧網本線の2写真しか載っていないこと。随分と廃線にはなってしまったが、それでも宗谷本線とか石勝線とか、富良野線とか根室本線とか素晴らしい鉄道風景があるような気がする。また、写真の撮影データが皆無で、これは残念。


ニッポンの絶景鉄道

ニッポンの絶景鉄道

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: パイインターナショナル
  • 発売日: 2015/06/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



nice!(1) 
共通テーマ:日記・雑感

Managing Population Decline in Europe's Urban and Rural Areas [書評]

本が届いて、その薄さにびっくり。索引を除けば、わずか80頁である。これは、しっかりとみれば分かったので情報をちゃんとチェックしなかった私の責任であるが、値段が高いので油断した。一頁100円ぐらいの値段だ。さて、一頁100円の価値があればそれでもいいのだが、その点は微妙である。タイトルにはヨーロッパと書かれているが、基本的にはオランダの縮小に関する本であり、オランダの縮小都市の事例や縮小現象が中心となっている。オランダの縮小がヨーロッパ全体と比べてどういう特徴があるかなどの分析で、ヨーロッパの状況も分かるが、基本的にはEurope's ではなく Netherland's とタイトルはすべきであろう。オランダの縮小都市の状況などが英語で読めるという点では価値はあるが、コスパは悪い。また、新しい観点はなく、これまでのDiscourseを整理したという内容であり、その点はあまり評価できない。

Managing Population Decline in Europe's Urban and Rural Areas (SpringerBriefs in Population Studies)

Managing Population Decline in Europe's Urban and Rural Areas (SpringerBriefs in Population Studies)

  • 作者: Gert-Jan Hospers
  • 出版社/メーカー: Springer
  • 発売日: 2014/12/01
  • メディア: ペーパーバック



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

『電力改革と脱原発』 [書評]

本書は、これまで著書が発表した「脱原発の経済学」、「放射能で汚染された廃棄物」の続編であり、これら二著が発表された後の新たな動きを電力システム改革を切り口とすることでまとめたものである。著者によれば「電力システム改革により、電力会社は、地域独占企業から競合する電気事業者のなかの一企業への転換を余儀なくされる。」そのような流れを著者は学者らしく、データをもとに、丹念に論理を構築させていく。本書を読めば、原発が安い、という説がいかにいい加減であるかがよく分かる。原発反対派も推進派も読んでもらいたい。原発の経済面からの問題がしっかりと分かりよく整理されている。

電力改革と脱原発

電力改革と脱原発

  • 作者: 熊本 一規
  • 出版社/メーカー: 緑風出版
  • 発売日: 2014/12/13
  • メディア: 単行本



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

rockin'on BOOKS vol.2 LED ZEPPELIN [書評]

「ツェッペリン、究極の1冊」という帯のコピー通りの、充実したツェッペリン本。誰よりもツェッペリンを知っていると自負する渋谷陽一による各アルバムの解説、ページとの2万字インタビュー、さらに全楽曲の徹底レビュー。ロックの怪物バンド、レッド・ツェッペリンの偉大さ、凄さがよく理解できる本であり、これを読むことでツェッペリンをより楽しむことができる。最後に渋谷陽一がリユニオン・コンサートの感想を書いているのだが、そこで「ツェッペリンは曲に宿り、ツェッペリンはグルーヴに宿っているのである。それを導き出すのはメンバーだが、あくまでも彼ら自身がツェッペリンであろうとする覚悟と準備がない限り、ツェッペリンのマジックは降臨しないのである。」けだし名言である。誰よりもツェッペリンを理解しているからこその鋭すぎる分析である。

rockin'on BOOKS vol.2 LED ZEPPELIN

rockin'on BOOKS vol.2 LED ZEPPELIN

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ロッキング オン
  • 発売日: 2009/12
  • メディア: 単行本



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

アイドル国富論 [書評]

AKB48が流行ったのは時代が「ヘタレマッチョ化」したからだと説く、とんでも本。著者はオタク未満、素人以上の芸能通であり、そして知ったかぶりの社会学者気取りである。今時、マズローの欲求5段階説で、世の中の流れを見ようという行為自体、もう読んでいてイタクなる。社会の変化を「なんちゃってマッチョ」、「へたれマッチョ」「グローバルマッチョ」といったキーワードで分析しようとするが、少なくとも私には全然、響かない。ちなみに私は、山田昌弘の「パラサイト・シングル」、三浦展の「ファスト風土」、宮台真司の「終わりなき日常」など優秀な社会学者が提唱するキーワードに猛烈に反応する類である。しかし、時代が「ヘタレマッチョ」というのは、隠喩としても説得力がないし、何より、センスがない。優れた社会学者の上記のようなキーワードは社会をしっかりと透徹した分析力に加え、センスがいいのだ。全然、受けないあだ名を仲間につけて、つけた本人だけが使っているような印象を受ける。

