『空き家問題』 [書評]
センセーショナルな時宜的なテーマを取り扱った新書は、比較的、根拠に乏しく、一面的なものの見方をした内容のものが少なくないのだが、本書はデータに基づいて、空き家問題の実態、そして、それが日本社会にとって、どういう影響をもたらしているのか、今後、どのような影響をもたらしていくのかを、書き方は扇情的なところもあるが、しっかりと述べていて、なかなか読み応えがあった。唯一、日本創成会議の提案を鵜呑みにして、それを論拠として主張を展開していたところだけは残念であったが、供給過剰になってしまった学校やオフィスを高齢化に対応してリノベーションする具体的な事例にもとづく提案、高齢者用のシェアハウスの提案などは、実際、不動産業を営んでいるだけあって、単なるアイデアではなく、より実践的な検証もされていて参考になった。空き家問題の深刻さがよく分かるし、また、それを日本人が解決するのが苦手である、ということも本書を読むと理解できる。空き家問題に関心がある方は手に取るとよいと思う。
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