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エドワード・ホール『The Hidden Dimension(隠れた次元)』 [書評]

エドワード・ホールの『The Hidden Dimension』を読む。古典であり、私のような立場だと読んでおかなくてはいけない本だったのだが、ずっと積ん読してしまっていた。そして、読み終わって、やはり古典は読む価値があるな、ということを改めて認識すると同時に、これまでの自分の怠惰を反省する。

1964年に出された本であるので、いろいろと事例に関しては古いところがある。また、今だったらまずあり得ないNegroという言葉がたくさん出てきたり、日本の描写も多いのだが、1950年代の日本と現在とでは随分と違うので、そういう違和感は感じなくもない。加えて、基本、都市における人口成長が問題となっていた時代に書かれているので、「crowding」(混雑)が問題となっている。都心の衰退が問題であることを指摘しているが、コンパクト・シティが政策となっている現在の日本からすると、まさに隔世の感がする。

まあ、そういった気になる点がない訳ではないが、人が空間をどう認識するか、ということに関しては現在にもまさに通じる点であり、それに対しての人類学、生物学、心理学、社会学などに及ぶ膨大なる研究成果から考察する著者の頭脳の明晰ぶりは、唸らされるものがある。本当、もっと早く読んでおけよな、と自分を叱るような本であった。


The Hidden Dimension (Anchor Books a Doubleday Anchor Book)

The Hidden Dimension (Anchor Books a Doubleday Anchor Book)

  • 作者: Hall, Edward T.
  • 出版社/メーカー: Anchor
  • 発売日: 1990/09/01
  • メディア: ペーパーバック



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山川出版社の『ポーランド・ウクライナ・バルト史』 [書評]

山川出版の世界各国史シリーズのポーランド・ウクライナ・ベラルーシ・リトアニア・ラトヴィア・エストニア版。おもにポーランド、そしてウクライナのことにページが割かれている。東欧のドイツとロシアという強国に挟まれ、周辺諸国に翻弄された地域の歴史は、私が勉強不足ということもあったが興味深い。国とは何なのか?ということを深く考えさせる。ロシアがウクライナはロシアだ!と主張して侵略戦争を行っているが、この本を読むと、全然、ロシアじゃないな、ということがよく理解できる。そして、国においての言語の重要さを改めて認識する。あと、私は、ポーランドは結構、悲劇の国というか、被害者的に見ていたのだが、結構、ポーランドも随分と周辺を侵略したり、第二次世界大戦後もユダヤ人の虐殺事件を起こしたりしていて、加害者的な側面もあるのだな、ということも知る。いやいや、しかし、東欧、本当、侵略と略奪の歴史だ。日本はなるほど、これと比べると牧歌的である。戦争っていってもほとんど内戦が中心だったし。あと、こうやって歴史をみると、ドイツも相当、荒っぽいが、それに比べてロシアは改めて血塗られた歴史の国である。悪魔のようだ。そして、その悪魔の所業を21世紀になっても繰り返している。鈴木宗男とか森喜朗とか佐藤優とか、プーチンのポチのような日本人が結構いるが、こんな国に尻尾を振るという破廉恥行為には改めて驚いてしまう。ロシアの東欧にしてきた所業をすれば、日本だっていつ同じように侵略されるか分からない。その時、こういうプーチンのポチは手引きをするのだろうか。本当、日露戦争で奇跡的にでも勝ってよかったな、ということをこの本を読んで思い知る。
 あと、内容とは関係ないが、数人の著者によって書かれているのだが、著者によってその文章の分かりやすさに大きな差がある。ここらへんが改善されると有り難い。


ポ-ランド・ウクライナ・バルト史 (世界各国史 新版 20)

ポ-ランド・ウクライナ・バルト史 (世界各国史 新版 20)

  • 出版社/メーカー: 山川出版社
  • 発売日: 1998/12/15
  • メディア: 単行本



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岩崎芳太郎『地方を殺すのは誰か』 [書評]

鹿児島を中心として事業を行っている岩崎産業代表取締役社長による著書。中央集権型の統治構造、官僚的なアプローチがいかに地方を蝕んでいるか。その問題を自らが経営上、直面してきた理不尽さを事例とし、読者に訴えかける。当事者として、それらの不合理を経験しているので、その主張には説得力がある。2008年に書かれたものだが、地方の現状はさらに悪化しているだろう。まさに青息吐息の状況である。中央集権を一刻も早く是正し、地方主体の連邦制度のような政治システムを構築すべきであるとは、私もずっと考えていることであるが、その考えをさらに確信させてくれるような本である。この著者のような人達がまだ地方で踏ん張っている間に、中央集権の官僚的な社会構造を改革させないと、本当、手遅れになる。そして、手遅れになった時の日本という国家は、相当、悲惨な状況にあるのでは。いや、既にもう相当、悲惨な状況になっているのかもしれない。


地方を殺すのは誰か

地方を殺すのは誰か

  • 作者: 岩崎 芳太郎
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2009/01/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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『環境保全と景観創造』 [書評]

本書は景観計画の泰斗である西村幸夫氏が1980年代後半から1990年代半ばまでに発表した歴史的環境保全および景観創造に関する論文を中心に一冊にとりまとめたものである。アメリカ、イギリスといった英語圏での景観政策を中心に、また日本での著者の景観づくりの試みなどが記されている。日本の景観政策は、その後、景観法が成立したりして、政策的状況は大きく変わったが、環境保全と景観創造をする意義は著者が指摘した時から変わっていない。25年以上前に出された本であるが、今でも学ぶべきところが多いことが書かれている。


環境保全と景観創造: これからの都市風景へ向けて

環境保全と景観創造: これからの都市風景へ向けて

  • 作者: 西村 幸夫
  • 出版社/メーカー: 鹿島出版会
  • 発売日: 1997/09/01
  • メディア: 単行本



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中沢新一『アースダイバー・東京の聖地』 [書評]

私は、中沢新一の思索が好きである。その中でも「アースダイバー」はとても刺激的で興味深く思っている。今回は、東京の聖地、という内容だが、昨今、都市開発的に話題となった築地市場と明治神宮の二つしか取り上げていない。そして、築地市場の方が明治神宮の二倍のページを割いている。