ちょっと私の解説で納得できない人もいるだろうから、引用させてもらう。
「現代アイドルは日本社会の中核を占めるヘタレたちのマッチョ化を支える社会心理学的な機能を体現している、いわば日本のグローバル市場主義の精神インフラであるといってもよいでしょう。」(p.184)
「アベノミクスが支持されたことは、単純な雇用の安定でも、給与の上昇でもなく、誰もが「被支配感」をあまり感じずに生きていきたいという「中産階級社会」の理想がまだ日本において生きているからではないでしょうか」(p.199)
「この、ヘタれているのだけれど懸命にマッチョに日々を生きる態度をもつ「ヘタレマッチョ」が支えるこの「アイドルの国」において、現代アイドルはもはや社会的インフラと言っても過言ではないでしょう。」(p.202)
「本来マッチョ側にいるはずの大槻ケンジに…….」(p.244)(大槻ケンジは全然、マッチョじゃないでしょ)。
「マッチョ社会の中から大衆文化という少しだけヘタレ寄りの空間に生まれたロック系文化と、ヘタレ社会の中のヘタレ文化の極致であったアイドルがマッチョ主義の中で少しだけマッチョ側に歩み寄って生まれた現代アイドルの邂逅。」(p.246)

私がクラブのホステスで著者が来て、この本のようなことを述べたら、ちょっと客であっても聞くに堪えないと思う。ここまで、出鱈目をいかにものキーワードを連ねてしゃべれるのは、確かに1つの才能かもしれないが、それを真に受ける人は相当、少ないのではないのだろうか。基本的にこの本は、著者があまり根拠のない仮説を出して、その仮説を論証するために、根拠の薄い説明をして、その説明をさらにまた根拠の薄い我説で説明するという、嘘を嘘で塗り固める、嘘の無限ループのような内容である。そして、このような出鱈目な内容の本を出そうとするとはどんな神経の太い人なのかと調べたら、経産省の役人だった。納得!。それにしても、この出版不況によく、ここまでの駄本を東洋経済新報社は出せたものだ。著者というよりかは、出版社の見識を疑うほどの駄本。そうそう、東浩紀が帯で推薦しているが、これはこの本が推薦に値するのではなく、東が過大評価された評論家であることをむしろ示唆していると思われる。類似のテーマでは香月孝史の「アイドルの読み方」(青弓社)の方がはるかに優れており、またAKB関連でもそれほどはよくはないが、田中秀臣の「AKB48の経済学」(朝日新聞出版)の方がよい。というか、田中のは読む価値はあるが、この本はまったくない。途中でごみ箱に捨てようかと何度も思ったが、レビューをするためだけに最後まで読んだ。私のように時間の無駄を他の人がしないために、この本を読むという苦行を積んだので、参考にしていただければ幸いである。この本はおそらく私の主観を越えて、駄目な本であると個人的には確信している。

nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

がんばれ!銚子電鉄 [書評]

銚子電鉄の経営危機をぬれせんべいを買ってと、支援をホームページを募ったら、多くの人が注文をしてくれて、その結果、危機を乗り越えることができた、という心温まるエピソードの当事者が、その背景(ビハインド・ザ・シーン)を語った本。エピソードが、なんか世の中って見捨てたもんじゃないよね、と思わせてくれるので、読んでいると肯定的な気分になる。さて、本は6章から構成される。1章がこのエピソードをまとめたもの。これは非常によい。2章は銚子電鉄の歴史。これは1章ほど読む価値はないかもしれないが悪くない。そして3章であるが、これは著者の話になる。この章は正直、どうでもいい感がしてくる。4章は3章の続編的なものとなり、5章は著者の大学院での話、長浜の紹介など、さらにどうでもいい感が増す。最後の6章になると、著者のローカル鉄道視察記録、みたいなものとなってしまい、いやホームページで読むならいい内容だが、本として読みたいとはあまり思わない。ということで1章は5つ星、2章は4つ星、3章~4章は2つ星、5章~6章は1つ星、ということで平均では3星という評価になります。というか1章、そして興味があれば2章までだけ読めば十分かと思います。

