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『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』 [映画批評]

グレタ・ガーウィッグ監督とシアーシャ・ローナンのコンビの映画作品『レディ・バード』があまりにも素晴らしかったので、同コンビでつくられ、2019年に封切られた『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』を観る。若草物語はこれまでも数回、映画化されているが、本作はその中でもベストだという評価もされている。実際、この映画は素晴らしく感動的な作品となっている。ガーウィッグ監督のシナリオがよいことは勿論だが、その素晴らしいシナリオに躍動感を吹き込んだシアーシャ・ローナンの演技が図抜けている。女性としての強さと弱さをここまで見事に表現できる女優はそうそういないであろう。長女役のエマ・ワトソンの存在感が消されてしまっている。いやはや、ガーウィッグ監督の他の作品もそうだが、シアーシャ・ローナンの他の出演作品も観たいと強く思わせる素晴らしい出来である。


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『レディ・バード』 [映画批評]

2017年のハリウッド映画。グレタ・ガーウィッグの監督デビュー作であるが、ロッテン・トマトの批評家支持率が196件目まで100%という極めて希有な作品である。そして、私が批評家でも100%支持するであろう。それぐらいの名作で、この監督の希有な才能を思い知らされる。ストーリーが非常にいいが、そのストーリーを見事に映像化させるのに貢献しているのは主人公を演じるシアーシャ・ローナンである。この自意識が強く、自分に誠実に生きようと藻掻くが、現実との軋轢、母親との対立とで自画が引き裂かれそうになるティーネイジャーの主人公を絶妙な見事さで演じている。高潔でもなく、ふしだらでもなく、不良でもなく、優等生でもない。つまり、9割のティーネイジャーが共感できるようなキャラクターを見事に演じきっている。しかも、自分に非常に正直で誠実である。そして、それが猛烈に観客に訴えかけ、主人公に肩入れさせる。まさに天才的な女優と才能溢れる監督とのコラボレーションが生んだ大傑作である。


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『ディア・ハンター』 [映画批評]

1978年の映画。ペンシルヴェニアのロシア系移民の若者がベトナム戦争に行き、まったく人生が暗転しまう、という戦争の悲惨さを描いた映画。ロバート・デニーロが主演であるが、強烈な印象を与えるのはむしろ、デニーロの友人のクリストファー・ウォーケンと、若い時は相当の美貌だったんだということを改めて印象づけたメリル・ストリープである。
 さて、そのクリストファー・ウォーケンの印象的なシーンはロシアン・ルーレットをするところだが、このロシアン・ルーレットが行われたという事実はない、という。そういう意味では、相当ベトナム戦争が歪められて描いているかな、と思われるが、そもそもベトナム戦争を映画で取り上げたという点では強く評価できる。
 戦争の悲惨さを描いたという点では、アメリカ人に自分達の戦争に向き合わせるという役割を果たしたことは評価できるが、ロシアがウクライナに侵攻して両国の戦争をしている状況では、こういう映画を観ても辛い。ロシア人もしっかりとこういう映画で、もう少し、戦争の悲惨さとかを理解できていればよかったのに、もしかしたら観られないようになっているのかもしれない。ロシアのプーチンも、アメリカのトランプも民衆が馬鹿だからああいう指導者が現れる。アメリカ人も『ディア・ハンター』を観て、トランプに投票するような人は少ないだろうから、まあ、せっかくこういう作品にアクセスできてもアクセスしないとまったく意味が無いということだろう。改めて、映画や小説などの重要さを知る。
 さて、この映画を観ていて非常に不思議だったのは、ペンシルヴェニアの若者達が鹿狩りに行く山々が、まったくもってアメリカ東部にはない風景だったことだ。こんな山々はロッキー山脈とかでないとないよな、と思って調べたらワシントン州の山々だそうだ。まあ、確かにオリンピック山地とかの風景を彷彿とさせる。
 あと、このまったくもって悲惨なストーリーの映画に素晴らしい叙情性を与えているのは、主題曲のCavatinaである。この曲は、この映画に芸術性を付加することに著しく貢献している。


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『カジノ』 [映画批評]

1995年のハリウッド映画『カジノ』を機内で観る。ロバート・デニーロとシャロン・ストーンが主演ということと、マーティン・スコセッシが監督であるから、それなりの作品だろうと思ったが、ラスベガスを舞台にした、ただの三流ギャング映画であった。このようなギャング映画の最高峰は『ゴッド・ファーザー』かと思うが、それの主演を務めたロバート・デニーロが演じても救えないほどの、プロットのくだらなさ。主人公だけでなく、誰一人として演者に思いを寄せることができないリアリティのなさ。ギャング映画が成立する重要な要件は、ギャングというまったく普通の生活から離れた世界において生きる人たちも我々と同じ人間なんだと思わせるところが味噌であると思うが、この映画に出てくる人たちは、お金や財産、美女への極度に執着し、人を殺すことに躊躇いのない、ただの異常な人たちである。3時間ぐらいの作品を最後まで観られたのは、さすがに少しは心を打つような展開があるだろうと期待したからであったが、その期待はまったく肩透かしに喰らった。ロバート・デニーロの演技、シャロン・ストーンの美貌でもフォローできない、観てもほとんど時間の無駄のような映画であった。
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『ブライズメイズ』 [映画批評]

