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『告白』 [映画批評]

殺人を何とも思わない中学生。その中学生に愛娘を殺された中学教師の凄まじい復讐劇。なかなか緊迫したストーリー展開は、画面にどんどんと引き込まれていく。相当、ストーリーは面白いし、演出も見事だ。松たか子は、そのクールぶりは結構いいが、憎しみを演じるには、ちょっと美貌に欠ける。松たか子は美人だと思っていたので、それはちょっと意外であった。主演女優が、怖いほどの美人であったら、さらにストーリーは迫力を持つものになったかもしれない。

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  • 出版社/メーカー: 東宝
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「空中庭園」 [映画批評]

角田光子の同名小説の映画化。映画単体としてはそれほど悪くないが、原作の小説の素晴らしさの1割も表現できてない。小説は、6人の視点から見える京橋家をそれぞれ語り、それによって、その家の異常さが浮き彫りになっているのだが、映画ではただ観客としての鳥瞰的な視点があるだけだ。これだと、原作の小説が持つ、謎解きのような読者に緊張を強いるようなスリルがまったくない。また、そういう展開を省いているためかもしれないが、シナリオが表面的に分かりやすいものにしているので、小説の持つ奥行きが平面的なものになってしまっている。

例えば、絵里子の人生に大きな影を落とすことになる中学の担任との母親との会話。映画では「あんな子は産まなきゃよかった」というセリフがあるが、小説にはなかった。小説ではこの事件に関しても、絵里子と母親ではまったく違う捉え方をしていて、登場人物によって現実を異なった視点で捉えている、ということが、原作の素晴らしい魅力であるにも関わらず、映画ではまったくこの点が表現できていない。

原作を通底するのは家族の徹底的な「ディスコミュニケーション」であり、絵里子が、自分だけが嘘をついていたと告白しようとした旦那にキレるように、ディスコミュケーションによって家族を維持していくことがポイントであると思われるのだが、この映画はそこらへんをしっかりと読み込めていない印象を覚える。

ただ、主人公演じる小泉今日子はとてもよく、好感が持てる。これが数少ない救いである。この映画がいいと思う人は、是非とも小説を読んでもらいたい。小説を読んだ人は、私が言いたいことが理解してもらえると思う。

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  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
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『永遠のモータウン』 [映画批評]

モータウンのスタジオ・ミュージシャンとして、「ヒートウェーブ」、「ホワッツ・ゴーイング・オン」、「イン・ザ・ネーム・オブ・ラブ」、「エイント・マウンテン・ハイ・イナフ」などの数多くのヒット曲を演奏したファンク・ブラザースのドキュメンタリー映画。現在でも生存しているメンバーのライブ演奏と、取材から構成される。ライブ演奏は、ベン・ハーパーやチャカ・カーンなどのサポート・メンバーも参加しており、相当、感動する。構成もしっかりしており、この忘れられたミュージシャン達の偉業をしっかりと伝えることに成功しているだけでなく、それを観るものに深い感動を与えるような創りになっている。素晴らしい音楽ドキュメンタリーである。


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  • 出版社/メーカー: 東北新社
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『軽蔑』 [映画批評]

ゴダールの1963年の作品。ブリジット・バルドーの痛いほどの美しさが画面に溢れている。その美しさは、もはや愛でるような対象ではなく、攻撃的でさえある印象を受ける。日本でも渥美マリが「日本版ブリジット・バルドー」と言われたりしたが、まったく次元が違うことがこの映像からだと分かる。衝撃的だ。さて、本作品はこのバルドーの曲線美と、その演技だけでも十分価値があると思われるのだが、内容も面白い。何しろ、出演者の会話がスリリングである。会話から次の展開が読めない。しかも、それが違和感なく、理解できるような展開である。なるほど、そう来るのか。しかし、映画を見ているものは、バルドーの夫のようにバルドー演じる妻が次に何を言うのかが分からない。そして、どんどんバルドーの術中にはまるというか、自己崩壊をしていく夫と同じように頭は迷走状態になる。まったく目が離せなくなっていく。あと、エンディングは相当ショッキングである。映画の楽しさを存分に理解させてくれる秀作だ。

一点、気になったのは、字幕であり、ドイツ語のところなどは一切、訳されていない。日本人が見るのであるから、フランス語のところだけでなく、ドイツ語などの場面もしっかりと訳してもらいたかった。特に、ドイツ語をしゃべる部分は、秘書がいかに語学に長けて優秀であるかを示す場面でもあったので、そこで字幕がないと、多くの視聴者にとっては不親切になると思われる。