築地市場に関しては「仲買人」が作り出す価値をしっかりと認識しろ!という主張である。そして、その主張は極めて高い説得力を有している。私も、前からそう思っていたというところもあるが、中沢新一はその主張を膨大なる知識と情報から裏付ける。その迫力は凄まじい。

もう一方の明治神宮は内苑に関してはとても興味深く、なるほどと読ませてもらったが、外苑の方はそれほどしっくりとはこなかった。ただ、この本では建築家の伊東豊雄氏との対談があるのだが、伊東氏の建築家としての思考レベルの高さには圧倒された。彼の優れた思考を中沢氏はしっかりと対談で引き出すことに成功していると思う。

明治神宮の項を読み、改めて二回目の東京オリンピック開催は天下の愚策であったことを知る。そもそも、東京オリンピックを開催しようなどと考えるべきではなかったし、もし開催したのであれば都市開発が必要な地域、私は、それは国道16号線沿い(もしくは外郭環状道路沿い)だと思うのだが、そこに競技施設を立地すべきであったろう。リオデジャネイロはまさにそのように問題のある郊外部に競技施設を分散配置したが、そのリオデジャネイロよりも大都市である東京が「コンパクト」などというまったく訳の分からないコンセプトを打ち出し、その結果、貴重な外苑に競技場をつくるなどということになり、結果、迷走した。もちろん、その背景にはオリンピックのお金で国際競技場を作り直したい、といった思惑などもあったのだろうが、そういう細かい金銭的なことに振り回されてオリンピックをしてしまった結果、次代に残すようなものをまったくつくることができなかった。コロナということもあったが、バルセロナ以降、まったく都市を改変できなかったオリンピックは市民主体のアトランタと国家財政を破綻させるきっかけとなったアテネ以外では東京しかなかったことを我々は猛省すべきである。

そして、改めて明治神宮外苑の再開発はとんでもないことをしているな、ということを再確認する。そもそも、ここを再開発しようと東京都が考えるということ自体がおかしすぎる。都市においては、聖なる地が必要である。それは、金銭的な価値はもたらさないかもしれないが、人は金銭的な価値で生きている訳ではない。人間という生命体は金銭的なもの以外も多くを必要とし、日本人は見事な知恵で「自然の内蔵する地球的な知性」を都市の中に維持させることに成功した。その知性を破壊するような行為を民間ではなく、東京都という公共体が実施しようとするのは、これは亡国の愚策である。そういうことは前から思っていたが、本書はそういう考えを見事、テキスト化してくれている。



アースダイバー 東京の聖地

アースダイバー 東京の聖地

  • 作者: 中沢 新一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/12/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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鈴木博之著『都市へ』「日本の近代10」 [書評]

中央公論新社の「日本の近代」のシリーズ本の「都市へ」。著者は東大建築学科の鈴木博之教授。この本は400ページと結構、字数も多いが、その密度は濃い。著者の恐るべき博学が詰まっており、読み応えがある。歴史を消し去る都市には歴史はできない。建築史が専門の著者だけあり、また「都市の地霊」などの著書もあるだけあり、都市が重みを増し、その価値を蓄積させるために何をするべきかを考えるうえでは極めて示唆に富む内容となっている。


日本の近代 10 都市へ

日本の近代 10 都市へ

  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1999/02/01
  • メディア: 単行本



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『ル・コルビュジエと日本』鹿島出版会 [書評]

本書は1997年に建築会館ホールで開催された国際シンポジウム「世界の中のル・コルビュジエ – ル・コルビュジエと日本」の全発表を収録した報告書である。私はル・コルビュジエの作品群の素晴らしさが分からない。感性的にはまったくダメだ。ラ・トゥーレットの修道院などは、巨大な墓のような不気味さを感じてしまい、子ども時代にガスタンクを観て怯えた記憶を蘇らせるぐらいだ。内部空間は素晴らしいのかもしれないが(内部に入ったことはない)、外部空間は環境破壊のようにさえ感じられる。私がこのそばに住んでいたら、強力にその建築に反対するであろう。ロンシャン教会も訪れたことがあるが、その意匠は醜悪なカタツムリといった感想を抱いている。また、訪問者の半数が日本人であったことも驚きであったが、同じように曲線的な意匠のガウディとは比べものにならないデザインの今ひとつさ。これは、コルビジェの弟子のオスカー・ニーマイヤーと比べても大きく劣る、というのが私の正直な感想である。ベルリンに今、住んでいて、ベルリンにはブルーノ・タウトなどによる多くのモダニズムの建物があるのだが、それと一緒にル・コルビュジエの集合住宅もある。そして、どうしても私はル・コルビュジエの集合住宅よりブルーノ・タウトなどの集合住宅の方が好きなのだ。どちらに住むかといえば、間違いなく後者である。いや、家賃が2割ぐらいだったらル・コルビュジエのユニテ・ダビダシオンに住むことを検討するかもしれないが。日本で唯一の作品である国立西洋美術館も、まったくいいと思わない。これをみて、恰好いい!と思う人がいるとしたら、本当、変わっているな、と思う。しかし、おそらく、実は私の方が変わっていて、私の方が間違っているのである。そのようなコンプレックスのような意識を私は有している。したがって、その感性を修正するために、理性で抑えようと意識しているところがある(それが、多くのコルビジェの作品を見に行かせたり、このような本を読ませたりする理由だ)。
 本書はル・コルビュジエの日本人の師弟である前川国男、坂倉準三、吉坂隆正を中心として、孫弟子ともいえる丹下健三の建築思想などを、槇文彦、磯崎新、藤森照信など大御所建築家、研究家が語るという内容である。本書には関連する建築の写真がいくつか掲載されているのだが、どうみてもル・コルビュジエの作品より丹下健三、前川国男、坂倉準三、吉坂隆正の作品の方が、出来がいいと思えてしまう。そして、前から思っていたのだが、ル・コルビュジエのスケッチは下手だ。というか、ヘタウマという解釈はできるかもしれないが、これをみて、おお!素晴らしいと先入観なしに思う人とかが果たしているのだろうか。私が、このスケッチを見せて、こんなの考えているんだけど、と誰かに見せたら「お前のスケッチ、下手すぎ」とディスられると思う。
 何人かの報告内容を見て、磯崎新のそれを読んで、少しだけ私が共有できるようなものがあるかな、と感じた。もちろん、政治的な磯崎新であるから、私のようにストレートな批判ではないが、遠回しに、批判をしていることが読み取れる。個人的には、ル・コルビュジエが桂離宮をみた後の感想が「日本人は壁をつくることを知らない」と言ったことや、モダニズムの建築を非常に勉強していたことなど(すなわち、それほどオリジナルな考えではないこと)に興味を引かれた。
 ベルリンにいると、ブルーノ・タウトやグロピウスに比べてル・コルビジェの存在感が恐ろしく低い。これは、おそらく日本が欧州の近代建築を輸入する時、前者のモダニズム的なものも含めて、ル・コルビュジエが代表してしまったことがあるのかな、と考えたりもする。    
 まあ、これを読んだ人は、また物を知らない馬鹿が適当なことを述べている、と思われるかもしれないが、そういう人は、家のそばの丘にラ・トゥーレットができたら、素晴らしい建築作品が出来て嬉しいと思うのだろうか。サグラダ・ファミリア、エルプフィルハーモニー、シドニーのオペラハウスなどの建築の名作と、それとはまったく違うと思うのは、私が無知だからであろうか。いちおう、釈明としては無知だという前提のもと、勉強は続けています。


