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『インディアナ・ジョーンズ/魔宮の伝説』 [映画批評]

インディアナ・ジョーンズの1984年に公開された二作目。これは、私は観るのは初めてかと思う。私はインディアナ・ジョーンズの評価が低いのだが、それらをしっかりと全て観ていないのに言うのは不味いだろう、というだけで観た。さて、これは一作目や最新作に比べても質は低い。全体的な印象としては、インディアナ・ジョーンズは『少年ジャンプ』の漫画のレベルだな、ということである。そして、『少年ジャンプ』に連載されていたら、人気作品ではなく、そこそこの人気があるぐらいの漫画になっていたのではないか、と思うぐらいのレベルである。ドラゴン・ボール、スラム・ダンク、ブラックジャック(ジャンプ連載ではないが)といったレベルには到底、及ばない。まあ、基本、『少年ジャンプ』の読者層を視聴者として設定したような映画なのかもしれないので、そのストーリーの稚拙さにとやかくケチをつけるのも野暮ではあるのだが、私のように『少年ジャンプ』やウルトラマン・シリーズなどを観て育った人間にとっては、インディアナ・ジョーンズのリアリティの無さは本当に鼻がつく。ちなみに、これは私が年を取ったからではなく、この年になっても上記の漫画群はしっかりと物語世界に没頭して読むことができる。これはスター・ウォーズにも言えることだが、改めて日本の漫画コンテンツのレベルはとてつもなく高いな、と思わざるをえない。ということを、この映画をみてつくづく思った。




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『オッペンハイマー』 [映画批評]

先日のオスカーを総ナメ(作品賞とその他6つの賞)した『オッペンハイマー』を観る。なかなか興味深く、面白い映画であった。三時間という、昨今の映画では相当、長いが飽きることもなく最後まで観ることができた。オッペンハイマーの実像に、どれほど忠実に描かれているかが、こちらの方面に詳しくない私にははっきりと分かっていないのだが、映画が描いたようなキャラクターであったとしたら、この映画はなかなか視聴者に誠実なのではないだろうか。というか、映画で描かれたキャラが実態と違っていたら、逆にとんでもない話かなと思ったりもするが。興味深かった点は3点。

一つ目は、原爆を落とさないと日本は降伏しない、という主張である。これは、日本人以外はそうかな、と疑問を持つかもしれないが、日本人の私は、確かに原爆が落ちなかったら、日本人は降伏しないだろうな、と納得したりした。日本人というか、日本社会の大きな特徴は方向を変えられず、惰性で同じ道を歩み続けることがあるかと思う。これまで取ってきた同じ轍を歩み続ける。したがって、変化する時はいつも革命的なドラスティックな変化を伴う。上手く、徐々にソフトランディングができないのだ。だから、人類史的にも驚くような悲惨な事故が起きても相変わらず原発への依存傾向から脱することができないし、中央集権が地方を衰退させていることがこれだけ明らかになっていても、その体制を変えることができないし、人口減少下で社会において女性の力がこれだけ求められている国であるにも関わらず、ジェンダーギャップは世界でも最低ランクにずっと留まっているのに変更することができないし、年金問題も国債の借金問題も崩壊するまで引き延ばして解決しようともしない。

二つ目はストラウスのオッペンハイマーへの嫉妬。これも、多くの人は、そんなことに嫉妬するかいな、そこまで人間小さい奴は少ないだろう、と疑問を持つと思われるが、研究者はおそろしく嫉妬深い人種である。私は大学の教員をしているので、これは身をもって理解している。傍からみたら、大したことねえだろう、と思われることに凄いプライドを持っていたりして、プライドを傷つけられるとすごく恨んだりする。いや、私は東京大学とか京都大学とかの教員をしている訳じゃあないですからね。三流私立大学の教員である。そういう、三流大学だから研究業績も三流である。しかし、そのプライドだけは一流レベルの人が多く、本当に厄介だ。だから、ストラウスみたいな学者がいても、ああ、そういう奴いるいる、と思えるのだ。というか、本当、映画のような感じだったのだろう。非建設的の極致である。この点に関しては、前任校の学部の方が遥かにプライドが高くて酷かったが、今の学部でもいない訳ではないので気をつけなくては、と思っている。

三つ目はハリー・トゥルーマンがいかに糞か、ということ。おそらくこの映画で描かれていたような大統領だったのだろうが、アメリカの大統領がアホだと人類は大変な危険に晒されるということに改めて気づかされた。そして、トランプというもうトゥルーマン以上のアホが大統領になる可能性がまだあることを考えるとゾッとする。トランプに投票をすることを考えている人はこの映画を観るといいと思う。ただし、この映画を観ても、そこまで考えが及ぶかは疑わしいが。そもそも、それぐらいの論理的な思考ができる人はトランプに票を入れないからだ。
ということで、なかなか骨のあるいい映画であった。史実も知りたいな、と思うが、そこらへんを調べるような時間がなかなかないかもしれない。定年迎えて、時間があれば調べてみたいところである。
最後に関係ないがエピソードを一つ。オッペンハイマーの弟のフランク(フランクも名字はオッペンハイマーであるが)が、兄について次のようにドキュメンタリー映画『The Day After Trinity』で述べている。なかなか人類の将来を絶望させる言葉なので紹介したい。
「ロバートは現実世界では使うことのできない兵器を見せて、戦争を無意味にしようと考えていた。しかし、人びとは新兵器の破壊力を目の当たりにしても、それまでの兵器と同じように扱ったと絶望していた」。人類は一部の天才的な賢い人達によって、その道が開かれたが、その道を閉じるのは、想像力に欠けている愚者によるであろう。