2011年のハリウッド映画を観る。サタデイ・ナイト・ライブでおなじみのクリステン・ウィグが脚本・主演の超絶どたばた映画。他もサタデイ・ナイト・ライブでの仲間であるマヤ・ルードルフ、メリッサ・マッカーシーが脇をしっかりと固める。まあ、もう人生つまらなくて何もやる気がない時の時間つぶしには結構、いい映画であると思われる。日本の女性芸人も相当、下品なネタを多く持っていると思うが、さすがにスカトロ系は多くないと思う。しかし、この映画では、なかなか強烈なシーンが観られる。笑うというよりかは、そこまでやるか、といった感じではあるが。あと、まあ時間つぶしと書いたが、マッカーシーが主人公のウィグを立て直すところのシーンはちょっとよい。ということで、観て損はしないかなあ。アメリカ人女性も生きるのはなかなか大変なんだな、ということはよく伝わる。


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  • 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
  • 発売日: 2013/06/05
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『リスペクト』 [映画批評]

「クイーン・オブ・ソウル」の異名を持つ伝説的なソウル・ミュージシャンであり、女性として初めて「ロックの殿堂入り」を果たしたことでも知られるアレサ・フランクリンの伝記映画。2021年の作品。彼女は「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー」で一位に選ばれている。
 CDは持っているので曲やその歌唱力は知っていたが、人間アレサ・フランクリンのことはほとんど知らなかったので大変、興味深く映画を観ることができた。まず、経済的には裕福な家庭に育ったことは知らなかったので驚きであった。しかし、それにも関わらず、12歳と15歳の時に違う相手と子供を出産することや、なかなかヒットに恵まれず、最初のヒット曲は白人のバック・ミュージシャンの元につくられたこと、旦那がもう典型的な駄目男であり彼女の才能を意図せずにだが潰そうと動いていたこと、アルコール依存症に陥っていたこと、など相当の波瀾万丈の人生を送っていたことが分かった。そういう意味で、アレサ・フランクリンという人を知るうえでは貴重な記録であるし、人物伝としても興味深い映像であると思う。
 ただ、主演のジェニファー・ハドソンはミスキャストであると思う。確かに、歌唱力は抜群であるので、そういう点で厳しいクライテリアをクリアしているのだが、彼女自身の個性があまりにも強い。同じ歌手を演じるということもあってか、アレサではなくハドソンの個性がどうしても前面に出てきてしまう。彼女のトレードマークの人を喰ったような表情などを観ると、アレサを演じていても、そこで演じているのはアレサではなくハドソンであるとしか思えない。あと、顔もちょっと違う。むしろ、母親を演じたオードラ・マクドナルドの方が遥かに適任だったかと思う。年齢は一回り違うのが映画においては不利だったのかもしれないが、ちょっと残念ではある。


リスペクト [DVD]

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  • 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
  • 発売日: 2022/11/02
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  • 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
  • 発売日: 2022/11/02
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シン・ウルトラマン [映画批評]

国際便に乗ったので時間つぶしに観たら、非常によかった。ウルトラマン・シリーズの懐かしの怪獣や外星人が出てきて、ちょっと懐かしい。ザラブ星人、メフィラス星人、ゼットンなどである。ゼットンはゼットン星人の最終兵器かと思っていたのだが、この映画ではなんとゾフィーがセッティングしたという驚きの展開。全般的に制作陣が同じだからか、オリジナルのウルトラマンよりも「シン・ゴジラ」との共通点が多い。役所の非効率とか、アホな政治家、とかそういう本質的でないところで、問題がどんどんややこしくなっていく。結局、本当の敵は怪獣や外星人じゃなくて、身内のシステムにあるんじゃないか、と思わせるところが、なんか観ていていらいらさせるが、それらの描写がこの荒唐無稽なフィクションにリアリティ感を与えているところが面白い。あと、長澤ますみは勝手に清楚なイメージを抱いていたが、この映画で彼女演じる、あばずれ感のする公務員はなかなか悪くなかった。ちょっと、オタク受けをする映画かもしれないが、私は十二分に楽しめた。できれば、本制作陣によるバルタン星人やメトロン星人などが出てくるバージョンのものも観てみたい。


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  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2023/04/12
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『チケット・トゥ・パラダイス』 [映画批評]

ジュリア・ロバーツとジョージ・クルーニーの豪華共演映画ではあるが、それ以上のものではなく、糞の役にも立たない時間つぶしの映画。まあ、内容のないコメディ映画に腹を立ててもしょうがないのだが。バリ島のロケは綺麗ではあるが、そんな世界で一番美しい、というほどは美しくはないだろう。私ぐらいの年だと、ジュリア・ロバーツを『プリティ・ウーマン』で知ることになり、もうそのプリティさには相当、参った世代ではあるが、さすがにその頃を知っていると、薹が立っているジュリア・ロバーツはちょっと辛い。というか、ハリウッド映画は本当、内容が薄い。なんか仕事している意味あるんか、と言いたくなるような作品だ。


チケット・トゥ・パラダイス ブルーレイ+DVD [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
  • 発売日: 2023/03/14
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『エブリシング・エブリホエア・オール・アット・ワンス』 [映画批評]