ル・コルビュジエと日本

ル・コルビュジエと日本

  • 出版社/メーカー: 鹿島出版会
  • 発売日: 1999/03/01
  • メディア: 単行本



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パサージュ論 第一巻 [書評]

ドイツ人の思索家、ヴォルター・ベンヤミンによる『パサージュ論』。基本的には、未完のパサージュ論を執筆するうえでの資料、メモから構成されている。しかし、それらからベンヤミンの透徹した思考を伺え、19世紀のパリ、そしてそれを取り巻く社会状況を知るうえでは極めて貴重な情報・知見を提供してくれる。全部で6つの章からなる。オースマンの章は個人的には極めて興味深かった。オースマンによるパリの大改造に関して、様々な意見・統計的な情報などが満載されているのが、その8割が極めて批判的であるのが興味深い。ただ、賞賛している意見等もしっかりとメモされていて、当然、コルビジェは大絶賛であった。それにしても、素晴らしい19世紀のパリに関しての資料集、そして考察集である。パリという都市の偉大さ・デタラメさ・ユニークさを知ることができる。



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『論文の書き方マニュアル』 [書評]

大学で教えている。大学の教員の重要な仕事は論文を学生に書かせることである。学生は論文を書くことは簡単だと思っている。いつも文章は書いているからだ。しかし、論文、すなわち論理的な文章を書くことは簡単ではない。なぜなら、論理的な文章を書くことは技術だからだ。そして、作法も求められる。作法を知らなければ書けない。
 本書はそのような論文を執筆する技術をマニュアル的に整理したもので大変参考になる。論文をこれから書こうと思っている学生には極めて有用な本ではないかと思われる。


論文の書き方マニュアル--ステップ式リサーチ戦略のすすめ 新版 (有斐閣アルマ)

論文の書き方マニュアル--ステップ式リサーチ戦略のすすめ 新版 (有斐閣アルマ)

  • 出版社/メーカー: 有斐閣
  • 発売日: 2014/10/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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『フィンランドを知るための44章』 [書評]

明石書店の「○○を知るための○章」シリーズのフィンランド版。エリア・スタディーズをするうえでの前提知識を効率よく習得するためには極めて適当な図書であり、結構、このシリーズは読むが、フィンランドはそもそもの文献・情報が少ないので、非常に学ぶところが多かった。とはいえ、フィンランドを日本語で書くうえでの筆者も少ない。そういう点では寄せあつめ感がないとはいえないが、それでも無いよりはずっとよいと思うし、読まないよりは読んだ本がずっとよい。フィンランドに関心がある人は、まず手に取るとよい本であるかと思う。


フィンランドを知るための44章 エリア・スタディーズ (エリア・スタディーズ 69)

フィンランドを知るための44章 エリア・スタディーズ (エリア・スタディーズ 69)

  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2008/07/01
  • メディア: 単行本



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『バックミンスター・フラーの世界』 [書評]

思想家、デザイナー、建築家、詩人として極めてオリジナリティ溢れる製品、思想を創り上げた創造者であるバックミンスター・フラーの人、発明品、思想などがよく理解できる本である。本は分厚いがしっかりとした考えの構成の元、編集されているので読んでいてほとんどストレスを感じない。また、著者はバッキーに直接師事し、一緒に仕事もしていたジェイ・ボールドウェインであり、バッキーという人物をよく分かっており、彼の思想・哲学をも非常によく理解しており、さらに文章力もあるので、バッキー辞典としても優れている。さらに、訳者がバックミンスター・フラー研究所で共同研究に従事していた梶川泰司であるため、語彙や背景などの無理解からの誤訳がほとんどない。これも本書の優れているところである。
 さて、そして内容であるが、改めてバックミンスター・フラーの思想の根底にあるのは「サステイナブル・デザイン」であることを知る。まあ、そもそも「宇宙船地球号」というコンセプトを出した人だから、今のSDGの源流となるような人であるから当然なのだろうが。さて、その割には、SDGsと声高に叫ぶ人達の主張に、全然、バックミンスター・フラー的なコンテクストを感じられないのはなぜか。おそらく二つの理由がある。一つは、勉強不足で知らないだけ、ということ。もう一つは、本気でフラーの考えに従って行動していくと、既得権益などもぶっ飛ぶような大きな変革が必要となるから。でも、これだけ行き詰まってしまい、真っ直ぐ進むことがまったく正解ではないことが明らかになった今、バックミンスター・フラーを再び学ぶ意義はあるのじゃないかな。ということを本書を読み終わって強く思った。


バックミンスター・フラーの世界―21世紀エコロジー・デザインへの先駆

バックミンスター・フラーの世界―21世紀エコロジー・デザインへの先駆

  • 出版社/メーカー: 美術出版社
  • 発売日: 2001/11/15
  • メディア: ペーパーバック



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寺沢武一『コブラ』 [書評]