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  • 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
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『ラジオ・デイス』 [映画批評]

ウディ・アレンのラジオに対する愛情が存分に表現された作品。アレンは声だけで出演はしていない。しかし、全般的にコメディ・タッチ。第二次世界大戦の時期の話であり、日本軍との戦況とかもラジオ放送で流れている。その時代のニューヨークの様相を、ラジオにまつわる幾つかのエピソードを通じて描いている。その放送に一喜一憂しているアメリカ人をみると、当たり前ではあるが、アメリカのような強国でも戦争中は、一般大衆はその行く末に心配になるのだな、と改めて気づいたりする。興味深いのは、しかし、それでもアメリカは1944年という戦時においても、基本的に人々はプロ野球のペナントに関心を持ち、恋愛にうつつを抜かしたり、ラジオ・ドラマにはまったり、小学生は豊満な女子教員に夢中になったりするなどして、日常生活を楽しんでいるということである。「欲しがりません、勝つまでは」の日本とは大違いである。こういう映画をみると、本当、アメリカの覇権のために戦争に行くような憲法改正は馬鹿馬鹿しいと思われる。閑話休題。本作品はアメリカ人でなくてもノスタルジックな気分につつまれる、アレン版「三丁目の夕日」的作品であって、観ると心がほのぼのする。


ラジオ・デイズ [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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『イエロー・サブマリン』(映画) [映画批評]

映画『イエロー・サブマリン』をDVDで観る。これは、ポール・マッカートニーのコンサートで「オール・トゥゲザー・ナウ」を歌ったのを聴いて、ビートルズで知らない曲があるということを恥じたからである。私は、これまでビートルズ・ファンであるといいながら、『イエロー・サブマリン』というアルバムを過小評価しており、また、その映画も大したことがないだろうと観ることもしなかった。そもそも、ビートルズは音楽が偉大なのであって、映画やましてやアニメに価値があるなどとは思ってもいなかったからである。

さて、しかし、ビートルズ・ファンとしてだけでなく、一般教養としてもこれを観ていないことは問題だ、ということでDVDを購入して観たのである。そして、結構、楽しめた。感動するような作品ではなかったし、アニメ作品としては稚拙かもしれないが、カラフルでサイケデリックなイラストレーション、そして何よりビートルズのメンバーのお茶目な会話が楽しい(声優が演じているが)。特に、ビートルズの歌詞がいろいろと散りばめられているところ(例えば、穴だらけの場所に行き、「どのくらい穴があるのだろうか」との問いかけに「アルバート・ホールを埋められるぐらいかな」とか)は、ちょっとファン的には楽しいものがあるだろう。もちろん、バックのビートルズの曲はこのイエロー・サブマリンの映画のためのオリジナル以外にも、ノーホエア・マン、サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド、エリナ・リグビーなどが流れ、これらも観る者をわくわくさせてくれる。ということで、これまで観なかったものが言うのもなんだが、ビートルズ・ファン必見の映画であると思われる。


イエロー・サブマリン [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
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  • 出版社/メーカー: ユニバーサルミュージック
  • 発売日: 2012/06/05
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モンティ・パイソン『ライフ・オブ・ブライアン』 [映画批評]

人々の宗教心と宗教の権威づけをパロディーとした「神をも恐れぬ」モンティ・パイソンの1979年の作品。イエス・キリストと同時代に過ごしたユダヤ人ブライアンの物語。パロディーと称する毒ガスに充満している。その対象は、前述した宗教にはまる一般大衆が中心ではあるが、権力側のローマ人や、ゲリラ側にまでおよび、その「こけおろし」パワーは痛快爽快である。また、エンディングで、主人公がとりつく島もない中、「Always Look on the Bright Side of Life」を他の磔刑になっている受刑者と歌うシーンは、ちょっと哲学的でさえあり、シニカルな笑いに充満している中、なんかほろ苦い感傷をさえ覚える。パロディーの面白さ、そして、その偉大ささえ感じさせられる傑作であると思う。


モンティ・パイソン/ライフ・オブ・ブライアン(1枚組) [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
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『ハンナとその姉妹』 [映画批評]