2022年の製作のハリウッド映画で、今年のグラミー賞を総ナメした『エブリシング・エブリホエア・オール・アット・ワンス』を観た。パラレル・ワールドのストーリーで、プロットは比較的興味深いが、その世界観はマトリックスには遠く及ばず、ジョジョの不思議な冒険の第七部「スティール・ボール・ラン」の方が迫力があった。ただ、この映画はグラミー賞の主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞をとるだけあって、俳優の演技はよくて、それが、この荒唐無稽なシナリオを救っている。
しかし、このSF映画がハリウッドでこれだけ評価されたのは、むしろハリウッド映画の近年のストーリー・テリングの貧相さを示唆していると考える。というのは、日本人は、この程度のストーリーではワクワクしないぐらい、「ジョジョの不思議な冒険」に始まり、「20世紀少年」、「サイボーグ009」、「鉄腕アトム」など極めて物語性の高いSFに小さい時から染まっているからである。私が小学生の時、「スターワーズ」のブームが起きたが、私はウルトラマン・シリーズの方がはるかに格好よく、宇宙人も洗練されていると思ったものである。その気持ちは今も変わらない。もちろん、ハリウッドのSF映画でも「ブラジル」や「ブレード・ランナー」などは大好きではあるが、総じて、日本の方がはるかに刺激的な作品が多いと思う。そういうのが日本のアニメが世界のオタクに受けいれられている背景にあるのかと思うが、エブエブはそういう素養の浅いアメリカ人には受けても、日本人にはそんなに受けないのじゃないかな、と思わせる。

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映画『ドライブ・マイ・カー』 [映画批評]

第74回カンヌ国際映画祭で日本映画初となる脚本賞を含む計3部門を受賞した2021年の映画。第94回アカデミー賞でも国際長編映画賞を受賞した。ということで、見なくてはいけないな、と思っていたのだが、国際線に乗ったらちょうどビデオ・ライブラリーに含まれていたので観た。

さて、その内容だがたいへん濃く、いろいろと考えさせられるいい映画であった。流石、村上春樹という感じで、最後の主人公の心情の吐露は心を揺さぶる。その主人公を演じた西島秀俊の演技は村上春樹がつくりだす空気感にぴったりと合っている。見事な配役だ。韓国や台湾といった俳優陣もなかなかよく、この映画の魅力を増すのに貢献している。

カンヌ国際映画祭やアカデミー賞で受賞するだけの、国境を越えて人間に訴える力を持っている映画である。若い人にはどう響くか分からないが、私のように還暦に近い人間にはちょっと心を揺さぶるような力を持った映画である。


ドライブ・マイ・カー インターナショナル版 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
  • 発売日: 2022/02/18
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  • 発売日: 2022/02/18
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映画『MINAMATA』 [映画批評]

ジョニー・ディップ主演の『MINAMATA』を観る。2021年に公開された。ジョニー・ディップ演じる写真集『MINAMATA』を出した写真家ユージン・スミスと妻のアイリーンとの実話である。久々に映画の価値を再確認させてくれたような迫力ある、そして観るものに強く訴えかける作品だ。ジョニー・ディップの演技は流石で、この映画を鑑賞したアイリーンは撮影中に「ユージンがいる」と思えた瞬間があったと述べていたそうだ(Buzzfeed News 2021/08/28)。
ただ、残念だなと思ったのが、ロケが水俣ではないこと。どこかは特定できてないが、ワシントン州かカナダのブリティッシュ・コロンビア州のような印象を植生から受ける。建物もアメリカ人からみたら日本的かもしれないが、日本的ではない。そして、一部の子供たちが明らかに日本人じゃないことも強い違和感を覚える。アイリーンを演じたフランス人と日本人のハーフである美波は、それほど気にはならないというか、むしろこの映画にはプラスな印象を覚えたが、子供が日本人ではないのは水俣病を題材として扱う映画としては、例え水俣病に侵されていない子供だとしても、ここは日本人を配役してもらいたかった。
とはいえ、久しぶりにその世界にのめりこめるような映画を観た。MGMはジョニー・ディップのイメージがこの映画で下がるだろうと懸念して、この映画の配給に反対したようだが、いや、むしろ個人的にはジョニー・ディップのイメージは相当、上がった。流石の名優である。




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  • 発売日: 2022/02/18
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『スーパースター』 [映画批評]

1999年のコメディ映画。サタデー・ナイト・ライブで生まれたキャラ「マリー・キャサリン・ギャラガー」のスピン・オフ作品。モーリー・シャノン演じるマリー・キャサリン・ギャラガーは47年に及ぶサタデー・ナイト・ライブの歴史が生み出した数多のキャラクターの中でも、極めて奇妙奇天烈なキャラクターだ。カトリック系の女子高校生マリー・キャサリン・ギャラガーは、超絶にイタいキャラクターであるにも関わらず、その内から滲み出る生きるエネルギーは、目を背けたいと思いつつもどこか応援したくもなる不思議なキャラクターである。典型的ないじめられっ子であるが、ポジティブ・シンキングでそれを超越してしまうプロセルは観ていて楽しい。モーリー・シャノンは1964年生まれなので、撮影時、既に35歳である。ちょっと高校生を演じるには薹が立ってしまっている。ちょっとアップで皺が目立つのは残念。というか、このシーンいらなかったであろうとさえ思う。とはいえ、彼女を演じられるのは彼女しかいない、というかマリー・キャサリン・ギャラガーがモーリー・シャノンそのものだから、その点は致し方ない。映画で一貫してイタいキャラであったマリーであるが、エンディングではそういうイタいキャラからも一歩、卒業できたような感じで、鑑賞後は少し爽やかな気分にさえなる。しかし、こんな子がクラスにいたら日常が荒らされるよな、と思ったりもする。