それぞれ人には、思い入れの漫画作品があると思う。それは、その人が生まれた時とも関係性があるかと思う。例えば、私は昭和38年生まれであるが、私より10ぐらい上の人とかだと『あしたのジョー』『巨人の星』『鉄腕アトム』『サイボーグ009』とかになるのかと思われるが、私の世代だと『火の鳥』、『ブラック・ジャック』、『宇宙戦艦ヤマト』、『ドカベン』、『マカロニほうれん荘』、『デビルマン』などになるのではと思われる。
 私はもちろん、これらの作品に多くの感銘を覚えたものであるが、その中でも今なお読んでいて興奮のようなものを覚えるのは寺沢武一の『コブラ』である。その壮大なる宇宙観がとてつもない魅力であるが、画力が人間の能力を超えるようなレベルにあり、その味方、敵方、地球人、宇宙人、動物、植物を含むキャラクターのデザインが素晴らしいのも魅力である。『コブラ』はアメリカン・コミック風のコマ割りとなっており、また、登場する女性陣は『バーバレラ』でのジェーン・フォンダ風であったりと、またスタートレックやスターウォーズからの影響もあるとは思われるが、前述した『コブラ』のキャラクター・デザインに比べると、スターウォーズやスタートレックなどのキャラは幼稚で洗練されていないものに思えてしまう。私は、あまりスターウォーズが好きでないのだが、それは『コブラ』や円谷プロの影響があると思われる。これらの作品の宇宙人に比べると、スターウォーズの宇宙人とかが格好悪すぎるからだ。同じことはアベンジャー・シリーズにも言える。『コブラ』はそういう意味で宇宙ファンタジーものとしては、世界一のレベルにもあるのではないかと思ったりする。
 さて、もう一つ『コブラ』の特徴としては、そのアーカイブがしっかりと系統だって整理されていないことである。これは、連載していた雑誌が変わったりしたこともある。少年ジャンプにて掲載されていた作品は全て12巻からなる復刻版にて読むことができる。それ以外の作品はフルカラー・フルCGコミックにてある程度、補塡されるが、全てではない。とても残念なことである。
 あと、私も知らなかったのだが、『コブラ』の作者である寺沢武一は今年の9月8日、68歳で亡くなられた。是非とも、寺沢武一作品全集などを刊行していただき、コブラのアーカイブがしっかりしていない点なども整理していただければ大変有り難い。


COBRA vol.1 COBRA THE SPACE PIRATE

COBRA vol.1 COBRA THE SPACE PIRATE

  • 作者: 寺沢武一
  • 出版社/メーカー: アールテクニカ
  • 発売日: 2014/10/01
  • メディア: Kindle版




COBRA vol.2 COBRA THE SPACE PIRATE

COBRA vol.2 COBRA THE SPACE PIRATE

  • 作者: 寺沢武一
  • 出版社/メーカー: アールテクニカ
  • 発売日: 2014/10/01
  • メディア: Kindle版




COBRA vol.3 COBRA THE SPACE PIRATE

COBRA vol.3 COBRA THE SPACE PIRATE

  • 作者: 寺沢武一
  • 出版社/メーカー: アールテクニカ
  • 発売日: 2014/10/01
  • メディア: Kindle版





COBRA vol.4 COBRA THE SPACE PIRATE

COBRA vol.4 COBRA THE SPACE PIRATE

  • 作者: 寺沢武一
  • 出版社/メーカー: アールテクニカ
  • 発売日: 2014/10/01
  • メディア: Kindle版




COBRA vol.5 COBRA THE SPACE PIRATE

COBRA vol.5 COBRA THE SPACE PIRATE

  • 作者: 寺沢武一
  • 出版社/メーカー: アールテクニカ
  • 発売日: 2014/11/01
  • メディア: Kindle版




COBRA vol.6 COBRA THE SPACE PIRATE

COBRA vol.6 COBRA THE SPACE PIRATE

  • 作者: 寺沢武一
  • 出版社/メーカー: アールテクニカ
  • 発売日: 2014/11/01
  • メディア: Kindle版




COBRA vol.7 COBRA THE SPACE PIRATE

COBRA vol.7 COBRA THE SPACE PIRATE

  • 作者: 寺沢武一
  • 出版社/メーカー: アールテクニカ
  • 発売日: 2014/11/01
  • メディア: Kindle版




COBRA vol.8 COBRA THE SPACE PIRATE

COBRA vol.8 COBRA THE SPACE PIRATE

  • 作者: 寺沢武一
  • 出版社/メーカー: アールテクニカ
  • 発売日: 2014/11/01
  • メディア: Kindle版




COBRA vol.9 COBRA THE SPACE PIRATE

COBRA vol.9 COBRA THE SPACE PIRATE

  • 作者: 寺沢武一
  • 出版社/メーカー: アールテクニカ
  • 発売日: 2014/12/01
  • メディア: Kindle版




COBRA vol.10 COBRA THE SPACE PIRATE

COBRA vol.10 COBRA THE SPACE PIRATE

  • 作者: 寺沢武一
  • 出版社/メーカー: アールテクニカ
  • 発売日: 2014/12/01
  • メディア: Kindle版




COBRA vol.11 COBRA THE SPACE PIRATE

COBRA vol.11 COBRA THE SPACE PIRATE

  • 作者: 寺沢武一
  • 出版社/メーカー: アールテクニカ
  • 発売日: 2014/12/01
  • メディア: Kindle版




COBRA vol.12 COBRA THE SPACE PIRATE

COBRA vol.12 COBRA THE SPACE PIRATE

  • 作者: 寺沢武一
  • 出版社/メーカー: アールテクニカ
  • 発売日: 2014/12/01
  • メディア: Kindle版



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一条ゆかり『有閑倶楽部』 [書評]

少女漫画のコメディとしてはバブル時代を代表する大傑作。そして、累計で2800万部も単行本が売れたお化け的ヒット作品でもある。その荒唐無稽な状況設定、コメディであってオカルト的要素も多く、その強烈な甘味と強烈な辛味がブレンドしたようなストーリーはとてつもない中毒症状を読者に引き起こす。そして、圧倒的な画力の凄さが、ぐいぐいと読者をその世界に引き込ませる。さらに有閑倶楽部の6人組は、ハリー・ポッターのトリオ、七人の侍にも優る素晴らしく魅力的なチームであり、こんな仲間たちと時を共にしていたら人生、楽しいだろうな、という気持ちに読者をさせる。ストーリー的にも質が高いが、『コーラス』に掲載が移った単行本16巻からは少し、雑な内容になる。しかし、それも19巻あたりでは復活する。
 これが連載されていたバブルの頃の世相も反映させており、バブルならではのハチャメチャさは、これからバブル時代を考証するうえでも役立つような内容であろう。バブル時代は、皆、この主人公たちのようなライフスタイルを送りたかったのではないだろうか。楽しく、信頼できる仲間たちと、数々のチャレンジを知恵と勇気と優しさで克服していく。
 個人的に気になるのは、ちょっと面食い的価値観が絶対視されていること。しかし、これは当時の時代の空気であって、今の時代では受け入れにくいような、ちょっと記号消費的な価値観がバブル時代を覆っていたのだな、ということを逆に伝えてくれる。こういう漫画が描かれた時代に生きていたことをちょっと嬉しく思わせるような肯定的な気分にさせてくれる、愉快痛快な作品である。