個人的には、「アニー・ホール」と並ぶ、ウディ・アレン映画の最高峰の一つであると思われる。ミア・ファロー演じる三姉妹と、それぞれのカップルのミッドライフ・クライシスをおかしく、そして切なく描いている。改めて思うのは、ウディ・アレンの映画の台詞が洒脱であること。これは、字幕ではなかなか伝わらないアレン英語の醍醐味だと思うが、本作は特にその点でも秀でていると思う。旦那が妹と浮気という笑うに笑えないシチュエーションの隣で、アレン演じる死恐怖症の男がどたばた劇を展開することで、シリアスなテーマを扱いつつも、観客はなんか思わず笑って救われる。こういうアンビバレントな要素が、ウディ・アレンの映画に共通する魅力(「インテリア」のようにひたすら暗いものもあるが)だが、まさにそういう点では本作は真骨頂だと思われる。


ハンナとその姉妹 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: DVD



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『しとやかな獣』 [映画批評]

1962年に公開された若尾文子主演の作品。団地の部屋を舞台に、一家総出で詐欺をする家族と、その家族の被害者になった人達との関わりを描いた物語だが、この家族の長男を逆手にとった若尾文子演じる後家の主人公の存在感が凄い。彼女の秀逸なる台詞回しには、騙された方が悪いと妙に納得させられる。高度経済成長期に差し掛かった日本人の、金がすべて的な側面を揶揄した作品としても捉えられるであろう。能楽を応用した演出も劇的で面白い。一点、強いていえば、若尾文子の女性の魅力がうまく演出されていなかった印象を受ける。どうして、この女性に多くの男性がはまってしまったのか。その演出が弱かったと思う。


しとやかな獣 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2012/11/15
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『ミッドナイト・イン・パリ』 [映画批評]

冒頭のスライド・ショーのようなパリのスナップショットが美しい。パリってこんなに美しい街だったのか、と改めて感心する。本作品は20年前であれば、主人公はウディ・アレンが演じていたであろう。主人公のオーウェン・ウィルソンは、まるでアレンが憑依したかのようにアレンが演技するかのような演技をしている。そして、その演技がこの映画に見事にマッチしている。そして、アレンをも上回る演技をしているとさえ思われる。アレンのあくの強さがない分、むしろ主人公に感情移入しやすいのかもしれない。

ストーリーは、アレンの「アリス」や「カイロの紫のバラ」にも通じる大人のおとぎ話のジャンル。しかし、これら前作を上回る質の高さで、それはパリという都市の力に因るところが大きいかもしれない。そして、アレンは本作品でパリの魅力を見事に表現している。主人公が作品中で、「時々思うけど、どんな小説も絵画も交響曲もパリにはかなわないよ。だってこの街はどの路地も大通りも芸術品だから」。これが、この映画のそもそものコンセプトなのかもしれないが、この映画は、コール・ポーターを初めとした見事なジャズをバックに、パリの素晴らしさを描いている。パリ賛歌としても出色だが、映画単体としてもとても面白い。ウディ・アレンの優れた面が全面的に開花した、21世紀に入ってからの彼の最高傑作の一つであると思う。


ミッドナイト・イン・パリ [DVD]

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『ファイトクラブ』 [映画批評]

エドワード・ノートン、ブラッド・ピット主演の1999年の作品。公開された当時は、映画のタイトル、そしてトレイラーなどから、ただの殴り合いもののバイオレンス映画なのではないか、と思って見なかったのだが、改めてDVDで見ると、なかなか現代社会の問題を抉った考えさせる映画であった。特に、消費者としてしか社会におけるアイデンティティを確保できないといったくだりは、多くの人が共感を持つのではないだろうか。後半になると、どんどんと拡散するストーリーのどこに落とし所を持って行けばいいのか、迷走している印象を受けたが、総じて良質な映画であると思われる。エドワード・ノートンのいかにも優男風なのに、ちょっと狂気を宿しているようなキャラがいい。見て損はしない。


ファイト・クラブ [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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『カイロの紫のバラ』 [映画批評]

舞台は大恐慌時のニュージャージー。ミア・ファロー演じる優柔不断な主人公は、無為徒食で自分勝手な旦那と粗衣粗食の日々を過ごしている。映画だけが唯一の慰み。そんな主人公の人生が急転直下、映画のスクリーンから憧れの役者が恋の告白という奇想天外なストーリー展開。痛快無比なヒーローの行動、夢見心地の主人公、周章狼狽する映画会社、そして本物の役者も現れ、彼にも恋の告白をされ右往左往する主人公。波瀾万丈なストーリーはどんな結末を迎えるのか。