がんばれ! 銚子電鉄

がんばれ! 銚子電鉄

  • 作者: 向後 功作
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2008/01/31
  • メディア: 単行本



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

「アイドル」の読み方 [書評]

1980年生まれの若手社会学者によるアイドル論。アイドルという皆が分かっているようで、実はその定義が難しいテーマを扱っている。さらに、社会環境の変化に伴って、いかにアイドルらしさ、アイドル像が変化してきたかを豊富なる文献調査をベースに鋭い分析によって解説している。そして、現在は、アイドル当人の主体性らしさこそが消費されるコンテンツになっていると言及している。AKB48がなぜ人気を持っているのか、地元アイドルが急増している背景、などがよく理解できる良書であると思われる。

「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う (青弓社ライブラリー)

「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う (青弓社ライブラリー)

  • 作者: 香月 孝史
  • 出版社/メーカー: 青弓社
  • 発売日: 2014/03/20
  • メディア: 単行本



nice!(1) 
共通テーマ:日記・雑感

『都市の魅力アップ』 [書評]

元大阪大学の鳴海先生とそのグループとで著した本。前半は、鳴海先生が都市の魅力とは何ぞや、ということを論理的に解説してくれている。そして、後半は実際、鳴海先生の教え子達が、一社会人の立場から、大阪という都市の魅力をアップさせるために活動し、そして実際成果が得られたプロジェクトの紹介をしている。ここにプロジェクトの紹介と書いたが、著者が主体的にそのプロジェクトに関わったので、生の声が聞こえて、大いに参考になる。日本の都市はこれまで行政主体でまちづくりが行われてきたが、何か、大きな転換点を迎えているのかな、とさえ思わせるような刺激的な内容となっている。まちづくりを実践したい人にとっては、相当密度が濃い本であると思われる。


都市の魅力アップ

都市の魅力アップ

  • 作者: 鳴海 邦碩
  • 出版社/メーカー: 学芸出版社
  • 発売日: 2008/03/10
  • メディア: 単行本



nice!(1) 
共通テーマ:日記・雑感

『勝つための論文の書き方』 [書評]

鹿島茂が大学生を対象に論文の書き方をトレーニングしているプロセスで考えてきた、論理的な思考を伴う論文の書き方を解説している、いわばハウツウ本である。論文を殺人捜査に例えたり、推理小説のように面白くするといいなどたいへん分かりやすく、論文の書き方を教えてくれる。また、論文を書くというトレーニングは、いろいろとビジネスをするなど実生活にも役立つことも説明しており、論文をこれから書こうとする人には有益な内容に溢れている。


勝つための論文の書き方 (文春新書)

勝つための論文の書き方 (文春新書)

  • 作者: 鹿島 茂
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2003/01
  • メディア: 新書



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

「美味しんぼ」111巻 [書評]

この巻は料理漫画ではなく、福島の被災地のルポルタージュ漫画である。したがって「美味しんぼ」であって、「美味しんぼ」ではない。「美味しんぼ」の主人公達が福島の被災地を訪れ、いろいろと現状を調査、観察し、それについて意見を述べている。この巻は「鼻血事件」で随分と政治家とマスコミが叩いたエピソードも掲載されているが、その描写は、もしかしたら放射能と因果関係があるかもと思わせるようなもので、とりたて地元の人に失礼とかいうものでもないという感想を持った。実際、福島で鼻血を出した人達は同じような不安を覚えていたであろう。「福島の復興なくして日本の復興はない」と最後に海原雄山が述べるなど、むしろ、福島の人達側の視点で描かれている、福島の人達を貶めるといった批判の180度逆の視点で描かれているという印象を持った。この漫画で、福島の現状はよく理解できたし、それは自分の福島の視察や現地の人の取材等で知り得たこととほとんどずれはない。福島のことを理解したかったら、是非とも読むべき本であると思われる。


美味しんぼ 111 (ビッグコミックス)

美味しんぼ 111 (ビッグコミックス)

  • 作者: 雁屋 哲
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2014/12/10
  • メディア: コミック



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

『撤退の農村計画』 [書評]

 若手の学者、実践者による「責め」の農村を持続する戦略論。タイトルだけをみると、乱暴な印象を与えるが、本書の内容はたいへん丁寧に限界集落等の農村の問題点を、統計データ等をもとに分析し、農村を維持するための合理的な戦略として「撤退」を提案している。
 本書から引用させてもらう。
 「「積極的な撤退」はふたたび訪れる農山村の時代に向けての準備であり、その先には、希望ある未来、持続性のある社会が待っている」。
 「絶滅危惧の町」などと述べて、いたずらに不安感を煽るような本とはまったく一線を画した、真摯に農村のことを考えた著者等による誠実であり、かつ現実的な提案である。人口縮小に関心のある読者、または限界集落などの対応を考えたい人などは必読であると思われる。