有閑倶楽部 1 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

有閑倶楽部 1 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/07/29
  • メディア: Kindle版





有閑倶楽部 2 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

有閑倶楽部 2 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/07/29
  • メディア: Kindle版




有閑倶楽部 4 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

有閑倶楽部 4 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/07/29
  • メディア: Kindle版




有閑倶楽部 5 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

有閑倶楽部 5 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/07/29
  • メディア: Kindle版




有閑倶楽部 6 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

有閑倶楽部 6 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/07/29
  • メディア: Kindle版




有閑倶楽部 7 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

有閑倶楽部 7 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/07/29
  • メディア: Kindle版




有閑倶楽部 8 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

有閑倶楽部 8 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/07/29
  • メディア: Kindle版




有閑倶楽部 9 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

有閑倶楽部 9 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/07/29
  • メディア: Kindle版




有閑倶楽部 10 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

有閑倶楽部 10 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/07/29
  • メディア: Kindle版




有閑倶楽部 11 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

有閑倶楽部 11 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/07/29
  • メディア: Kindle版




有閑倶楽部 12 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

有閑倶楽部 12 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/07/29
  • メディア: Kindle版




有閑倶楽部 13 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

有閑倶楽部 13 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/07/29
  • メディア: Kindle版




有閑倶楽部 14 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

有閑倶楽部 14 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/07/29
  • メディア: Kindle版




有閑倶楽部 15 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

有閑倶楽部 15 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/07/29
  • メディア: Kindle版




有閑倶楽部 16 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

有閑倶楽部 16 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/07/29
  • メディア: Kindle版




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渡辺克義『物語ポーランドの歴史』 [書評]

2017年に出された新書。ポーランドの歴史を大まかに知りたい人にはうってつけの新書ではないかと思われる。複雑で分かりにくいポーランドの歴史であるが、ポイントをうまく整理してくれている。第二次世界大戦以降、特に1990年移行はザッとまとめられてしまった感じで物足りないが、これは他の本を読んで補足するしかないだろう。まあ、新書なので、さっと要点が分かるということを優先した編集方針などだろうし、その点はしっかりと押さえているかと思われる。また、コラムが章の終わりに描かれているのだが、これがなかなか読書の参考になっている。事例や事件の解説によって、ポーランドがその時代、どのような状況にあったのかがイメージできるような内容となっており、有難い。ということで、ポーランドをあまり知らない人(まさに私のような読者)にとっては、読み甲斐のある新書であると思われる。


物語 ポーランドの歴史 - 東欧の「大国」の苦難と再生 (中公新書)

物語 ポーランドの歴史 - 東欧の「大国」の苦難と再生 (中公新書)

  • 作者: 渡辺 克義
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/07/19
  • メディア: 新書



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乾正雄『夜は暗くてはいけないか』 [書評]

照明に関する文化論。谷崎潤一郎は『陰翳礼讃』で、日本は明るくないところに美を見出す伝統があると述べた。しかし、著者は実はヨーロッパの方が、現在の日本より暗さに美や心の安寧を求めている、ということを絵画、建築から論じていく。そして、著者の驚くほどの博識によって論じられる文化論は強い説得力を持って読者に迫ってくる。終盤の方で、最近のライトアップに関しても論じているのだが、猫も杓子もライトアップをすることでマイナスの影響しか出ないなどと指摘している。そして、しっかりとしたライトアップができている町は、行政がしっかりとしているとも述べている。これらの指摘・見識は非常に示唆に富んでいる。


夜は暗くてはいけないか―暗さの文化論 (朝日選書)

夜は暗くてはいけないか―暗さの文化論 (朝日選書)

  • 作者: 乾 正雄
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 1998/05/01
  • メディア: 単行本



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前田愛『都市空間のなかの文学』 [書評]

1982年に出版された『都市空間のなかの文学』。著者が51歳の時の著書である。文庫本で620ページという凄まじく密度が濃い本である。文学研究というのは、ここまで調べるのか、という迫力に満ちており、圧倒される。彼がここで取り上げた本は、一部しか読んだことがないので、その研究の深さなどは残念ながらしっかりと理解できないことがあったのだが、一研究者の研究対象に傾ける熱量には、門外漢でも目眩がするぐらいだ。私は文学という立場ではなく、都市解析の参考になるかな、という立場で読み始めたのだが、都市から文学を解析するというアプローチだけではなく、文学から都市を解析するというアプローチが展開させる研究フィールドの豊かさに驚かされた。やはり、名著と言われる図書は読むに値する、というか読まないと不味いなと自省させられた。


都市空間のなかの文学 (ちくま学芸文庫)

都市空間のなかの文学 (ちくま学芸文庫)

  • 作者: 前田愛
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2013/11/01
  • メディア: Kindle版



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『石の花』 [書評]

これは凄すぎる漫画だ。こんな漫画が存在したことを今まで知らずに生きていた、というのが恥ずかしいくらいである。キング・クリムゾンのデビュー・アルバムを知らずに生きていたのが恥ずかしいのと同じぐらいのレベルであろう。その画力の凄さ、そして戦争という重いテーマを多面的に捉える秀でた構想力、そして読者をその世界に引きずり込むストーリー展開の面白さ。個人的には手塚治虫の『火の鳥』、宮崎駿の『風の谷のナウシカ』と同じくらいのレベルの傑作、すなわち大傑作であると思う。特に、ウクライナで戦争が起きている今、この作品は読むべきである。本作品の素晴らしいところは、戦争を白黒の二元論で捉えていないことである。そこには戦争によってあからさまにされる人間の醜悪さ、気高さ、そして弱さと強さが描かれている。そして、それを通じて読者は戦争の悲惨さ、非情さを知るのである。第二次世界大戦のヨーロッパが舞台であるが、実は日本も同時代にまさにそのような戦争を侵略側としてアジアで展開していた。対岸の火事ではなかった、ということを意識して読むと、またいろいろと考えさせてくれる作品である。漫画という媒体の可能性の広さをも改めて知らしめるような驚愕の作品。死ぬ前に読むべきような大傑作であり、死ぬ前にしっかりと読めてよかった。