最後まではらはらしながら面白く観ることができました。ちょっと切ない気持ちにもさせられますが、終始一貫、映画の世界に引き込まれ、あっという間に見終わってしまいました。アレン作品のミア・ファローには個人的にはあまり惹かれないのですが、本作品と『アリス』はとても魅力的だと思います。見て損をしたと思う人はあまりいないと思われる良作です。


カイロの紫のバラ [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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『ウディ・アレンの重罪と軽罪』 [映画批評]

ウディ・アレン脚本・監督の1989年の作品。映画は二つのほとんど無関係なストーリーが交互に展開しながら進んでいく。一つは、不倫をした裕福で家庭にも恵まれたマーティン・ランドー演じる眼科医が、相手から家族にばらすと脅かされ、最終的には殺人をするところまで追い込まれていく話で、まったくもってシリアスな話である。もう一つは、アレンが主演で、仕事にも家庭にもうまく行かず、仕事で一緒になったミア・ファロー演じる女性に恋愛する映画監督の話で、どちらかというとコメディ・タッチである。これら、シリアスとコメディといった全く色合いの違う話が交互に出てくるので、殺人という罪にさいなまされている主人公の重苦しさから、アレンが出てくると観るものは開放されるような気分になる。そして、映画の最終場面でこの二つの話はようやく交錯するのである。主演のマーティン・ランドーの演技は鬼気迫るものがある。彼の演技が本作品に説得力を持たせていることは間違いない。


ウディ・アレンの重罪と軽罪 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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『女の都』 [映画批評]

イタリアの大家フェリーニ監督の晩年の作品。フェリーニの映画の常連でもあるマルチェロ・マストロヤンニが主人公を演じている。女性の本質ではなく、表面的なところだけを愛する偽善的な女好きの主人公は、フェミニスト・グループ、パンク少女、妻などの女性達に翻弄されまくり、時には罵倒され、責め立てられる。ストーリー的には大したことはないのだが、ストーリーはちょっとサスペンス調で、目が離せない。2時間20分と上映時間は長いが、全然長いと感じさせない緊張感がこの映画にはある。あと、さすがフェリーニといえる映像美も十二分に堪能できる。この映像美を楽しむだけでも、この映画を観る価値はあるだろう。ちょっとした大人のファンタジー映画であり、男性はみるとちょっとやるせない気持ちにはなる。


女の都【HDマスター】 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: IVC,Ltd.(VC)(D)
  • 発売日: 2012/01/26
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家政婦のミタ [映画批評]

テレビを観ない私は、当然、テレビドラマも観ない。しかし、半沢直樹があまりにも面白かったので、半沢直樹の最終回が破るまで21世紀のテレビドラマの視聴率のトップを記録していた「家政婦のミタ」を一挙に観た。さて、この「家政婦のミタ」は、アメリカ映画でいえば「アメリカン・ビューティ」、「普通の人々」をも彷彿させる、郊外における家族崩壊ドラマの範疇に入るであろう。しかし、これらと一線を画すのは、家族が再び結びつけられるという点であることと、崩壊する家族を支えたのが、ロボットのように無表情な家政婦であるというところだ。この松嶋菜々子演じる家政婦が、おそろしく無表情でなかなかよい。これだけ、無機質で不気味な表情を演じて、相当の迫力をもたらせるのは、やはり松嶋菜々子が美人であるからだろう。そして、その美人ゆえに、このドラマのクライマックスは劇的なものになっているのだ。