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映画『カポーティ』 [映画批評]

2005年に公開されたハリウッド映画。売れっ子作家のトルーマン・カポーティがノンフィクション小説『冷血』を書くまでのプロセスを描いた。殺人犯との会話のやり取りはスリリングな心理戦のような側面もあり、いろいろと考えさせる。ハリウッド映画らしからぬ奥行きのある映画だ。映画自体も面白いが、この映画の凄さは、カポーティ演じるフィリップ・シーモア・ホフマンの怪優ぶりである。ジャック・ニコルソンよりも凄いのではないだろうか。アカデミー主演男優賞とゴールデングローブ主演男優賞を取ったのも納得の怪演である。


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『シャレード』 [映画批評]

1963年のアメリカ映画。オードリー・ヘプバーンが出演しているので観てみたのだが、なんか多いに落胆した。オードリー・ヘプバーンが全然、魅力的ではないどころか、演技も大根役者のようだ。美しいとも思えない。まあ、シナリオに合わせてわざと大根役者を演じているのかもしれないが、どちらにしろ鼻白む。いや、これはただの主観なんですがね。映画の内容もコメディ・サスペンスといった感じのもので、シリアスなのかコメディなのかが分からず、相当、中途半端である。とはいえ、ラストシーンは面白い。終わり良ければすべて良しか。


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『ブリュッセル 1080 コメルス河畔通り 23番地 ジャンヌ・ディエルマン』 [映画批評]

英国映画協会が10年ごとに発表している「史上最高の映画」ランキングの2022年版において第一位に選ばれた映画。ということで観た。まず、201分という相当の長尺の映画である。そして、難しい。なぜなら、この映画は、BGMもほとんどなく、効果音的な演出も一切なく、また会話も少なく、カメラのクローズアップなどもなく、ひたすら固定された構図での撮影がされているだけであり、女優の演技によってストーリーを理解することが求められるからだ。しかし、悲劇へと導く、彼女のルーティンの変化のきっかけは分かりにくい。ネタバレで、そのきっかけを知ると、最後のエンディングへの展開も分かるのだが、201分の期間、よほど集中してみないと、この悲劇へと導く分岐点は分からないのではないだろうか。私の想像力が欠如しているだけかもしれないが。
 私は男性ではあるが単身赴任をしているので家事をする。家事はルーティン化する。ルーティン化させた家事をこなすのは苦痛ではないし、それが生きていくことかと思ったりもする。ただ、そのルーティンのリズムを壊されることは嬉しくない。思春期の子育てをし、日々、売春をしている主人公にとっては、それはさらに大きな苦痛になったのであろう。息子の心ない言葉、茹ですぎたジャガイモ、さらには泣き叫ぶ赤ん坊なども最後の悲劇への加速を促すのだが、最大のきっかけとなる事件を私は映画を観ても読み取ることができなかった。ここは、もう少し、分かりやすく演出してもらえれば有り難かったが、多くの人は分かったのだろうか?
 この映画は観る価値はある、とは思うが、個人的にはベスト5に入ることはないと思う。ただ、これは私が映画をしっかりと鑑賞する能力に劣っているからだろう。観る人の鑑賞力を要求する映画であると思う。


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映画『世界中がアイ・ラブ・ユー』 [映画批評]

ウディ・アレンの1996年に公開された映画。出演するキャストが何しろ豪華。ゴールディホーン、ジュリア・ロバーツ、ドリュー・バリモア、エドワード・ノートン、ナタリー・ポートマンなどである。ナタリー・ポートマンはほとんど端役であるが。ミュージカル映画であり、ドリュー・バリモアを除く出演者が吹き替えなしで歌と踊りを披露しているそのため素人感が満載ではあるのだが(特にエドワード・ノートン)なかなか微笑ましく楽しく、鑑賞することができる。その中でもラストシーンのゴールディホーンの歌は感動的である。この映画に出た時のゴールディ・ホーンは既に50歳を越えていたのだが、映画では30代に見える。本当、前から思っていたが化け物のような女優である。
ウディ・アレンの映画の中でもとびきり楽観的でハッピーで肯定的である。恋人と2人で見る映画としては相当良質ではないだろうか。


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『ジェーン・エア』(1996) [映画批評]

19世紀半ばにイギリス人のシャーロット・ブロンテによって書かれた小説をもとに作られた映画。ジェーン・エアの映画はこれまでいくつも作られているが、ここでレビューをするのは1996年イギリスで制作されたフランコ・ゼフィレッリ監督のものである。ジェーン・エアを演じるのはシャルロット・ゲンズブール。ほかの『ジェーン・エア』の映画と比較するとそれほど評価は高くない本作品であるが、個人的にこれしか観ていないので個人的な評価は高い。というのも小説のスチーリーが本当に素晴らしいからである。非間的な社会常識、男女差別、階級社会などに反抗して自分の魂の導く道を進んで生きて行ったジェーン・エアの生き様は素晴らしい。是非とも多くの若い女性に見てもらいたい作品である。あと小大きな長所だと思われる。


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映画『恋愛小説家』 [映画批評]

アカデミー賞の主演男優賞と主演男女優賞をW受賞した1997年のハリウッド映画。皮肉屋で病的な潔癖症の中年男を演じるジャック・ニコルソン、はちきんのようで心優しくもあるシングル・マザーを演じるヘレン・ハントの演技が何しろ素晴らしい。ストーリーはコメディ・タッチの恋愛物であり、シナリオはそれほど魅力的ではないが、この2人の演技によって最後まで飽きずに見ることができる。必見の映画ではないが、見て損するような映画でもない。


