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『キャラクター・パワー』 [書評]

 なぜ日本人はキャラクターが好きなのか、という問題提起のもと、キャラクターをもとに国際文化比較論までをも展開する。しかし、その比較論の分析は出鱈目に近い。というのも「本家アメリカと日本の大きな違いは、アメリカでは、大人になると一般的にはキャラクターから卒業していく傾向があるのに対して、日本では、大人もキャラクター好きであってもおかしくないことです」という仮説に基づいているからである。キャラクターの収集癖は、アメリカでも大人になってもする人は多い。例えば、ゆるくはないかもしれないが、ティム・バートンのナイト・ビフォア・クリスマスのキャラクターを集める大人はたくさんいるし、カリブの海賊のキャラクターのコレクティブルを集める大人はたくさんいる。つまり、この著者はあまり海外のことを分かっていないのである。そのようなことは、ハーレーダビッドソンの解説で如実に分かる(p.153)。ここで著者は「(ハーレーダビッドソンは)ロックグループの大物で麻薬やスキャンダラスな事件をおこしているローリング・ストーンと組み合わされることで、そのイメージはより鮮明なものになりました」と書いているが、ハーレーダビッドソンが組んだのは雑誌の「ローリング・ストーン」誌であって、バンドのローリング・ストーンではない。こういうことも分かっていなくても、平気で本にできる人が大手広告代理店で働いていたり、大学の教員になれたりするのか、というのがちょっと驚きである。
http://www.rollingstone.com/topic/harley-davidson

 そのような知識のもとに「日本はキャラクター先進国として特異な発展を遂げたのでしょうか」などの持論を展開されても、白けるばかりである。ボードリャールとかジャック・ラカンなどの説をところどころに入れて、信憑性を高めるような手法も嫌だなあ。
 私は間違えてこの本を学生に課題図書として読ませてしまったのだが大失敗であった。そのうち、私がこの手の本を書かなくてはいけないと思わせるほどの駄本である。

キャラクター・パワー―ゆるキャラから国家ブランディングまで (NHK出版新書 426)

キャラクター・パワー―ゆるキャラから国家ブランディングまで (NHK出版新書 426)

  • 作者: 青木 貞茂
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2014/02/06
  • メディア: 新書



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