また、このドラマのテーマは家族の崩壊、そして再生ということになるのだが、もう一つの隠れテーマともいうべきことは「自分で責任を持って決める」ということである。現代の日本では、多くの人が、自分で責任を持って決めることができない。また、自分の発言に責任を持てない。平気で「人を殺せ」などと言ったり、人に「死ね」といったり、人に「自分を殺せ」などという。そして、その言葉通りにミタが業務を執行しようとすると、その予想外の状況に狂乱状態になるのだ。要するに当事者意識が希薄なのだ。このような当事者意識がない人たちが、しっかりとした家族を維持していくことなど不可能だ。その自分で決断しろ、ということと、自分の発言に責任を持つ、ということで世の中の問題は、ある程度自分でも解決できる。そういうことを他人依存の人が多いこの現代社会に、このドラマは訴えているような気がする。特に、原発問題という将来への不安を拡大させる政策を進めようとしていても、とりあえず平気なんじゃない、といってそれを支援しようとしている人たちに、このメッセージを伝えたい。事故なんて起きない、起きても平気、などといっても実際、事故が起きたり、または放射性廃棄物の処分に困ったりした場合には、大いに慌てふためいて、自分が支持したことなんて忘れて他人のせいにするような人たちに対してだ。まあ、家族もしっかりと維持できない人たちが集まっても社会をしっかりと維持することなど不可能だ。そのような単純なことが、この世界では理解されていない。したがって、原発のような管理不能なものまでも金儲けのためだけにつくってしまうのだ。そういうことをも、この映画は理解させてくれる。

それにしても、こんないいテレビドラマが放映されているのに、それをみない生活をしていることをちょっと後悔してしまう。とはいえ、テレビを観るという習慣がないので、結局観ないのだが。


「家政婦のミタ」DVD-BOX

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  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2012/04/17
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映画『ヘルター・スケルター』 [映画批評]

岡崎京子の傑作を蜷川実花が映画化した作品。岡崎京子が描いた主人公の狂気を沢尻エリカは高い演技で表現をしている。ヌードをも惜しげなく披露しての集中力溢れる演技は、観る者をその異常な世界へと強烈に引き込ませる。また、カラフルで独特な世界を表現した映像美は、ピーター・グリーナウェイを彷彿させる。この映像美だけでも、この映画はそれなりの価値があると思う。また、内容に関しても原作に忠実であり、岡崎京子のファンもそれなりに納得できるストーリーである。

それにも関わらず、この映画は傑作と評するには及ばない。それは、脇役である主人公のマネージャーの羽田を演じる寺島しのぶがミスキャストであるからだ。寺島しのぶの演技は悪くない。しかし、その驚くべきおばさんぶりが(恋人を最初、息子かと思ってしまったくらいだ)、主人公であるりりこの性的ないたぶりを極めて興醒めなものとしてしまっている。せっかく、桃井かおりや原田美枝子といったベテランがいい味を出しているにも関わらず、寺島しのぶによって、この映画は結構、台無しになってしまっている。とても残念である。


ヘルタースケルター スペシャル・エディション(2枚組) [DVD]

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  • 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
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「舟を編む」 [映画批評]

辞書編集というあまり興味を惹かないテーマでもあるにも関わらず、心が揺さぶられるような映画であった。この映画を素晴らしいものとしているのは、松田龍平の演技と、演出の上手さであることは間違いないが、辞書編集という地道だが気が遠くなるような仕事を、しっかりとやりがいを持って達成させる、ということの真摯さ、凄さを地味ながら誠実に描いたことが、この映画に静かなる迫力をもたらしているのではないかと考えられる。コミュニケーション下手の真面目一徹な主人公を演じる松田龍平の演技は、素晴らしくいい。父親を彷彿させるが、と同時に、彼特有の個性をも発揮しつつある。ハリウッド映画では滅多に感じることがなくなった感銘を覚えた。


舟を編む 通常版 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 松竹
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『ヒバクシャ 〜世界の終わりに〜』 [映画批評]

2003年につくられた本作品は、劣化ウランによる放射能被爆に苦しむイランの子どもたち、ワシントン州のハンフォードのプルトニュム工場から漏れた放射能に苦しむ人々、そして広島・長崎の原爆被害者の日常を描き出すドキュメンタリーである。鎌仲ひとみ監督の名前を世に知らしめた作品でもある。福島原発事故によるこれからの被害を推察させる、まさに予言書のような作品となっている。本来的には、原発の危険を警鐘するべき作品であったかと思われるが、事故が現実のものとなった今、結果的にこれから福島を中心とした東日本の人々が直面することになる苦難を描いているとも捉えられる。そういった点では、残念至極ではあるが、東日本の人々がこれから生き延びるうえでは見るべき作品となっている。さらに、この映像を福島の原発事故の後、改めてみると、まさに人類は終焉を迎えつつあるのかなと思わせられる。


ヒバクシャ ~世界の終わりに~ [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
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地球に落ちてきた男 [映画批評]