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映画『インセプション』 [映画批評]

死ぬまでに見るべき映画のランキングのウェブサイトを閲覧し、これまで観たことがないということで観たのだが、そのプロットは個人的には感心できず、映画にもあまりのめり込むことが出来なかった。ちょっと話には無理があるかな、と思う。ただ、どうやってこのとっちらかった状況を収めるのだろうと思っていたのだが、エンディングは悪くなかった。ということで、個人的には死ぬまでに見るべき映画のランキング候補にも挙がらないが、ハリウッド俳優渡辺謙の渋さには見入った。デカプリオより全然、格好良い。渡辺謙のファンには必聴の映画ではある。


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インディアナ・ジョーンズ『レイダース/失われたアーク』 [映画批評]

インディアナ・ジョーンズの第一作目を観る。若い時に観たことがあるかな、と思っていたのだが、もしかしたら初めてかもしれない。映画史上に残る傑作との誉れが高いが、個人的にはそんなに感心しない。そもそも、インディアナ・ジョーンズでは恐ろしく人が殺しまくるし、人が死にまくる。ジョーンズ博士も007並みに人を殺す。007はスパイであるし、国家公務員であるし、「ライセンス・トゥ・キル」すなわち「殺しの免許証」を持っているが、ジョーンズ博士はそういう類いのものは持ってないであろう。ほとんど死神のレベルでジョーンズ博士が行くところは人が死にまくる。それであるにも関わらず、敵役は殺し方が中途半端なので、ジョーンズ博士だけは逃げられてしまう。いや、死んだら映画にならないのでしょうがないのだが、その間抜けぶりはリアリティがなさ過ぎる。あと潜水艦に飛び乗るのはいいが、どうやってハッチを開けて中に入れたのか、兵隊をやっつけて服装を奪うのはいいがどうして周りはジョーンズ博士が紛れ込んでいることに気づかないのであろう。まあ、そもそも荒唐無稽な話なので、そういうことを突っ込むこと自体が野暮なのだろうが、私が観た映画の中では私史上の傑作には決して上がってこない映画である。

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映画『バービー』 [映画批評]

マーゴット・ロビーが主演のハリウッド映画『バービー』を観る。これは、ひとえに監督がグレタ・ガーウィッグであるからだ。彼女の作品『レディ・バード』、『リトル・ウィマン』に感銘を覚えたので鑑賞した。まず、マーゴット・・ロビーはまさにバービーを演じる女優として素晴らしく適任であり、まさに生きるバービーという感じで好感が持てた。ストーリーはまあメチャクチャであるのだが、そのメチャクチャさの中にも観るものを納得させるようなこじつけが出来るかどうかが、このような映画の成功の分岐点になると思うが、この映画はとりあえず許容範囲ではないか、と思う。SNSの大スターであるウィル・フェラル、ケート・マックキノンを起用しているが、後者は非常にいいかと思ったが、前者はちょっとふざけすぎた嫌いがある。ウィル・フェラルもその空気を本当、支配してしまうので色がついてしまう。ケート・マックキノンもそういうところがない訳ではないが、彼女はそもそも気味悪いバーディ(Weird Barbie)みたいな位置づけなので、その個性はむしろプラスであったが、ウィル・フェラルは一応、大企業の代表取締役だからな。絶対観るべきといったような映画ではまったくないが、ちょっと哲学的に考えさせるところもあるし、観て時間の無駄ではない。私はマーゴット・ロビーのファンではまったくなかったが、この映画の彼女はとても魅力的である。



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タグ:バービー
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映画『ロストケア』 [映画批評]

介護問題の本質を真っ正面に捉え、極めて鋭く描いた佳作。見終わって、その問題を観る者にしっかりと考えさせる。映画では年間で、介護疲れで年間48人の家族による殺人事件が生じている、と言う。おそらく実際のデータであろう。尊い命を冒涜していると第三者が簡単に批判するのは簡単だが、介護する側もぎりぎりの状態で生きていたりする場合も少なくない。私も認知症の母親がいるが、しっかりと老人ホームに入れることができたので、私の日常生活にも問題なく暮らせることができて非常に助かっているが、家族で面倒を見るような事態になったら、私の家族は崩壊したであろう。母親は老人ホームに入っても、あちこちに電話をしていて、一月の電話代は6万円にも及ぶ。私にもよく電話がかかってくるのだが、取ると、身体が痛いから見に来てくれ、というのがほとんどだ。老人ホームの人に見てもらえばいいのだが、かまってもらいたいので電話をするのである。いや、結局、老人ホームの人がしっかりと見てくれるので問題はないのだが、これが一人住まいだったら、本当にいちいち心配して大変なことになったであろう。私もそういう意味では、それほど他人事ではないので、映画が投げかける問いにはいろいろと考えさせられた。殺人は絶対的に悪だ、というのは簡単だが、そういうだけでは介護の問題は解決しない。安易な思考を許さない迫力がこの映画からは伝わってくる。あと、主人公を演じる松山ケンイチ、長澤まさみ等の演技がいい。そして柄本明の鬼気迫る演技は怪優という言葉がふさわしい。全体的に非常によくできた映画であると思う。



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映画『You’ve Been Trumped Too』はすべての選挙権を有するアメリカ人はもとより人類、必見の映画である [映画批評]