石の花(KADOKAWA版) 1 (青騎士コミックス)

石の花(KADOKAWA版) 1 (青騎士コミックス)

  • 作者: 坂口 尚
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/01/20
  • メディア: Kindle版





石の花 2 (青騎士コミックス)

石の花 2 (青騎士コミックス)

  • 作者: 坂口 尚
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/01/20
  • メディア: コミック




石の花 3 (青騎士コミックス)

石の花 3 (青騎士コミックス)

  • 作者: 坂口 尚
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/01/20
  • メディア: コミック




石の花 4 (青騎士コミックス)

石の花 4 (青騎士コミックス)

  • 作者: 坂口 尚
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/02/19
  • メディア: コミック




石の花 5 (青騎士コミックス)

石の花 5 (青騎士コミックス)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/02/19
  • メディア: コミック



タグ:『石の花』
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川喜田二郎『発想法』 [書評]

1967年に出版された大ロング・ベストセラー。私が1988年に就職した新入社員研修でも「KJ法」の研修がされたが、どうも今でもやっているらしい。確かに創造的なアイデア、企画をグループで考えるうえでは極めて有効な方法であると思われる。その民主主義的なボトムアップ型のアプローチは、民主主義下での問題解決法としては相当、優れているのではないかと思う。さて、本著であるが、6章からなる。まず1章はフィールドスタティ(野外科学)の特徴や重要性を述べている。そして2章ではその方法と条件などが述べられる。そして、その計画技法としてのKJ法について3章では述べられる。ここまでは非常に密度が濃い有益な内容となっている。しかし、4章の「創造体験と自己変革」では、日本人とアメリカ人の情報処理の仕方の違いとか創造性の違いとか、男女の違いとかが延々とエッセイ的に述べられており、その根拠も著者の思い込みであり、読んでいてガクッとくる。これまで背筋を伸ばして読んでいたので尚更だ。そして次は「KJ法の応用とその効果」であるが、これはその前の章よりはいいが、それでも、事例を箇条書きのように述べているだけで、3章までの迫力がなくなっている。そして、むすびになるのだが、実は最も読み応えのあったものは初版から20年ぐらい経って付け加えられた「あとがき」である。この「あとがき」は非常に参考となる有益な著者の知見が語られている。間違いなく必読本ではあると思うが、4章が玉に瑕である。


発想法 改版 - 創造性開発のために (中公新書)

発想法 改版 - 創造性開発のために (中公新書)

  • 作者: 川喜田 二郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/06/20
  • メディア: 新書



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一条ゆかり『プライド』 [書評]

一条ゆかりの『プライド』は二人の歌手をめぐる壮絶なライバル物語である。2002年12月から2010年2月まで連載された。そのドラマチックな展開は、読者を強烈に引き込み、そのストーリー・テリングの素晴らしさ、そして優れた画力は、この作品を特別なものとしている。特に主人公の一人の麻見史緒が、数々の障害を越えて成長していくとともに、自らの成功を獲得すると同時に、周辺の人たちを幸せにさせていくところは心地よい幸福感を読者にももたらしてくれる。そこらへんのハリウッド映画を観るぐらいなら、この作品を読んだ方が有意義であると思う。2007年に文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞したが、当然であると思わせる作品だ。


プライド 1 (クイーンズコミックスDIGITAL)

プライド 1 (クイーンズコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/07/06
  • メディア: Kindle版




プライド 2 (クイーンズコミックスDIGITAL)

プライド 2 (クイーンズコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/07/06
  • メディア: Kindle版




プライド 3 (クイーンズコミックスDIGITAL)

プライド 3 (クイーンズコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/07/06
  • メディア: Kindle版




プライド 4 (クイーンズコミックスDIGITAL)

プライド 4 (クイーンズコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/07/06
  • メディア: Kindle版




プライド 5 (クイーンズコミックスDIGITAL)

プライド 5 (クイーンズコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/07/06
  • メディア: Kindle版




プライド 6 (クイーンズコミックスDIGITAL)

プライド 6 (クイーンズコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/07/06
  • メディア: Kindle版




プライド 7 (クイーンズコミックスDIGITAL)

プライド 7 (クイーンズコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/07/06
  • メディア: Kindle版




プライド 10 (クイーンズコミックスDIGITAL)

プライド 10 (クイーンズコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/07/06
  • メディア: Kindle版




プライド 9 (クイーンズコミックスDIGITAL)

プライド 9 (クイーンズコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/07/06
  • メディア: Kindle版




プライド 10 (クイーンズコミックスDIGITAL)

プライド 10 (クイーンズコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/07/06
  • メディア: Kindle版




プライド 11 (クイーンズコミックスDIGITAL)

プライド 11 (クイーンズコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/07/06
  • メディア: Kindle版




プライド 12 (クイーンズコミックスDIGITAL)

プライド 12 (クイーンズコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/07/06
  • メディア: Kindle版



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一条ゆかり『デザイナー』 [書評]

今更ながらだが、一条ゆかりの『デザイナー』を読む。そのドラマチックな展開、言葉に表すことができないほど刺激的である。もう、ストーリー・テラーとしては稀代の才能ではないだろうか。文学的であり、また絵が抜群に上手く、その描写力も卓越している。最後のオチは私のような凡人からはとても予期できなかった。これだけの壮大なドラマをたかだか二冊でまとめられるその編集力にも脱帽だ。死ぬまでに読むべき漫画10選に選ばれるべき作品であると思う。凄い漫画である。


デザイナー 前編 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

デザイナー 前編 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/09/01
  • メディア: Kindle版




デザイナー 後編 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

デザイナー 後編 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

  • 作者: 一条ゆかり
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/09/01
  • メディア: Kindle版



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Herbert Gans 『Urban Villagers』 [書評]

