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『郊外の衰退と再生』 [書評]

日本の郊外には多くの放棄住宅地がある、という「不都合な真実」に注目をした著者の8年間の研究をまとめたもの。著者は「いつまで経っても空き地が多いままの住宅地がある。住宅開発してから10年、20年が経過しても、空き地は減る様子がないし。少しは家が建てられ、人が住み始めている様子はあるが、とにかく空き地が多い住宅地」を「未成住宅地」と名付けた。この「未成住宅地」の実態を現地踏査と住民のアンケート調査など、まさに現場に足を運ぶ作業の積み重ねで明らかにした。その調査結果は、そのオリジナリティと着眼点の新しさから、非常に価値のあるものと思われる。日本が抱える郊外の縮退を理解するうえでは多くの知見が含まれている。ただし、おそらく出版社からの依頼かもしれないが、その対策も提示されているが、それに関してはまだ弱いところがある印象を受ける。というか、この問題の対策はそう簡単には出ないであろう。これは、世界中の多くの縮退地域が頭を抱えている政策課題であるからだ。本書の価値は、時間をかけて丹念に郊外の縮退状況を明らかにしていった調査結果にある。大変、貴重な情報である。


郊外の衰退と再生―シュリンキング・シティを展望する

郊外の衰退と再生―シュリンキング・シティを展望する

  • 作者: 吉田 友彦
  • 出版社/メーカー: 晃洋書房
  • 発売日: 2010/12
  • メディア: 単行本



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