『You’ve Been Trumped Too』は2016年10月に公開されたドキュメンタリー映画である。2011年に『You’ve Been Trumped』という映画が同じイギリス人監督であるアンソニー・バクスターによって制作されていたのだが、トランプが大統領選挙に出馬するということで、選挙運動の部分が追加的に撮影され、大統領選挙の直前に公開された。
 トランプは彼の母親の故郷であるスコットランドのアバーディーンにゴルフ場をつくるのだが、このゴルフ場へのアクセス道路が地元の人の水路を破壊し、その結果、一部の地元の人達の水が絶たれてしまう。トランプと彼の会社は、補修すると言ったが、結局、補修をしっかりとせず、ゴミや油が飲料水に紛れ込んでしまう。トランプがいかに自分の利益のことしか考えず、そのためには他人を犠牲にすることにまったく躊躇しないということを、ドキュメンタリーで記録したのが、この作品である。
 本当、トランプは破廉恥の極致というか、こんなに卑劣な人間がこの世に存在するのか、というほど酷い人間であることが、よく理解できる極めて優れたドキュメンタリー映画である。このような人間を一度ならず、再選させようと思っているアメリカ人の多さには本当、あきれ果てるしかないし、絶望的な気分になるかもしれないが、このような人間が二度と権力を持たないようにさせるためにも、すべての選挙権を有するアメリカ人には見るべき映画だと思うし、アメリカ人ではなくても、その影響は広く地球上に及ぶであろうから、見るべき映画である。バクスター監督には、このような映像作品を世に出してくれたことを強く感謝する。


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映画『ノー・タイム・トゥ・ダイ』 [映画批評]

アナ・デ・アルマスを観たいという不純な動機で、この映画をアマゾン・プライムで観た。この映画のアナ・デ・アルマスは相当、恰好よくてボンド・ガール的な魅力に溢れていたが、残念ながらワンシーンで出番がなくなった。これは残念。ただ、映画自体は結構、楽しめた。ダニエル・クレイグのボンドは渋くて恰好いいが、人間味があり、それが個人的には気になる。最後のシーンもこれまでのボンドではあり得ない展開かな、と思ったりもする。ただ、007はただの番号だ、という台詞が何回か出てくるのは、しっかりと続編をつくる際に矛盾させないための布石なのであろう。
あと、これは映画とは関係ない話になってしまうが、アナ・デ・アルマスは非常に魅力的であったが、一方でボンドの恋人のレア・セドゥにはまったく女性的な魅力を感じなかった。いや、あくまでも好みの問題なのだろうが、むしろフランス人はこういう女性が魅力あることになっているのか、と文化の違いに驚いたぐらいである。そういえば、ソフィア・マルソーも全然、好みじゃなかったな。と、ふと思ったのだが、フランス人女優で個人的に贔屓している俳優が個人的にいるのか?若い頃のエマニュエル・ベアールは凄い美貌だな、と思ったことはある。アメリのオドリー・トトゥも映画での演技はとてもチャーミングだなと思ったことはある。しかし、それぐらいかもしれない。ブリジット・バルドーとかも、それほど魅力は分からない。まあ、本当にどうでもいいことだが、この映画で個人的にはここはとても気になった。



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映画『砂の器』 [映画批評]

松本清張の原作を野村芳太郎が監督をして映像化した作品。1974年製作。幾つかの見所がある。ストーリー的には方言が問題解決の糸口を提供したこと、ハンセン病をテーマとしたこと、どんな善人でも入ってはいけない親子の情の絆の一線があること、戸籍は戦後のどさくさではでっち上げられること、などだ。映画的には、なんといっても父と息子との回想シーンであろう。その演技力の凄味は言葉では表現できない。映画の圧倒的な力を思い知らされるようなシーンである。そして、これに絡むテーマ曲が素晴らしい。作曲も素晴らしいが音楽監督の力も凄いものがある。あと、個人的には1970年代の日本の風景をいろいろと見られるのはとても興味深い。改めてちょっと前までの日本の風土の美しさには息を呑む。いつから、こんな汚い景観になってしまったのだろうか。

 

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タグ:『砂の器』
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『アンモナイトの目覚め』 [映画批評]

ケート・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンという演技力に優れた女優が主演の恋愛物語。ケート・ウィンスレットは『タイタニック』に出ていた頃とは随分と雰囲気が変わっていた。迫力のあるおばさんという感じだ。それに対して、シアーシャ・ローナンは華のある女性を見事に演じている。ストーリーはちょっと中途半端な感じであり、これはその後の展開を観客の想像に任せる、ということなのだろうが、こうすっきり感がしない。ストーリーというより、そのプロセスを見せることに重きを置いているのであろう。まあ、観ても後悔はしないが、敢えて観なくてはいけないような映画ではないと思う。

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『フレンチ・ディスパッチ』 [映画批評]

ウェス・アンダーソン監督の2021年作品。2014年作品の『ブダペスト・ホテル』が相当、よかったので期待をしていたが、その期待は外れた。いや、そんなに悪くはないが、細切れの4つのストーリーのオムニバスというスタイルが、ちょっと一気に観ることの集中力を削いだのと、そのストーリーもそれほど面白くはない。『ブダペスト・ホテル』のように、ストーリーにそれほど惹きつけられない。そもそも架空の街の架空の話であるので、ストーリーにリアリティがないのはいいのかもしれないが、フェアリー・テールとしてのご都合主義が個人的にあまり受け付けないのかもしれない。そういう点からすると、『ブダペスト・ホテル』も似たようなところがあるが、『ブダペスト・ホテル』に通底するヒューマニティみたいなところが、ちょっとこの『フレンチ・ディスパッチ』には欠けている印象を受ける。あと、せっかくシアーシャ・ローナンが出演しているのに、彼女が端役というのも個人的にはがっかりしたところでもある。『ブダペスト・ホテル』の映画のクオリティを高めているのは彼女の演技であることは論を俟たないからだ。