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  • 出版社/メーカー: Paramount
  • 発売日: 2017/09/12
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かもめ食堂 [映画批評]

群ようこの原作を読んでなく、この映画を観る。それは久しぶりにヘルシンキを訪れたからである。ヘルシンキのカウパットリ市場やアレクサンテリカトゥ通りなど、ヘルシンキの町を舞台に、日本人成人女性3名のゆったりとした日々を描く。どこか肩の力が抜けていて、ちょっとほんわかした気分にさせてくれる大人のためのメルヘンのような映画。小林聡美、もたいまさこ、片桐はいりの3人は皆、演技上手なので、そういう点でも見ていてとても安心できる。メッセージ性があるというよりかは、環境音楽のような映画かなと思う。疲れた心にはいいかもしれない。


かもめ食堂 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2006/09/27
  • メディア: DVD



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『Jazz Fest: A New Orleans Story』 [映画批評]

ニューオリンズを舞台としたジャズ・フェストのドキュメンタリー映画を観る。1970年にコンゴ広場で始まったフェスティバルは、徐々に有名になっていき、現在では50万人をも集客する大イベントにまで成長した。ジャズ・フェスティバルであるが、ジャズからゴスペル、リズム・アンド・ブルース、ロックまで幅広いジャンルの音楽が演奏される。この映画は、それらがどのように始まったか、そしてカタリーナ・ハリケーンの大水害からどのように復活したか。さらにはコロナで二年間の中止を余儀なくされ、2022年に再び復活するまでを、数多くの関係者へ語らすことで描き出している。このフェスティバルのオーセンティシティ、ユニークさが見事に観る者に伝えるように編集されており、良質なドキュメンタリーとなっている。また、多くの出演者の演奏が魅力的で、それらも画面に観る者を惹きつけさせる。個人的にはブルース・スプリングスティーンとサマンサ・フィッシュの演奏には非常に惹きつけられるものがあった。サマンサ・フィッシュはこの映画で初めて知ったが、早速、CDを注文した。非常に芯のある素晴らしいギターを演奏する。

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『ナイル殺人事件』 [映画批評]

アガサ・クリスティの『ナイルに死す』をもとに2022年に映画化され、公開された作品。ガル・ガドットがなかなかいい味を出している。クリスティの作品はもう、普通の人の想像を越えるどんでん返し的な結論が非常に魅力な訳だが、この作品でもやられた。こちらも何回もこれまでやられているので、相当、疑い深くなっている。しかし、今回も私の想像を越えた人物が犯人であった。アガサ・クリスティの作品はこの「今回もやられました」的な快感が魅力なのであろう。この「やられた感」が強いほど、また「やられたく」なってしまってクリスティの作品を人々は読むのだろうな、と思う。私も「やられたい」が、それほど時間がないので国際線にでも乗っている時じゃないとできないのが残念だ。


ナイル殺人事件 ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
  • 発売日: 2022/06/01
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『シスター・アクト』 [映画批評]

ウーピー・ゴールドバーグの魅力が存分に伝わる映画である。1992年公開。ウーピー・ゴールドバーグの魅力は、「情に溢れた訴えかけるような人を見つめる視線」であると思う。本来は、ベッド・ミドラーが主役として想定されていたそうだが、あったろう。歌はメチャクチャ上手いし。とはいえ、白人の修道女の中で黒一点のウーピーが入っていることや、ゴスペルをコーラスさせるという点では、ミドラーには出せない新たな魅力を加えることに成功したと思われる。


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  • 出版社/メーカー: Goldberg, Whoopi
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『笠置ロック』 [映画批評]

笠置町に行ったので、2017年につくられた『笠置ロック』という映画を観る。50分もしない小作品ではあるが、結構、ストーリー性があって面白い。笠置町は人口1400年という小さな自治体であるが、そのうち300人がエクストラで出演したそうだ。映画による「街おこし」的な試みでもある。笠置町は人口が京都で最小というだけでなく、人口減少率ももっとも高い。ということで、本当、将来を展望すると不安ではあるが、こういう映画がつくれるコンテンツと住民がいるということを確認すると、なんか希望が持てる。何が町をつくるのか?そういう問いの答えを考えるうえでいろいろなヒントを提供してくれる映画である。そして、この映画は笠置町の立ち位置を客観的に描写している。過剰に楽観的になることもなければ、悲観的になることもない。そこが好感が持てるし、また映画を観た後味も爽やかなものにさせている。


笠置ROCK!

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  • 発売日: 2019/06/04
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『セールスマンの死』 [映画批評]