デビッド・ボウイ主演の1976年のカルト映画。ストーリーは支離滅裂で、話の展開もまったく出鱈目である。まともな映画を期待した人は落胆するかと思われる。しかし、それでこの映画の価値を判断するのは早計であろう。というのも、主演のデビッド・ボウイの美貌、そしてコカイン中毒で常にストーン状態になっていた中での演技の異様さが、この映画を観る者を強烈に惹きつけて放さないからである。また、この映画のロケ地であるニューメキシコの景観もエキゾチックで、この映画にいい味を加えている。あと、ストーリーと関係のないセックス・シーンがやたら出てきて、デビッド・ボウイもそのようなシーンを演じている。ここらへんの潔さは、ちょっと驚く。


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  • 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
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「ウェインズ・ワールド2」 [映画批評]

オースティン・パワーズの大ヒットで知られるマイク・マイヤーの出世作である「ウェインズ・ワールド」の続編。前作のヒットを受け、1年後に公開されているが、前作と比べてあまりヒットしなく、日本では公開もされなかった。さて、内容であるが、一作目が強烈なインパクトを持つシーンが満載(有名なボヘミアン・ラプソディを車内で歌うシーンなど)に比べると、それほど印象に残るシーンはない。ストーリーはないに等しく、パロディとギャグを単純に楽しむような映画であるのと、ロック系やハリウッド映画などのサブカル的な知識がないとあまり、面白くないかもしれない。人の好みによって評価が分かれる映画ではないかと思われる。ただし、1作目が好みの人にとっては、結構、楽しめる作品であると思う。キム・ベージンガー、クリストファー・ヴァルケン、ドリュー・バリモア、チャールス・ヘストン、ジャイ・レノ、ヘザー・ロックレア、エアロスミスの面々(彼らは2曲、演奏も映画で披露している)などの豪華な超有名どころが出演しているのも嬉しい。あと、特典映像は出演者や監督の取材が中心だが、ウェインズ・ワールドのファンにとっては充実した内容であると思われる。


ウェインズ・ワールド2 スペシャル・エディション [DVD]

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  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • 発売日: 2008/08/22
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イゴールの約束 [映画批評]

ベルギーを代表する監督の1996年の作品。ベルギーの不法移民問題を背景に、支配的な父から自立していく少年のプロセスが描かれている。父の歪んだ愛情と強烈な束縛に雁字搦めになっていた少年が、ある事件をきっかけに父の支配から抜けだし、自ら判断して行動していく。その行動が、例え歪んでいるとはいえ愛してくれている父親を窮地に落ち込むことになってしまっても。主人公である少年イゴールが徐々に父親からの支配から抜け出し、自己を確立させていく過程の描写が見事である。観る者に緊張感を与え続け、展開していくストーリーは93分という上映時間より遙かに長く感じられる。映画の世界に引きずり込む強烈な力を有した作品であり、映画の素晴らしさを再確認させる傑作である。


イゴールの約束 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 角川書店
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『ありあまるご馳走』 [映画批評]

なかなか優れたオーストリア人監督の手によるドキュメンタリー映画。優れたドキュメンタリー映画の多くがそうであるように、本作品でも鑑賞者に深く、考えさせられる内容となっている。本作は、フランス、ドイツ、オーストリア、ルーマニア、ブラジルなどの取材を行うことで、実地から食のグローバル化の問題を指摘する。映像もなかなか印象深く、思わず画面に引き寄せられる。映画というメディアの特質をうまく活かしており、食のグローバル化の問題の深刻さを強く訴えることに成功している。


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  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
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『七年目の浮気』 [映画批評]

 マリリン・モンロー主演の『七年目の浮気』。マンハッタンの地下鉄が通る時に、通風口からの風でスカートがふわっと膨らむシーンで有名な映画である。これは、ほとんどモンローの白痴美を徹底的に追求したコメディで、それ以外には語るような内容はない。強いて他にいえば、男は馬鹿だよねえ、ということを改めて確認させるだけのことだ。ということで、モンローが好きな人には堪らない映画だろうが、それ以外には取り立てて価値がない。私は最後まで見るのがちょっと苦痛であった。とはいえ、モンローがセックス・シンボルとしてあれだけ多くの人を魅了するのは分かった気がする。あの魅力には、ほとんどの男性は抵抗できないでしょう。主人公は抵抗しましたが、それで彼は何を得たのか、というと必ずしも立派ともいえないかもしれない。映画が作成された当時としては立派であったかもしれないが、今ではどうなのだろう。ちょっと、主人公の行動は、人生を舐めてるんじゃないとも思えなくもないが、こういうエンディングでないとコメディにならないからいいか。