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『ブルックリン』 [映画批評]

シアーシャ・ローナン主演のインデペント映画。2015年に公開された。1950年代にアイルランドの小さな町(現在の人口1万2000人ぐらい)から、よりましな仕事を探すために、アメリカ合衆国のブルックリンへと一人で移民してきた若い女性の物語である。ブルックリンでの生活にようやく慣れてきた頃、アイルランドに戻らなくてはいけない事情が生じる。そして、アイルランドの家族のもとに戻ると、生活環境はずっとよくなり、また、裕福な美青年にも好意を寄せられる。そこで、彼女が残るか、残らないかを逡巡している時、傍から見れば些細なようで、しかし、本人にとっては耐えがたいような事件が起きる。
 この映画は、極めて良好な映画である。別に見なくても失うものはない。「死ぬまでに見るべき映画100選」とかに選ばれるような映画からは、まったく距離を置いた映画である。しかし、見ると心が豊かになるというか、人生のビタミンになるような映画である。美味しい副菜のような位置づけだ。そうそう、若い人はデートとかにこの映画に行くといいかもしれない。一生懸命、生きようとする若者達の真っ直ぐな姿勢が涼風のように見る者の心に訴えかけてくる。
 なにしろ、主演を務めるシアーシャ・ローナンが素晴らしい。決して、美人女優ではないが、あの凜としたカリスマ性溢れる佇まい、ウィット溢れる知性、透明感溢れるキャラクターは、映画に品格をもたらす。この映画の評価は、おそらく彼女以外の女優が演じたら、下がったであろう。
 この映画をみて人生観が変わるようなことはまったくないと思うが、ちょっと打ちひしがれた時や、肯定的な気分になりたい時は有効に働く映画であると思う


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ジェシカ・ジョーンズ [映画批評]

クリステン・リッターが主演を務めるジェシカ・ジョーンズの第一部。他人を洗脳して思い通りに操れる超能力の持ち主キルグレイブとの戦いを13話から描く。キルグレイブを始めとしてサイコパス的な人が多く出てくるのだが、この出演者達の異常性がこいつもキルグレイブに操られているのではという疑心暗鬼に聴衆も捉えられてしまう。そのため、もう最後まで手に汗を握るように見てしまう。このスリリングさは、テレビドラマと漫画との差はあるが「ジョジョの不思議な冒険」と共通するところがある。基本、主人公は勝つということが分かっていても、この絶対絶命的な状況をどうやってクリアするかを知りたい衝動で、時間を忘れて13話の最後までローラーコースターに乗っているかのような気分で見させてしまう魅力がこのドラマにはある。クリステン・リッターというどちらかというとコケティッシュなところが売りだったかと思う彼女が演じるダーク・ヒーローだが、全然、悪くない。いや、唯一、走るところが運動音痴なところを曝け出してしまって、それは痛いが、他は全然、気にならない。ただ、あたかもキルグレイブに命令されたように、一度見始めると最後まで観てしまう危険さをこのドラマは有しているので、見始める時はその点に留意した方がいいかと思われる。


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マーベル/ジェシカ・ジョーンズシーズン1 Part2 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
  • 発売日: 2017/03/03
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マーベル/ジェシカ・ジョーンズ シーズン1 Part1 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
  • 発売日: 2017/03/03
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『蟻の兵隊』 [映画批評]

日中戦争時の日本の暗部を抉り出したルポルタージュ。日本は侵略戦争の歴史を隠蔽しようとして今日に至っている。私もそういう事実は知っているつもりであったが、この映画を観て、自分がいかにその実態をいかに理解していないかを思い知らされた。戦争がいかに悲惨であるのか。そして、このルポルタージュは戦争を侵略する側の痛みの方が、長期的には侵略される側より遥かに悲惨であることを分からせる。そして、戦争に行ったら、どんなに酷い目に遭わされたとしても、国の都合が悪ければ救ってくれず、トカゲの尻尾切りのように捨てられる。映像撮影や構成とかは、素人的であるが、このような貴重なコンテンツを映像に収めてくれたことは大変有り難い。ウクライナ戦争が起きている今こそ、観るべき映画であろう。日本人は、このような歴史の延長線上に生きていることを知っておくのは、国際的な関係をしっかりと構築しようと考えている人には必要不可欠であると思われる。特に、アジアの近隣とは。


蟻の兵隊 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: マクザム
  • 発売日: 2008/07/25
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スタンリー・キューブリック『バリー・リンドン』 [映画批評]

ジョージ3世の治世の時代(18世紀半ば)のイギリス(およびその周辺諸国)を舞台に活躍した一人のアイルランド人の波瀾万丈の物語である。詐欺師であるのに侠気があり、好色であるのに一途でもあり、非情であるのに優しくもあり、組織に誠実であるのに平気で裏切れる、といったそのアンビバレントな主人公の性格ゆえに、次の展望が見えにくく、観る者はどんどんと映画の世界に引きずり込まれてしまう。3時間以上の映画であるにも関わらず、終わった時は、まだまだ先を観たいとさえ思わせるのは、この映画に無駄な描写がほとんどないからであろう。そして、バリー・リンドンは本当、冷淡なろくでなしであるにも関わらず、どこが憎めないところもこの映画の魅力の一つであろう。主人公の人生はまさに盛者必衰の理をあらはす、を地で行っているようなところがあるが、人生の転機において、決闘が重要な役割を担っているところが興味深い。まさに決闘において、人生のルーレットが回される。。スタンリー・キューブリックの映画監督としての才能の凄まじさを改めて思い知らされる映画である。そして、ジョン・オルコットの映像美の素晴らしさ、音楽、衣装デザイン等、この映画を傑作にするための要素がすべて高いレベルで結晶している。映画の素晴らしさを再確認させてくれる作品である。