アーサー・ミラー原作の映画化作品である『セールスマンの死』を今更ながらではあるが観る。60歳になり営業成績が落ち、体力も落ち、仕事も子育ても思うに任せない八方塞がりのセールスマンの絶望的な悲哀を描いた作品である。虚栄心ゆえに、現在の自分、さらには息子が置かれている惨めな現実を認められない姿には、滑稽さはまったくなく、ひたすら気が滅入る。ただ、私も39歳まで15年間、サラリーマンをやっていたこともあり、この主人公の心情が読み取れる。おそらく、今でもサラリーマンをやっていたら、還暦を目前にしている今頃、同じような気持ちになっていたかもしれない。セールスマン、というか営業職は大変だ。商品(サービス)を売るために会社に入った後、ひたすら「売り(セールス)」まくり、ネットワークを築いたようで、実はそれは肩書きでのネットワークにしか過ぎなかったことを知る。私もそういう経験をしている。自分を「買って」くれたかと思っていたものが、ただ名刺の肩書きだけを「買って」くれていたのである。私の仕事はコンサルタントなので、それでも営業するものの個性が、他の商品よりは出ていたかと思うが、所詮、そんなものである。主人公の葬儀は5人しか葬列しない寂しいものであった。
 もちろん、主人公と違って、営業成績をしっかりと積んで出世する人達もいるであろう。しかし、それはセールスマンとしての才能のようなものがある人である。残念ながら、主人公はそれなりの成績を若い時は出せたようだが、晩年の衰えをカバーできるほどは、この面において才能がなかった。私事で恐縮だが、私は父親も弟も営業職である。父親はそこそこ出世したが、しかし、彼の人生は何だったのだろうと思う。晩年は東大のサッカー部の監督をしていたので、主人公と違って葬儀は多くの人が見送りに来てくれたが、仕事を通じて何かを達成したのであろうか。父親のセールスマン人生の空虚さを目の前でみることができたので、私は父親の反対を遮って転職したのだが、これは人生で数少ない大正解の判断だと思う。
 さて、今は違うが前任校は経済学部に所属していたので、多くの卒業生は営業職に就く。経済学部は就職に強い、と言われて経済学部を受験する学生も多いが、それは単に営業職に就くからだ。さて、当然、経済学部の学生でも営業に向いている学生とそうでない学生がいる。中には、この映画の主人公どころではなく営業に向いていない学生がいる。しかし、そういう学生は例えばプログラミングができたり、絵が上手かったりする。それでも、営業職に就いてしまう。企業側も経済学部出身だから、営業が出来るのだろうと勝手に期待するのであろうか。勿体ないことだと思う。
 そういうことを回避するためにも、現役の大学生は下手にキャリア関係の活動をしたり、インターンシップに行ったりする前に、この映画を観るといいと思う。もちろん、フィクションではあるが、仕事の非人間性、理不尽さがリアリティを持って描かれている。これを観て、そういう世界に行く覚悟がなければ、営業職以外のキャリアを考えるべきであろう。


セールスマンの死 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ジュネス企画
  • 発売日: 2009/10/26
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『地下鉄のザジ』 [映画批評]

何かのきっかけで購入してしばらく放っておいたのを、仕事が一段落したので見る。放っておいたのはあまり興味が湧かなかったのだが、見たらなかなか面白く、鑑賞後の疲れはない。まあ、それは軽い作品だということもあるが、個人的に興味深く感じたのは、この映画は1960年の作品なのだが、当時のパリの状況を知る貴重な映像資料となっているからだ。戦後から15年後のパリは、今のパリとは比べものにならないほど雑然として無秩序である。しかし、そこで撮影されていたギャラリーなどは今よりもずっと汚いが、その雰囲気を今でも維持できていることを知る。60年後の今の方が、古い建物が洗練されお洒落になっていて、それらしくなっていることに気づかせられる。都市デザインがそれなりに都市の魅力を向上させることに貢献することに気づかせてくれ映画であるということが個人的には、何より興味深かった。映画の内容はドタバタ・コメディ。しかし、ちょっとセンスはよく、また映像編集も上手く、それがこの映画のハチャメチャなドタバタさ加減に清涼剤のような爽快感を与えている。いや、見て損はない映画だと思う。


地下鉄のザジ [DVD]

地下鉄のザジ [DVD]

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2018/07/27
  • メディア: DVD



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ヒッチコックの『レベッカ』 [映画批評]

1940年のヒッチコックの監督作品。ヒッチコック41歳の作品。サイコスリラー的な作品であるが、後味はいい。たまに、こういうスリラー的で後味の悪い作品があるが(例えばマドモアゼルやツイン・ピークス)、映画は基本、娯楽なので、後味がいいと観てよかったと思える。白黒映画なのだが、これがかえってグッとゴシック的な雰囲気を出していて、映画の世界に引き込ませる。さすがの傑作だ。どうでもいい話だが、主人公のジョーン・フォンティンは日本の東京で生まれたそうである。


レベッカ [DVD]

レベッカ [DVD]

  • 出版社/メーカー: 映像文化社
  • 発売日: 2013/11/28
  • メディア: DVD



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『ハロルドとモード』 [映画批評]

荒唐無稽のシナリオの映画。1971年に公開された時は人気がなかったそうだが、その後、カルト的人気を博し、現時点ではDVD等もリリースされている。10代の青年が79歳のおばあさんと恋して、結婚するというストーリーは面白いといえば面白いが、個人的にはそれほど話には引き込まれなかった。ちょっと非現実的過ぎるでしょう、と突っ込む自分がいるのだ。と記して、私のドイツ人の40代後半の友人の母親が自分より若い男性と再婚したと当惑して話をしたことを思い出した。まあ、世の中にはいろいろなことがあるし、これが男女逆だと比較的、よく聞く話だ(大抵、男性側が金持ちであることが残念であるが)。とはいえなあ、まあ常識に囚われなくて自由人のおばあさんは魅力的かもしれないが、そこで恋に堕ちるかあ・・・というところで個人的にどうも腑に落ちないので評価はちょっと今ひとつです。ギャグも面白いとそれほど思えなかったし。


ハロルドとモード/少年は虹を渡る [DVD]