七年目の浮気 特別編 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
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『ブリキの太鼓』 [映画批評]

ドイツのノーベル文学賞作家ギュンター・グラスの処女作を映画化した作品。第二次世界大戦でまさに翻弄された作家の故郷、自由都市ダンツィヒを舞台としており、ドイツ人、ポーランド人、そしてカシューブ人との三角関係、さらには主人公の母親と従兄弟の愛人、父親との三角関係、さらには初恋の住み込みの女性、主人公、そして主人公の父親との三角関係、さらには成長を3歳で止めた主人公の奇行、戦争に突入することで高まっていく社会の狂気など、複雑な時代背景、人間関係がこの映画に何とも言えない奥行きをもたらしている。滑稽でインモラルな性の描写も多く、社会の偽善性をも含めて、これらを体験した主人公が大人となることを否定したくなった気持ちも分かるが、一方で主人公の調和を忌む自己中心的な行動は、主人公の周辺の人々を不幸に追いやっていく。主人公を肯定もせず、また否定もしない視点で物語りを編集していることで、なかなか見応えのある映像とはなっている。映像やストーリーのインパクトは強く、とても無視できない存在感を持つ映画であることは確かだ。ただ、個人的にはあまり好きな映画ではない。この物語の登場人物に通底しているのは、生きていくことの虚しさであるが、それを観察する視点が、それらを拒絶した自己中心的な主人公のものであることに、どうしても共鳴できないからである。これは、小説では続く、その後の話が映画ではカットされていることとも、そのような印象を持ってしまう理由かもしれない。


ブリキの太鼓 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: カルチュア・パブリッシャーズ
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セブン・イヤーズ・イン・チベット [映画批評]

 ブラット・ピット主演の「セブン・イヤーズ・イン・チベット」。チベットに訪れた後、観たのは幸いであったかもしれない。というのは、映画でのチベットはもちろん時代設定が第2次世界大戦中ということもあったからかもしれないが、とても美しく描かれているのに比して、現在のチベットというか、特にラサは中国化が進んでいるために、映像の美しさからはかけ離れてしまっているからだ。この映画を観て、そのような美しい景観が観られるかと期待してラサを訪れたら、随分と落胆したであろう。とはいえ、現在でもポタラ宮の存在感は特筆すべきものがあると思われる。この映画からも感じたことは、ポタラ宮に毛沢東のポスターは似合わない。というか、ポタラ宮に漢字は似合わないということだ。ラサを訪れた時にも感じたが、この映画を通じて、そのことを改めて確認する。それは、寿司にケチャップをつけたような違和感を覚えてしまうのである。
 さて、映画の方であるが、ブラット・ピットの演技が素晴らしい。協調性がないが、根はいい奴というキャラクターを演じる時こそ、ピットは特別な魅力を発すると思われる。永遠の少年、という大人キャラを演じるとピットの右に出るものは少ない。
 映画としても楽しめるが、中国によるチベット侵略の暴力の歴史を知るきっかけとしても社会的にも意義がある映画であると言えるであろう。この映画を観ると、ダライ・ラマに親近感を覚える。エンタテイメントとしてだけでなく、社会的にも文学的にも価値のある映画であると思われる。


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クリント・イーストウッドは映画が分かっている [映画批評]

飛行機で食事をする時は、仕事も出来ずに、本も読めないし、コンピュータでDVDも観られないので映画を観てしまう。とはいえ、ハリウッドの新作を観てもいまさらつまらないようなあ、とまったく期待しないで、クリント・イーストウッド主演の『人生の特等席(Trouble with the Curve)』を観る。そうしたら、なんとこの映画がよかった。クリント・イーストウッドが監督をした訳ではないが、なんか、こう人生の酸いも甘いも理解した透徹した哲学が感じられて、感動した。イーストウッドは『ミリオンダラー・ベイビー』とか『マディソン郡の橋』、『夕陽のガンマン』など、私的には大傑作に多く主演しているが、彼が出演を決断した時点で、その映画はもうある一定の基準をクリアしているのかなとも思ったりもする。当たり前すぎることかもしれないが、イーストウッドは映画が分かっているなあ、と改めて、最新作の出来映えのよさから感心する。