撤退の農村計画―過疎地域からはじまる戦略的再編

撤退の農村計画―過疎地域からはじまる戦略的再編

  • 作者: 林 直樹
  • 出版社/メーカー: 学芸出版社
  • 発売日: 2010/08/30
  • メディア: 単行本



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

『ブラジル学入門』 [書評]

 ブラジルという多元的でよく分からない国を分析するうえでは、政治、経済といった正攻法のアプローチより、むしろ「ブラジル学」という総合的なモノサシではかる方がよい、という考えから、ブラジルで40年近く暮らした著者がブラジルという国を構成している宗教、言語、風俗、習慣、教育、価値観など諸民族や人種の文化をテーマ別に取り上げている。
 筆者は1936年生まれで1954年に渡伯している。新聞記者をしていたこともあり、文章は非常にうまく、読みやすい。そして、たいへんな博識である。ブラジル関連の著書はいくつか読んだが、結構、眉唾ものが多い印象を持っている。本書はそれらとは違い、ブラジルに根を下ろした著者が、しっかりと文献等を確認しつつ書いたものであり、エッセイ風ではあるが、内容は説得力がある。私自身、ブラジルには二桁の回数、訪れているが、ブラジルを知るうえで、本書ほど手っ取り早く理解させてくれたものはなかった。摩訶不思議なブラジル社会を知るうえで、たいへん参考になる本であると思う。

ブラジル学入門

ブラジル学入門

  • 作者: 中隅哲郎
  • 出版社/メーカー: 無明舎出版
  • 発売日: 1997/12
  • メディア: 単行本



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

コトラーが教えてくれたこと 女子大生バンドが実践したマーケティング [書評]

昨年、女子大生のアイドル・ユニットを10ヶ月間、プロデュースした。CDも製作し、FM横浜や台湾のテレビ・ニュースにも出演し、地元のコミュニティ誌の表紙を飾ったり、各地の商店街のイベントや地元の都議会議員のパーティーなどにも出演させてもらった。東京せんべい協会のプロモーショナル・ソングを提供したりもした(http://www.arareosenbei.com)。まあ、それなりの成果も出せたが、CDはそれほど売れず、まあ私としては高校野球でいえば県のベスト16ぐらいの達成感しか得られていない。ということで、何が足りなかったのか、それらを考察するためにも手に取った本が、この『コトラーが教えてくれたこと 女子大生バンドが実践したマーケティング』である。

ライトノベル形式で文章は読みやすい。しかし、ちょっとストーリーをコトラーの考えに無理矢理、押しつけた感がしない訳でもない。簡単にコトラーの考え方を表層的に理解するうえではそれなりの意味があるかとは思うが、ストーリー的には面白くはない。そして、落ちは女子大生バンドの成功ではなく、彼女の手作り感のする総菜デリバリーでの成功であった、ってバンドを舐めているのか。いやあ、タイトルに騙された。女子大生バンドがバンドせ成功する話かと思っていた。


コトラーが教えてくれたこと 女子大生バンドが実践したマーケティング

コトラーが教えてくれたこと 女子大生バンドが実践したマーケティング

  • 作者: 西内啓
  • 出版社/メーカー: ぱる出版
  • 発売日: 2010/12/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

「アベノミクス」の真相 [書評]

本書は「妖怪アベノミクス」の正体を見極める試みとして位置づけられている。筆者は、「妖怪アベノミクス」は毒性が強く要警戒が必要だと警鐘を鳴らす。しかし、その中身を分析すると、そのあやかしは、相当に浮世離れしていて、虚構の世界であると言う。論法は鋭く、簡潔。アベノミクスという妖怪が放つ出鱈目(円安で日本経済は復活する、アベノミクスで消費が増える)を、舌鋒鋭く突っ込んでいくその論理は明快でいて、面白い。アベノミクスに騙されてないためにも、ページも少ないので、ちょっと気軽に読むといいと思う。


「アベノミクス」の真相

「アベノミクス」の真相

  • 作者: 浜 矩子
  • 出版社/メーカー: 中経出版
  • 発売日: 2013/05/25
  • メディア: 単行本



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感