ハロルドとモード/少年は虹を渡る [DVD]

  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • 発売日: 2012/03/09
  • メディア: DVD



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『プライベート・ライアン』 [映画批評]

今更ながら『プライベート・ライアン』を観た。1998年に公開されたトム・ハンクス主演、スピルバーグ監督の戦争映画である。映画冒頭の戦場のシーンは、生々しく、戦争を知らない世代にも、そのむごたらしさ、冷徹かつ非合理な悲惨さ、が伝わるように描かれている。戦争をしない国民であることの有り難さが分かるような戦場の理不尽な残酷さを見事に表現している。この冒頭シーンだけでなく、戦争がいかにヒューマニティから縁遠いところにあるかを描ききっている。この映画の優れたところは、人間の弱さ、そしてその弱さに人間の希望というか救いのようなものを感じることである。戦争という狂気から、人間を回避させるのは、この弱さを愛おしみ、大切に感じられる気持ちを共有させることではないだろうか。憲法改正とか議論する政治家の話を聞く前に、まずはこの映画を観ることをお勧めしたい。


プライベート・ライアン [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: パラマウント
  • 発売日: 2019/04/24
  • メディア: Blu-ray





プライベート・ライアン (1枚組)[AmazonDVDコレクション]

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  • 出版社/メーカー: パラマウント
  • 発売日: 2018/03/20
  • メディア: DVD



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コンテイジョン [映画批評]

私のゼミ生がこの映画がいいと勧めたのでアマゾンで早速、注文して鑑賞したのだが、いやはや緊張感溢れた内容に加え、パンデミックの危機をリアリティ溢れた描写をしていて大いに楽しめた。まるでコロナウィルスの危機を予見したかのような内容には、ちょっと衝撃さえ覚える。というか、しっかりとパンデミックをシミュレーションすると、こういう事態になることが予見できるということであろうか。コロナウィルスを体験した我々からすると、そのシミュレーションの際だった秀逸さが理解できるともいえよう。また、直接的には交錯しないのだが、CDCの医師達、WHOの研究員、陰謀説をSNSで流すフリージャーナリスト、妻と息子をウィルスで失った男性という四つの視点からパンデミックの進展を描いていることで、視聴者は4つの多角的な視座によって状況を俯瞰することができる。それゆえに、画面にぐいぐいと引き込まれて、目が離せない。まったく集中力を途切らすことなく一挙に最後まで観ることができた。CDCのケイト・ウィンスレット演じる若手研究者が感染源を突き止めても、政治的な理由から都市封鎖ができず、無念を抱えたままウィルスに感染して亡くなってしまうことや、ジュード・ロウ演じるフリー・ジャーナリストがSNSを駆使して世論形成に成功すること、さらには人々が買い溜めに走り、暴動するところなど、今のコロナウィルスの状況そっくりである。リアリティ溢れた描写、と前述したが、現在のコロナウィルスの件でCNNの番組に出まくっているグプタ博士がカメオ的に出演していることにはちょっと個人的に受けた。というか、コロナウィルスのパンデミックを経験した我々としては、2011年につくられた作品であるにも関わらず、まるで今の状況を報道しているのではないか、という錯角さえ覚えさせる。コロナウィルスと共生していかなくてはならなくなった人類必見の映画であると思う。エンタテインメントを越えた良質な映画である。

コンテイジョン [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2012/09/05
  • メディア: DVD




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  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2012/09/05
  • メディア: DVD



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ラスト・ブラックマン・イン・サンフランシスコ [映画批評]

ジョー・タルボットのデビュー作。2019年に発表され、サンダンス映画祭で最優秀監督賞を受賞している。映画はサンフランシスコのハンターズ・ポイントに住むアフリカ系アメリカ人が、ミッション地区の瀟洒な家族が元住んでいた家に移り住もうとする話である。ジェントリフィケーションが進み、低所得者層がどんどんと追いやられる背景が、メランコリーに描かれていて、沈鬱な気分にさせられる。出口が見えない状況が続き、将来への希望は一切描写されない。そのような中、映像はとても美しく、結果、絶望的な内容であるにも関わらず、後味は悪くはないが、どうもそれは「滅びの美」のようなものかもしれないな、と思ったりもする。ジェントリフィケーションやジョージ・フロイド事件の背景を知るうえでは参考になる映画であるとも思われる。


The Last Black Man in San Francisco [DVD]

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  • 出版社/メーカー: Lions Gate
  • 発売日: 2019/08/27
  • メディア: DVD



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『柳川堀割物語』 [映画批評]