都市社会学の金字塔のような著書である。これまでも、というか25年近く、読まなくてはと思っていたのに読めなかった本をようやく読むことができた。なぜ、そんなに時間がかかったのか、というと何しろ分厚い(400ページ強)。そのために、それを読むようなまとまった時間が取れなかった、というか取ろうとしなかったからである。ジェイン・ジェイコブスが『The Death and Life of Great American Cities』を発表する以前に、都市計画家の低所得層(ローワー・クラス層)・移民層への考えがズレていることを見事に指摘している。そして、そのような考えのもとで再開発をしても、そこで移動させられる人々のためにはならない、とも指摘している。彼らが抱えている問題は、単に、公園や公共福祉施設や学校といったハード施設をいくらつくっても解決しない、という指摘は現在でも当て嵌まる。そのような指摘をまさに、ジェイコブス以前にしていたことに、著者の凄まじい慧眼に感動するし、また都市社会学という学問分野の、都市計画における重要性を再認識させる。
ミドル・クラスの価値観でローワー・クラスを見るな。アメリカにおいて市民参加を実践する人たちで、しっかりとした考え方を持っているのは、この本から多くを学んでいるからなんだな、ということに改めて気づく。
 コミュニティの見方、そして、それを探るための方法論などを含めて、必読本である。って、自分がこれまで読まなかったのに必読と書くのは、自分のことを棚に上げていて恐縮ではあるが。ある意味、ジェイコブスの悪筆の『The Death and Life of Great American Cities』より、はるかにためになるかと思われる。直感でのジェイコブスとしっかりしたフィールドワークの技法を習得しているガンズとの違いということもあるかもしれない。ジェイコブスはなるほどと頷かせるが、ガンズの本書は、しっかりと住民達の実像と政策のズレとが存在することを学ばせてくれる。また、幾つかの章の後に「追伸」という形で、その後の状況も加筆しているのだが、これが非常にためになる。加えて、方法論についても解説してくれているので、都市社会学を勉強する人たちにとっては重要な知見を与えてくれる。


Urban Villagers, Rev & Exp Ed

Urban Villagers, Rev & Exp Ed

  • 作者: Gans, Herbert J.
  • 出版社/メーカー: Free Press
  • 発売日: 1982/06/01
  • メディア: ペーパーバック



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鈴木秀夫著『風土の構造』 [書評]

1975年に出版された本。私の手元にあるのは第七刷で1990年発行となっている。どんだけ積んでおいたのだろうか。今でも文庫本で手が入る。おそらく購入したきっかけは「風土」という言葉に惹かれたからであろう。さて、しかし、本の内容は気候学の本であった。気候によって風土や文化の様態に影響を与える、という事例や考えが述べられていて、とても刺激的で読んでいて飽きない。とはいえ、タイトルと本の内容には齟齬があるだろう。また、個人的には著者の研究に対する考え方が非常に参考になった。演繹的ではなく、帰納的なアプローチが必要である、という考えの説明は素晴らしい。何かの時に引用したい、と思わせた。


風土の構造 (講談社学術文庫)

風土の構造 (講談社学術文庫)

  • 作者: 鈴木 秀夫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2023/11/08
  • メディア: 文庫



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寺沢武一『ゴクウ』 [書評]

2023年9月に逝去された寺沢武一のハードボイルドSF漫画。1987年から『コミック・バーガー』にて連載された。左目の義眼に全てのコンピューターにアクセスすることができる端末が埋め込まれている探偵、風林寺悟空を主人公とする物語だ。寺沢武一の代表作である『コブラ』から緩さをそぎ取った、もう半端ないハードボイルドで画風も人間離れしたものとなっている。ある意味で『コブラ』という少年誌で妥協せざるを得なかった、作者がもう思う存分に自分が描きたいものを描ききったという印象を受ける。まだソ連を崩壊する前、インターネットが普及する前にこのようなストーリーの着想を得たということが驚きだ。天才、という言葉がふさわしいような漫画家であることをこの作品を通して改めて思う。


ゴクウ 1

ゴクウ 1

  • 作者: 寺沢武一
  • 出版社/メーカー: アールテクニカ
  • 発売日: 2016/07/26
  • メディア: Kindle版




ゴクウ 2

ゴクウ 2

  • 作者: 寺沢武一
  • 出版社/メーカー: アールテクニカ
  • 発売日: 2016/07/26
  • メディア: Kindle版




ゴクウ 3

ゴクウ 3

  • 作者: 寺沢武一
  • 出版社/メーカー: アールテクニカ
  • 発売日: 2016/07/26
  • メディア: Kindle版



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James Kunstler『Home from Nowhere』 [書評]

1993年に出版した『Geography of Nowhere』で売れっ子になったKunstlerの1996年の著書。後半のFarmersの章以降は、ナルシズムプンプンな文体になって、ちょっと読み進めるのが辛くなるが、それ以外ではなかなか面白い本であるかと思う。特に、前半の著者の取材を主体として、プロジェクトの背景、それの顛末などを描く手法は、臨場感があって読み応えがある。文筆力は高いと思われる。ただ、この本を読むのであれば、『Geography of Nowhere』がずっとお勧めである。
 ちなみに最近になってKunstlerはトランプ支持者になり、コロナのワクチンも陰謀説を訴えたりするようになっている。この本の著者とは思えないような宗旨替えであろう。なぜなら、トランプこそKunstlerが糾弾するデベロッパーの代表格であり、なんで、そういうことが分からないのか不思議である。この本の最後では、生きていることを十二分に楽しんで、この世に生まれたことを感謝するような人生を送りたいのだ、と述べていたのだが、何があったのか、と思わずにはいられない。というか、人生、なかなか厳しいものがあるのだな、と改めて思わせられる。

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ケンジ・ステファン・スズキ著『デンマークという国:自然エネルギー先進国』 [書評]

デンマークで「風のがっこう」を主宰している日本人の著作。2003年出版ということで、もう20年以上前の本になる。この著書で著者は、デンマークのエネルギー事情や政治制度などの解説をした後、日本の何が問題であるのかを論じているのだが、その指摘はいろいろと示唆に富んでいる。というか、出版されて20年経っても示唆に富んでいる、ということはまったく日本が変わっていないということだろう。この著書でも原発の非効率性を語っているのだが、その後、フクシマでの原発事故が起きたことを考えると、こういう海外に住んでいる日本人のアドバイスなどはしっかりと受け止めた方がいいのではないか、とさえ思わせる。特に、その後、圧倒的な円安のもと、国際経済力もなくなってしまった今、この著者が指摘する日本の制度的問題、政治的な問題などを改善させることに注力するべきなのではないか、と思わせる。多少、誤字脱字が多いのが残念だが、出版されてから20年経った今でも、読むに値する著作であると思わせる。