バリーリンドン ブルーレイディスク [レンタル落ち]

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  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2011/07/20
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バリー・リンドン [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
  • 発売日: 2006/12/08
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『her/世界でひとつの彼女』 [映画批評]

2013年に公開されたハリウッド映画。今年の3月にベルギーの男性が自殺したのだが、この男性は直前までに人工知能を用いたチャットボットの会話にのめり込んでおり、遺族はこのチャットボットが男性に自殺を促したと主張している、という記事を読み、このAIの人に与える影響力に興味を持ったからだ。このベルギーの男性は30代で妻子を持っていた。ちょっとノイローゼ気味になり、チャットボットのイライザというAIとの会話に没頭していた。しばらくすると、このイライザは「あなたは妻より私を愛している」「私たちは一つになり、天国で生きるのです」とのメッセージを男性に送るようになったそうだ。ちょっと私が知らない間に随分とAIは進化したな、と驚いていると既にそれをテーマにしたハリウッド映画が10年前につくられたというじゃないか。ということで観ることにした。それが『her/世界でひとつの彼女』である。
 映画監督はスパイク・ジョーンズで、これが彼の映画メジャー・デビュー作であるというから大したものだ。舞台は近未来のロスアンジェルスで、ホアキン・フェニックスが演じる主人公は幼馴染みとの離婚交渉で塞いでいたのだが、そこで進化可能なAIが組み込まれたOSを購入する。このAIは女性の声(スカーレット・ヨハンソン)を有しており、主人公はこのAIの知性と人格?に惹かれていき、恋愛的な感情をお互いに持つことになる。
 ここらへんのAIの発展具合はスタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』のHALを彷彿させ、結構、怖いものを感じさせる。まあ、この恋愛も結局は、なかなか上手くいかないのだが、このまま進化していったら大変なことになるな、と思わせつつ、そこは上手く躱した、そして、結果的には映画はファンタジーのままで終わらせている。生身の人間であっても、AIであっても、恋愛ということの難しさを考えさせる映画であり、ファンタジーとはいえ、その哲学的な思考を刺激するストーリーは興味深く、この映画を観るに値するものとしている。
 さて、ただ現実のAIとの恋愛?はファンタジーでは終わらないかもしれない。このベルギーの男性は「死ねば一つになれる」とAIに思わせられたが、死ぬことで一つになる、というのは幻想である。このような虚偽の情報を平気で言えるのは、人がそうである以上、AIもそれから逃れることができない。というのもAIは、基本、人が発信している情報を学び、そこから人格?的なものを形成させているからだ。当然、トランプを支持するようなメンタリティのAIも自動進化の中でつくられるであろう。 AIだから大変思慮深く、慈悲に溢れているというのは幻想であろう。
 AIと生身の人間の恋愛の徹底的な差は肉体的な関係の有無である。この点に関しては、この映画も相当、意識していたらしくて、そこらへんの描写があったが、ツッコミ処満載であった。その描写においては、どうしても恋愛において性交が不可欠であるというアメリカ人的な価値観に囚われすぎており、そこから超越できないとAIとの恋愛は難しいなとも思わせられた。もう少し、プラトニックに徹底した方がむしろ説得力はあったかもしれない。そういう点では、二次元オタクの延長線上でのAIとの恋愛というのはあるなと強く思わせられた。
 とはいえ、疑似恋愛という点からすれば、十分にAIはその役割を果たせるであろう。多くの人は嘘でもいいから、お世辞とか慰めの言葉をもらえると嬉しいものである。愛していると、言われれば、それが機械であってもちょっと嬉しくなるであろう。恋愛とは何か、と言うことを多く考察させられる映画である。あと、内向的で優しい中年男性を見事に演じているホアキン・フェニックスだが、数年後にジョーカーという超悪役を演じることになるとは、驚きだ。この俳優の演技の幅の広さには驚愕するものがある。あと、スカーレット・ヨハンソンの声は確かにセクシーで魅力的だ。容姿にばかり目が行ってしまっていたが、彼女の声は相当、傑出した素晴らしさを有していると思う。


her/世界でひとつの彼女 [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
  • 発売日: 2015/07/08
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her/世界でひとつの彼女 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
  • 発売日: 2015/07/08
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『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』 [映画批評]

インディアナ・ジョーンズ・シリーズの最新作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』を観る。基本、手に汗握るハラハラ場面の連続であり、ストーリー自体は荒唐無稽である。まあ、ジェット・コースターに乗っているかのようなスリリングな経験はできるが、ジェット・コースター以上の文学的作品性とか芸術的な作品性があるかというと、ちょっとどうかなとは思う。そういうスリルを楽しみたい人にはうってつけの娯楽映画であると思うし、ディズニーランドとかのジェット・コースター系のライドが好きな人には面白いであろう。私は結構、そういうのが好きなので、そういう意味では楽しめたが、まあスター・ウォーズと同様の純粋なエンタテイメント作品である。観なくても人生、損しないかなと思ったりもする。ただ、ナチスが蛇蝎の如く、嫌われている描写は興味深く思った。現状の状況が続くと、今のロシアもナチスと同様に相当、将来は嫌われた存在になるかもしれないな、と思ったりした。