スタジオジブリの作品。3時間に及ぶ大作である。福岡県柳川市に張り巡らされる水路。これが近代化と土木国家によって汚され、その結果、蓋をされ消滅させられそうになったのだが、一人の柳川市職員の問題提起によって、水路の下水道工事計画が白紙に戻り、それを役所と住民の共同で再び清い水が流れる水路を復活させた経緯、そして、その流れの中で伝統的なコミュニティの紐帯が再び強化されていったというノン・フィクションの物語である。美しい映像、アニメを交えた水路の仕組みを分かりやすく説明する工夫、キーパーソンである広松伝氏や古賀元市長への取材、丁寧な構成と柳川市の堀割を再生した過程、背景がよく理解できる内容となっている。ある意味で、スタジオジブリ作品の中でもノン・フィクションのしっかりとした記録といった側面から大変、重要な価値を有するものかもしれない。
 広松氏はこの映画の中で「成功できたのは過去を共有できるだけの「思い出」の資源があったからだ」という。人々が蘇らせたい過去を共有できたことが、成功の原因であるというのは示唆的である。組織がまとまってある方向に行くには、共有する価値が必要だと考えるが、その共有する価値をこの柳川市は幸い、有していた。
そして、下水道工事を中止した後、役所と住民は協同してヘドロに覆われた水路の浚渫を進めていく。この住民の愛、コミットメント、そして住民達と役所の連帯があって初めて柳川の堀割は再生できたのである。貴重な記録である。
貴重な記録という点では、「川や堀は私たち市民すべての共有財産」ですと柳川の市報に書かれたのをみて、県や国は目くじらを立てて怒ったことが映画では示された。彼らからすると、川は国や県のものだそうだ。こういう馬鹿な人達がいるから、日本の美しい風土は壊されてきたことがこの映画からも分かる。そのようなトレンドに見事に抗い、柳川はその環境、風土、そしてコミュニティの連帯を維持することに成功したのである。柳川市の人々の「煩わしい水」との共存する姿勢にも頭が下がるが、これを見事、映像として記録に残したスタジオジブリ、そして高畑氏にも頭が下がる。素晴らしい作品で、多くの人に見てもらえるといいかと思う。


柳川堀割物語 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
  • 発売日: 2003/12/05
  • メディア: DVD



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『死刑台のエレベーター』 [映画批評]

1958年に公開されたフランス映画。ジャンヌ・モローが主演で、マイルス・デービスのトランペットが映画に哀愁を漂わせることに成功しているが、ストーリーは完全犯罪が、ちょっとしたミスと不運で雪だるま式に悲惨な方向へと転がっていくドタバタ悲劇である。ジャンヌ・モロー演じる大会社の社長夫人が、旦那の会社で働く不倫相手の若いハンサム男に、年老いた旦那を殺させる。そこまではよかったが、ちょっとした隙に、この男の車はチンピラに盗まれ、このチンピラが衝動的に観光客を殺してしまったことで濡れ衣を着させられる。この男は男で、犯行に使ったロープを取り忘れたのでそれを回収しようとして乗ったエレベーターが止まってしまったので、その濡れ衣を晴らすことができない。という、もう見ててイライラするような不合理の連続で、本当、人間アホだよな、と思わずにはいられない。しかし、まあ、こういうアホが多い世の中で、どのように生き延びるのか、ということを考えるきっかけは提供してくれる。まあ、この社長夫人の愛人の男性の場合は、社長夫人とそのような関係にならなければいいのだが、ううむ、これはちょっと拒むことは難しいかもしれない。あとは、社長夫人の旦那殺しの依頼をしっかりと断れることかな。どちらにしろ、人はアホばかりだということをしっかりと映画で表現できる国で、原発をあれだけ稼働させているのは驚くべきことだ。この映画を観たら、原発で何か小さい問題が起きても、それが大爆発にまで至るように悪いことが重なりそうだ、ということには気づきそうなものだが。


死刑台のエレベーター HDリマスター版 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 株式会社アネック
  • 発売日: 2017/06/21
  • メディア: DVD



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アベンジャーの『エンド・ゲーム』を観ようとして途中で挫折する [映画批評]

アベンジャー・エンド・ゲームが人気らしい。いや、人気どころか興行収入は世界歴代一位らしい。ということで、ちょっと教養として観ておいた方がいいかな、と思って飛行機の機内で観ようとしたのだが、30分ぐらいで挫折した。なぜなら、あまりにもつまらないからだ。最後まで観ていないので、映画の内容をとやかく批評することはできないが、タイムマシンの話とか、表層的な人間関係の描き方とか、創造性がまったくうかがえないアライグマのキャラクターとか(もっとカネゴンとかバルタン星人とかの円谷プロのような魅力的な宇宙人キャラがつくれないのか)、何しろシナリオに惹きつけられないのだ。俳優陣も全然、魅力がなく、強いていえばスカーレット・ヨハンソンがちょっといい味出しているかな、といったぐらいである。もちろん、これは私が初老に近づいた中年男性であるからだろうが、それにしても、こんな映画が売れる現代はなんてつまらない時代なのだろう、と思わずにはいられない。
 とはいえ、結構、この映画の評判は悪くないのだ。私が敬愛している、私とそれほど年が変わらないアメリカ人コメディアンのスティーブン・コーベアもこの映画を評価していたようだし、私の元同僚もこの映画を評価していた。ううむ、何なんでしょう、この違い。自分と時代のトレンドとにギャップが生じているということでしょうか。
 とはいえ、結構、この映画の評判は悪くないのだ。私が敬愛している、私とそれほど年が変わらないアメリカ人コメディアンのスティーブン・コーベアもこの映画を評価していたようだし、私の元同僚もこの映画を評価していた。ううむ、何なんでしょう、この違い。自分と時代のトレンドとにギャップが生じているということでしょうか。

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『フィラデルフィア』 [映画批評]

トム・ハンクスとデンゼル・ワシントンという二大スターによる法廷ドラマ。1993年の作品であり、トム・ハンクス演じるホモセクシャルの主人公が、エイズに患い、それによって弁護士事務所をくびにさせられたことが、差別にあたると法廷で事務所と戦うというストーリーである。実話にもとづくストーリーであるそうだ。エイズに蝕まれていくトム・ハンクスの演技は鬼気迫るものがあり、アカデミー賞で主演男優賞を受賞したのも納得である。映画の冒頭にブルース・スプリングスティーンの曲が流れるが、なかなかの佳曲である。


