集合住宅の時間 [書評]
東京大学の建築学科の大月教授が10年ほど前に書かれたエッセイをまとめたもの。月刊誌『住宅建築』の二年連載を改訂を加えて単行本にまとめたものだが、それは人々の生活の記憶のメディアである国内の魅力的な古き良き集合住宅を紹介したものである。全部で24章、24事例(最後の事例だけおばさんが事例となっている)から構成される。日本の「消し去りの文化」によって、貴重で魅力溢れる集合住宅がどんどんと消えていくことで社会が記憶喪失になっている危機意識をゆるやかに伝える。その緩やかさが逆に、その喪失の意味の深刻さを読者に気づかせる。
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