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『シェアハウス』 [映画批評]

吉行和子の名演が光るし、木野花、浅田美代子らのベテラン脇役陣も悪くない。新人の佐伯めぐみも、ちょっと演技のリアリティが不足しているかもしれないが好感は持てる。ただ、この映画はシナリオにリアリティが欠けている。ちょっと、話の内容を書いてしまい、ネタバレで恐縮ではあるが、癌という病気は死ぬ直前は痛みでのたうちまわる。すっと寝るように死ねない病気である。最後の盛り上がりにおいて、事実と異なる描写をすることで観ている方は白けしてまう。また、自殺を試みる描写もあまりにもリアリティがない。他にも、いろいろと書くことはできるが、これ以上は書くのを控える。要するに伝えたいことは、この映画の内容はリアリティがあまりにもないので、感動的なストーリーに持って行くことができるにも関わらず、人を感動させる手前で失墜してしまっていることである。もう少し、ディテールのリアリティを丁寧に描くことができれば、結構、いい映画になれたかと思うと残念だ。


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『ももへの手紙』 [映画批評]

宮崎アニメを彷彿させる丁寧なる作画。ストーリーも心温まるものであり、また妖怪とのやり取りという日本の伝統的な死生観をも反映させた哲学のようなものも感じられ、素晴らしい作品であると思われる。観ているうちに、主人公のももを応援したくなる気持ちにさせる演出といい、ストーリー展開も見事である。宮崎アニメにも通じる点ではあるが、少女という人生において感受性が鋭敏で傷つきやすく、しかし、その内に大きなエネルギーと生命力を宿す生き物を見事に描写していると思われる。こういう映画を観ると、日本人って結構、いいなと思わせられる。瀬戸内の美しい自然描写も見事であるし、私的には、「橋がつくられて逆に寂しくなる」といったコメントなどには大きく共感した。


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『スパイナル・タップ』 [映画批評]

架空のヘビメタ・バンドのドキュメンタリーという、モキュメンタリー、つまりうそドキュメンタリー作品である。これが、同じようなロックバンドのドキュメンタリー作品である『アンヴィル』との大きな違いである。しかし、このモキュメンタリー作品、やたらリアリティを感じさせ、そうそう、そういうのありそうだよね、と妙に納得して見入ってしまう。実際、公開時にはジョークと分からずに、実在のバンドが存在すると思った人も多かったらしい。また、フィクションとして分かっていて見たとしても、パロディが多く含まれており、そういう点でも楽しめる。例えば、前メンバーのドラマーの死因は、キース・ムーン(ザ・フー)やジョン・ボーナム(ツエッペリン)と同じであるし、ボーカルの彼女がやたら口出しをしてバンドを解体させるところは、オノ・ヨーコとビートルズを彷彿させる。また欧米で人気が凋落したバンドが日本で受けて、コンサートを日本でするというのは、『アンヴィル』のパロディかとも思ったが、つくられた時期は『アンヴィル』の方が遅いので、『アンヴィル』のエピソードが嘘から出た誠、みたいなものかもしれない。とはいえ、この作品は、このようなロックバンドが好きな人たちには受けるが、そのようなことにあまり関心がなければ、面白くないかもしれない。そういう点で、カルト的な作品ではあるかもしれない。ちなみに、スパイナル・タップの出演者は皆、楽器演奏ができ、実際、ロック・コンサートを行ったりもしている。しかも、ロイヤル・アルバート・ホールやウェンブリーとかで。ピンク・フロイドのデビッド・ギルモアも飛び入りでライブに参加してりもして、これこそ、まさに嘘から出た誠のようなものだ。下記のユーチューブで見られます。

http://www.youtube.com/watch?v=6gESFElAOpQ

http://www.youtube.com/watch?v=4QQzDx47L1I


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『憎しみ』 [映画批評]

この映画で表現されるパリは、私がまったく知らないパリだ。というか、パリの観光ガイドには一切、掲載されていないパリの影の部分であろう。ストーリーは硬質で、カメラ・ワーク、ストーリー展開も秀逸だ。三人の若者もそれぞれに際立つ個性があり、しかも俳優の演技も素晴らしい。鑑賞後、しばらく呆然とするようなメッセージ性を有している。フランス映画のクオリティの高さだけでなく、映画というメディアの凄さを実感させる作品である。こういう映画を観させられると、フランスは馬鹿に出来ないと思わせる。


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