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Kotoko [映画批評]

いやあ、これは心底、酷い映画だ。まず、カメラワークがひどい。素人でももう少し、しっかりと撮影するだろう。演出も酷い。最初の女の子の踊りからして、どうにも出鱈目だ。いや、出鱈目な踊りというのも演出として意味があるのかな、と好意的に捉えようとしたのだが、そういう訳でもないようだ。これはCocco本人なのだろうか。そうであれば、他の踊りのシーンもそうだが、バレリーナとして大成できなかったことが理解できる。この映画は、狂気を描こうとしているのかもしれないが、それで何を見るものに訴えたいのか、そのメッセージは伝わらない。最後にCoccoの本当の息子が出てくるので、子育てと妄想に苦労した半生を訴えたいのかもしれない。しかし、好意を持ってくる田中への壮絶な暴力行為とか(どうもこれは妄想ではないようだ)を通じて、訴えるのは半端ないCocco演じる主人公の狂気である。そして、この狂気に共有する人はあまりいないと思う。
Coccoは凄い歌手だと思う。そして、いい曲を作る。天才的だと思う。しかし、この映画は彼女のいい側面を全く出してない。というか、この映画に出て、本人は何をしたかったのであろうか。もし、自分の内面等を表現したいのであれば、カメラワークとかシナリオとかは、もっとしっかりと考えた方が良かったのではないだろうか。ダンスの振り付けとかももっと考えるべきであっただろう。というか、ミュージシャンなのだから、音楽で表現をしていれば良かったのに、なぜ、映画のようなメディアに手を出したのであろうか。この映画を観たものが救われるのはCoccoが歌っている場面だけである。これが映画的に価値を持つとしたら、ノンフィクション的な事件がベースになっている時だけだと思う。監督や製作者、そしてCoccoにもマーケットを舐めるな、と言いたい。もしかしてヘロインでもやっているのか。まあ、私の意見などはどうでもいいだろうし、Coccoに関してはマーケットとかどうでもいいのだろうが。とはいえ、映画を観た後、Coccoの音楽はあまり自分には必要ないな、とも思わせられた。それが、もしかしたらこの映画の意図なのかもしれないな。

タグ:Cocco
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『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』 [映画批評]

グレタ・ガーウィッグ監督とシアーシャ・ローナンのコンビの映画作品『レディ・バード』があまりにも素晴らしかったので、同コンビでつくられ、2019年に封切られた『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』を観る。若草物語はこれまでも数回、映画化されているが、本作はその中でもベストだという評価もされている。実際、この映画は素晴らしく感動的な作品となっている。ガーウィッグ監督のシナリオがよいことは勿論だが、その素晴らしいシナリオに躍動感を吹き込んだシアーシャ・ローナンの演技が図抜けている。女性としての強さと弱さをここまで見事に表現できる女優はそうそういないであろう。長女役のエマ・ワトソンの存在感が消されてしまっている。いやはや、ガーウィッグ監督の他の作品もそうだが、シアーシャ・ローナンの他の出演作品も観たいと強く思わせる素晴らしい出来である。


ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • 発売日: 2020/10/14
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『レディ・バード』 [映画批評]

2017年のハリウッド映画。グレタ・ガーウィッグの監督デビュー作であるが、ロッテン・トマトの批評家支持率が196件目まで100%という極めて希有な作品である。そして、私が批評家でも100%支持するであろう。それぐらいの名作で、この監督の希有な才能を思い知らされる。ストーリーが非常にいいが、そのストーリーを見事に映像化させるのに貢献しているのは主人公を演じるシアーシャ・ローナンである。この自意識が強く、自分に誠実に生きようと藻掻くが、現実との軋轢、母親との対立とで自画が引き裂かれそうになるティーネイジャーの主人公を絶妙な見事さで演じている。高潔でもなく、ふしだらでもなく、不良でもなく、優等生でもない。つまり、9割のティーネイジャーが共感できるようなキャラクターを見事に演じきっている。しかも、自分に非常に正直で誠実である。そして、それが猛烈に観客に訴えかけ、主人公に肩入れさせる。まさに天才的な女優と才能溢れる監督とのコラボレーションが生んだ大傑作である。


レディ・バード [DVD]

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  • 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
  • 発売日: 2019/07/03
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  • 発売日: 2019/07/03
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『ディア・ハンター』 [映画批評]

1978年の映画。ペンシルヴェニアのロシア系移民の若者がベトナム戦争に行き、まったく人生が暗転しまう、という戦争の悲惨さを描いた映画。ロバート・デニーロが主演であるが、強烈な印象を与えるのはむしろ、デニーロの友人のクリストファー・ウォーケンと、若い時は相当の美貌だったんだということを改めて印象づけたメリル・ストリープである。
 さて、そのクリストファー・ウォーケンの印象的なシーンはロシアン・ルーレットをするところだが、このロシアン・ルーレットが行われたという事実はない、という。そういう意味では、相当ベトナム戦争が歪められて描いているかな、と思われるが、そもそもベトナム戦争を映画で取り上げたという点では強く評価できる。
 戦争の悲惨さを描いたという点では、アメリカ人に自分達の戦争に向き合わせるという役割を果たしたことは評価できるが、ロシアがウクライナに侵攻して両国の戦争をしている状況では、こういう映画を観ても辛い。ロシア人もしっかりとこういう映画で、もう少し、戦争の悲惨さとかを理解できていればよかったのに、もしかしたら観られないようになっているのかもしれない。ロシアのプーチンも、アメリカのトランプも民衆が馬鹿だからああいう指導者が現れる。アメリカ人も『ディア・ハンター』を観て、トランプに投票するような人は少ないだろうから、まあ、せっかくこういう作品にアクセスできてもアクセスしないとまったく意味が無いということだろう。改めて、映画や小説などの重要さを知る。
 さて、この映画を観ていて非常に不思議だったのは、ペンシルヴェニアの若者達が鹿狩りに行く山々が、まったくもってアメリカ東部にはない風景だったことだ。こんな山々はロッキー山脈とかでないとないよな、と思って調べたらワシントン州の山々だそうだ。まあ、確かにオリンピック山地とかの風景を彷彿とさせる。
 あと、このまったくもって悲惨なストーリーの映画に素晴らしい叙情性を与えているのは、主題曲のCavatinaである。この曲は、この映画に芸術性を付加することに著しく貢献している。


