「美味しんぼ」111巻 [書評]
この巻は料理漫画ではなく、福島の被災地のルポルタージュ漫画である。したがって「美味しんぼ」であって、「美味しんぼ」ではない。「美味しんぼ」の主人公達が福島の被災地を訪れ、いろいろと現状を調査、観察し、それについて意見を述べている。この巻は「鼻血事件」で随分と政治家とマスコミが叩いたエピソードも掲載されているが、その描写は、もしかしたら放射能と因果関係があるかもと思わせるようなもので、とりたて地元の人に失礼とかいうものでもないという感想を持った。実際、福島で鼻血を出した人達は同じような不安を覚えていたであろう。「福島の復興なくして日本の復興はない」と最後に海原雄山が述べるなど、むしろ、福島の人達側の視点で描かれている、福島の人達を貶めるといった批判の180度逆の視点で描かれているという印象を持った。この漫画で、福島の現状はよく理解できたし、それは自分の福島の視察や現地の人の取材等で知り得たこととほとんどずれはない。福島のことを理解したかったら、是非とも読むべき本であると思われる。