デンマークという国 自然エネルギー先進国―「風のがっこう」からのレポート

デンマークという国 自然エネルギー先進国―「風のがっこう」からのレポート

  • 作者: ケンジステファンスズキ
  • 出版社/メーカー: 合同出版
  • 発売日: 2006/02/01
  • メディア: 単行本



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「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式 [書評]

この本は280ページ近くあるが、その内容は20ページに縮約できるだろう。同じことを何回も繰り返し述べており、その結果、著者が言いたいことは伝わるが、まどろこしい。読んでいる時間の無駄だ。方程式と言うと聞こえはいいが、X+7=10みたいな簡単な方程式である。収入から支出を引いたものが「利益」とかを方程式と言うのは、小学生レベルではないか。まあ、とはいえ、後半部分の「滞納」への対応、孤独死への対応、などという部分は多少参考になった。ネガティブなレビューを敢えて書く必要があるのか、という疑問も抱くが、流石に酷すぎる本かなと思うので書かせてもらう。


増補改訂版 空室率40%時代を生き抜く! 「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式

増補改訂版 空室率40%時代を生き抜く! 「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式

  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2021/06/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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中川理『風景学』 [書評]

京都工芸繊維大学の名誉教授である中川理氏による「風景と景観」をめぐる歴史と現在の状況が整理されている。12の章からなっており、時系列のように「風景」がどのように発見され、どのように政策として捉えられてきたか、などが物語のように分かりやすく書かれている。最後の方になると、若干、著者の意見のような文の割合が増えてくるが、クリストファー・アレキザンダーのパタン・ランゲージぐらいまでの歩みは、多くの文献等を踏まえていてとても勉強になる。景観について学びたい、知りたい人にとっては必読書と言いたいぐらいの本である。


風景学 -風景と景観をめぐる歴史と現在- (造形ライブラリー 06)

風景学 -風景と景観をめぐる歴史と現在- (造形ライブラリー 06)

  • 作者: 中川 理
  • 出版社/メーカー: 共立出版
  • 発売日: 2008/07/25
  • メディア: 単行本



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保坂展人著『88万人のコミュニティデザイン』 [書評]

世田谷区長の保坂展人によるエッセイ本。基本、保坂氏のこれまで世田谷区で実施してきた政策を自慢気に披露する、いかにも政治家によるエッセイ本であるが、不思議とそれほど嫌味に感じられない。それは、保坂氏が誠実に問題に取り組んできたためではないか、と思われる。区長になったからといって、いろいろとマニフェストで掲げた政策が具体化できる訳ではない。議会によっていろいろと手足が縛られることだって多い。ただ、三選を果たして、随分とその裁量度は増えてきたし、やれることも増えてきたかと思われる。保坂氏のアイデンティティは「内申」による苛めというか暴力によって、大きく将来の可能性が狭まれたという被害経験を源としている、と思われる。それゆえに冤罪の被害者やマイノリティ、若者へと心を寄せる。このような「苛められっ子」が政治をしていることは、実は結構、いいと思うのである。安倍や麻生、二階といったいかにも「苛めっ子」が牛耳る日本政府と比べると、ずっと保坂氏の方がましな政治家なのではないか、とこの著を読んで改めて感じた。 


88万人のコミュニティデザイン 希望の地図の描き方

88万人のコミュニティデザイン 希望の地図の描き方

  • 作者: 保坂展人
  • 出版社/メーカー: ほんの木
  • 発売日: 2014/09/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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『物語 フィンランドの歴史』を読み、ロシアはウクライナ戦争と同じことを100年前にもしていたことを知る [書評]

フィンランド研究者の著者による『物語 フィンランドの歴史』。フィンランドには4回ぐらい訪れたことがある。なんか知った気になっていたのだが、実は全然、その歴史などは知っていないことを改めて気づかされた。ただ、フィンランドがスウェーデンの植民地であり、その後、ロシアの属国になっていたという歴史ぐらいは知っていたのだが、ロシアの横暴ぶり、大国としての理不尽な数々の要求と仕打ち。なんだ、ウクライナ戦争で随分とロシアはデタラメをするな、と憤慨していたが、昔からこういうことを隣国ではやっていた、むしろお家芸ということをこの本から学ぶことができた。日本はたまたま日露戦争でロシアをやっつけたので過小評価をしていたのだが、もう相手が攻撃したとかいちゃもんをつけて戦争をおっぱじめることとか、不可侵条約などの約束を破ることなどは日常茶飯事だ。というか、なんでこんな国と条約を結ぼうと思うのかね。こんな国から北方領土、戻ってくる訳ないね、ということもフィンランドの歴史から理解することができる。本書は、フィンランドの歴史を知るために有益であるのは勿論だが、ロシアという国を理解するうえでも、そして現在のウクライナ戦争をなぜ、ロシアが仕掛けるかも理解することに通じる貴重な著書であると思う。


物語 フィンランドの歴史 - 北欧先進国「バルト海の乙女」の800年 (中公新書)

物語 フィンランドの歴史 - 北欧先進国「バルト海の乙女」の800年 (中公新書)

  • 作者: 石野 裕子
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/10/18
  • メディア: 新書



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町村敬志『都市に聴け』 [書評]

一橋大学の名誉教授である町村敬志の2020年12月に出された著書。大学を退官される前に出された本であり、彼の都市社会学研究のエッセンスが盛り込まれており、大変、読み応えがある。アーバン・スタディーズという研究分野がどのようなものであるか、非常に分かりやすく、書かれている。また、過去ではなく、それらの研究実績を踏まえて、コロナ後の未来の都市像をも照射している点が、これからこの道を進む若い読者にとって勇気づけるような内容となっている。著者の誠実な人柄、そして研究者としての造詣の深さを改めて知ることができる名著である。


都市に聴け

都市に聴け

  • 作者: 敬志, 町村
  • 出版社/メーカー: 有斐閣
  • 発売日: 2020/12/19
  • メディア: 単行本



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