フィラデルフィア (1枚組) [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • メディア: DVD



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映画『ロケット・マン』を観て、改めてエルトン・ジョンのことを考える [映画批評]

エルトン・ジョンの半生を描いた映画『ロケット・マン』を観る。私は、1972年から1976年までロスアンジェルスで過ごした。彼のベスト・アルバムともいえる『イエロー・ブリック・ロード』が発表されたのが1973年。私が通っていた小学校では、同級生が『ベニー・エンド・ザ・ジェッツ』を口ずさんでいたりしたものだ。エルトン・ジョンはあの頃、まさにアメリカを席捲していた。それは、まさに社会現象であった。
 ということで、否が応でもエルトン・ジョンに関心を向かされたが、そのレコードを購入したりすることはなかった。それほど当時はロックに興味がなかったのかもしれない。むしろ、社会現象として興味を持っていたと思う。
 さて、しかし、そのエルトン・ジョンも1976年の2枚組『ブルー・ムーブ』あたりから勢いを失ったような気がする。その次のアルバムの『A Single Man』を発表したのは、私も日本に帰国しており、ロックに興味を持つようになっていたのだが、なんか、こうフックが失われたような印象を受け、その後、『Victim of Love』というディスコ系のアルバムなどを出していたりして、そもそも最初からそれほどなかった関心を失った。
 そしたら、1983年に『I am Still Standing』や『I Guess That's Why They Call It the Blues』といった佳曲が入った『Too Low for Zero』で見事な復活を遂げる。それが、バーニー・トーピンという作詞家とまたタッグを完全復活させたことが要因であったことは私の興味を随分と惹いた。というのも、バーニー・トーピンという作詞家と袂を分かったのが『A Single Man』からで、それからエルトン・ジョンはずっと不調だったからだ。まるで、バーニー・トーピンが「あげまん」であったかのようで、メロディー・メーカーとしては天才でも、詩がしっかりとしてないと優れた曲はできないのか、と私に考えさせる例であったからだ。
 話を映画に戻すと、この映画は、まさにエルトン・ジョンの幼少時からバーニー・トーピンとの出会い、アメリカでの成功、さらにバーニー・トーピンとの別れ、その後の失望と失墜、そして、復活までを描いている。映画の最後のシーンは、『I am Still Standing』のプロモーション・ビデオである。
 さて、この映画を観て、さらにそれまで知らなかったエルトン・ジョンのことを幾つか知った。まず、母国イギリスではアメリカのように売れなかったことである。シングルでチャートの1位になったのは1990年が最初で、その曲はSacrificeであった。それまでにアメリカでは5曲が1位になっていることを考えると随分と対照的であるし、この1990年というのは、映画で描かれたエルトン・ジョンがまさにアメリカの音楽シーンを支配していた時代よりずっと後である。アルバム・レベルでは結構、イギリスでも売れていたが、それでもアメリカでは1972年に発表された「Honky Chateau」から1975年に発表された「Rock of the Westies」までの6枚のアルバムが連続して1位であったのに対して、イギリスでは1973年の「Don't Shoot Me I'm Only the Piano Player」から1974年の「Caribou」までの3枚だけだったのは興味深い。
 あと、映画においては、それこそエルトン・ジョンのきら星のごときヒット曲が多く流されるのだが、私が個人的に相当好きな「Island Girl」や「Philadelphia Freedom」、「Daniel」が選ばれなかったのも興味深かった。まあ、佳曲が多いのは致し方ないし、「Island Girl」は映画の内容とマッチさせるのはなかなか難しいだろう。
 内容に関しては、実際は、エルトンの実母や実父はそれほど悪人ではないと擁護する発言が家族から結構、出ているそうだ。母親に関しては、エルトン・ジョンもそのように言っているらしい。まあ、ということで、結構、脚色もあるかなと思うが、凄まじい音楽的才能の持ち主のドラマチックの人生はなかなか観るものを惹きつける。天才というものについて、なかなか考えさせる映画である。

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『ひいくんのあるく町』 [映画批評]

京都の素晴らしい映画館「出町座」で『ひいくんのあるく町』という映画を観た。若干23歳の青柳拓氏の作品である。これは、監督の故郷である山形県市川大門町に住む、知的障害のあるおじさんの暮らしを追ったもので、それによって地方のコミュニティのヒューマニティを感じる優れたドキュメンタリーとなっている。市川大門町は、身延線では比較的重要な駅で、特急列車「ふじかわ」も停車する。しかし、この市川大門町は2005年に市町村合併されており、この貴重な地名は風化されつつある。
 風化されているのは、コミュニティもそうで、これは合併した後の市川三郷町の人口動向であるが1960年の24000人程度から一貫して人口は減少し続けており、現在は14812人である。このように人口減少している地域であるが、しかし、そこで日々、暮らしている人達は、諦観しつつも前向きであり、立ち止まっていても肯定的である。その静閑かさが、観るものの心を打つのと同時に、日本の地方のコミュニティの持つ経済とは無関係な、価値のようなものを感じさせてくれる。そして、その町の価値は、ひいくんのそれとシンクロしている。それが、この映画を感動的なものにしている。

http://hikun.mizukuchiya.net

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