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『ブラジル学入門』 [書評]

 ブラジルという多元的でよく分からない国を分析するうえでは、政治、経済といった正攻法のアプローチより、むしろ「ブラジル学」という総合的なモノサシではかる方がよい、という考えから、ブラジルで40年近く暮らした著者がブラジルという国を構成している宗教、言語、風俗、習慣、教育、価値観など諸民族や人種の文化をテーマ別に取り上げている。
 筆者は1936年生まれで1954年に渡伯している。新聞記者をしていたこともあり、文章は非常にうまく、読みやすい。そして、たいへんな博識である。ブラジル関連の著書はいくつか読んだが、結構、眉唾ものが多い印象を持っている。本書はそれらとは違い、ブラジルに根を下ろした著者が、しっかりと文献等を確認しつつ書いたものであり、エッセイ風ではあるが、内容は説得力がある。私自身、ブラジルには二桁の回数、訪れているが、ブラジルを知るうえで、本書ほど手っ取り早く理解させてくれたものはなかった。摩訶不思議なブラジル社会を知るうえで、たいへん参考になる本であると思う。

ブラジル学入門

ブラジル学入門

  • 作者: 中隅哲郎
  • 出版社/メーカー: 無明舎出版
  • 発売日: 1997/12
  • メディア: 単行本



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