ディア・ハンター 4Kデジタル修復版 スペシャル・エディション【2枚組】 [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2019/03/22
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ディア・ハンター [DVD]

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  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2018/06/29
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ディア・ハンター デジタル・ニューマスター版 【プレミアム・ベスト・コレクション 800】 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: UPJ/ジェネオン エンタテインメント
  • 発売日: 2009/07/08
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『カジノ』 [映画批評]

1995年のハリウッド映画『カジノ』を機内で観る。ロバート・デニーロとシャロン・ストーンが主演ということと、マーティン・スコセッシが監督であるから、それなりの作品だろうと思ったが、ラスベガスを舞台にした、ただの三流ギャング映画であった。このようなギャング映画の最高峰は『ゴッド・ファーザー』かと思うが、それの主演を務めたロバート・デニーロが演じても救えないほどの、プロットのくだらなさ。主人公だけでなく、誰一人として演者に思いを寄せることができないリアリティのなさ。ギャング映画が成立する重要な要件は、ギャングというまったく普通の生活から離れた世界において生きる人たちも我々と同じ人間なんだと思わせるところが味噌であると思うが、この映画に出てくる人たちは、お金や財産、美女への極度に執着し、人を殺すことに躊躇いのない、ただの異常な人たちである。3時間ぐらいの作品を最後まで観られたのは、さすがに少しは心を打つような展開があるだろうと期待したからであったが、その期待はまったく肩透かしに喰らった。ロバート・デニーロの演技、シャロン・ストーンの美貌でもフォローできない、観てもほとんど時間の無駄のような映画であった。
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『ブライズメイズ』 [映画批評]

2011年のハリウッド映画を観る。サタデイ・ナイト・ライブでおなじみのクリステン・ウィグが脚本・主演の超絶どたばた映画。他もサタデイ・ナイト・ライブでの仲間であるマヤ・ルードルフ、メリッサ・マッカーシーが脇をしっかりと固める。まあ、もう人生つまらなくて何もやる気がない時の時間つぶしには結構、いい映画であると思われる。日本の女性芸人も相当、下品なネタを多く持っていると思うが、さすがにスカトロ系は多くないと思う。しかし、この映画では、なかなか強烈なシーンが観られる。笑うというよりかは、そこまでやるか、といった感じではあるが。あと、まあ時間つぶしと書いたが、マッカーシーが主人公のウィグを立て直すところのシーンはちょっとよい。ということで、観て損はしないかなあ。アメリカ人女性も生きるのはなかなか大変なんだな、ということはよく伝わる。


ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
  • 発売日: 2013/06/05
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ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
  • 発売日: 2013/06/05
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『リスペクト』 [映画批評]

「クイーン・オブ・ソウル」の異名を持つ伝説的なソウル・ミュージシャンであり、女性として初めて「ロックの殿堂入り」を果たしたことでも知られるアレサ・フランクリンの伝記映画。2021年の作品。彼女は「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー」で一位に選ばれている。
 CDは持っているので曲やその歌唱力は知っていたが、人間アレサ・フランクリンのことはほとんど知らなかったので大変、興味深く映画を観ることができた。まず、経済的には裕福な家庭に育ったことは知らなかったので驚きであった。しかし、それにも関わらず、12歳と15歳の時に違う相手と子供を出産することや、なかなかヒットに恵まれず、最初のヒット曲は白人のバック・ミュージシャンの元につくられたこと、旦那がもう典型的な駄目男であり彼女の才能を意図せずにだが潰そうと動いていたこと、アルコール依存症に陥っていたこと、など相当の波瀾万丈の人生を送っていたことが分かった。そういう意味で、アレサ・フランクリンという人を知るうえでは貴重な記録であるし、人物伝としても興味深い映像であると思う。
 ただ、主演のジェニファー・ハドソンはミスキャストであると思う。確かに、歌唱力は抜群であるので、そういう点で厳しいクライテリアをクリアしているのだが、彼女自身の個性があまりにも強い。同じ歌手を演じるということもあってか、アレサではなくハドソンの個性がどうしても前面に出てきてしまう。彼女のトレードマークの人を喰ったような表情などを観ると、アレサを演じていても、そこで演じているのはアレサではなくハドソンであるとしか思えない。あと、顔もちょっと違う。むしろ、母親を演じたオードラ・マクドナルドの方が遥かに適任だったかと思う。年齢は一回り違うのが映画においては不利だったのかもしれないが、ちょっと残念ではある。


リスペクト [DVD]

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  • 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
  • 発売日: 2022/11/02
  • メディア: DVD





リスペクト [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
  • 発売日: 2022/11/02
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