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『ある結婚の風景』 [映画批評]

4時間以上もある作品。スウェーデンの映画監督イングマール・ベルイマンによる1973年の作品。6つの章に分けられた構成になっており、章ごとにエンドロールが入る。このエンドロールが、映画の緊張感をほどよく和らげる効果を有している。この緊張感とは、次がどのように展開するのか分からないサスペンス映画が観る者に与えるようなものである。ただの夫婦の話であるにも関わらず、そしてほとんどが二人の会話だけで話が進んでいくだけなのに、次にどうなるのか、ハラハラとさせられる。しかし、夫婦というもの、結婚生活というものは、詰まるところ傍から見るとそのようなものなのかもしれない。個人的には、旦那の子供への愛情の恐ろしい欠如、さらには妻への情のなさ、というか自分のエゴだけを最優先に捉える身勝手さに不快感しか覚えなかったが、そういう自分も傍からみるとそう思われるのかなとも考えたりもした。結婚という行為の不合理、矛盾などが見えつつも、離婚してしまうことの不合理なども考えさせられる、なかなか深遠な作品であると思われる。





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『ホット・スポット』 [映画批評]

デニス・ホッパー監督の1990年の映画。田舎町にふらっとやってきたハリーと社長夫人の娼婦的なドリー、そしてハリーと同じカー・ディーラーで事務をしている若くて美しいグロリアの三角関係と、田舎町でのブラックメイル、銀行強盗などの様々な人々の駆け引きと裏切りがスリリングに展開する。ドリーの悪女ぶりは、「氷の微笑」のシャロン・ストーンを上回る。エンタテイメント性が極めて高いハリウッド映画的なジャンルでは傑作であると思われる。


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『渋谷』 [映画批評]

藤原新一の原作ということで期待をして観たが、期待に添う内容の濃い映画であった。綾野剛はどちらかというと、エンターテインメント色の強い作品に出ている印象が強かったが、この映画における演技の巧さ、存在するだけでつくりだす空気感はカリスマ性に溢れていて、彼一人で、この映画のストーリーをつくりあげていたといっても過言ではない。内容的には、プリクラが流行った時代の作品かなと思ったが、最近の作品であったのは意外であった。このようなストーリーをつくりあげるだけの魅力を今の渋谷が発信できているとは思えないからである。いや、これは個人的な偏見だけかもしれない。渋谷から足が遠のいて結構、久しいからだ。


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タグ:渋谷 綾野剛
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『君の名は』 [映画批評]

遅ればせながら、今年の邦画シーンの話題をさらった『君の名は』を観た。男女の心と体が入れ替わるという設定は、よくあるラブコメかと思っていたのだが、内容は遙かに深く、観ていて飽きることはなかった。あと、アニメの背景描写が尋常ではなく美しい。観ているこちらがため息をつくほど風景などの描写が綺麗で、内容のよさに加えて、この作品の完成度を極めて高いものにしている。それは、実写映画でいうところの優れたカメラワークに通じる。さすが人気を博しただけあるクオリティの高さであった。

タグ:君の名は
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シン・ゴジラ [映画批評]

この夏、話題となっていたシン・ゴジラを観る。ゴジラの暴れっぷりもなかなかよかったが、やはり面白いのはゴジラの出現によって慌てて対応する人間模様である。ゴジラが暴れているのに意思決定が全然できない役人達の姿は、福島の原発事故に適切に対応できなかった東京電力や官邸、経産省などを彷彿させる。その中で、特別チームがつくられ、どうにか東京に国連軍が核爆弾を落とすというシナリオを阻止できたというのも、吉田所長を初めとした一部の人たちの獅子奮迅の奇跡的な活躍で、福島の事故の最悪の事態を回避できたこととも通じる。

また、ゴジラが放射能をばらまき捲っているのと、それに対してSNSがその情報を拡散しているというのも福島の事故を想起させる。そういう意味で、福島事故を体験した日本人が観るとなかなか考えさせられる点が多い映画であるが、まあ、何がやはり凄いかといえばゴジラの暴れっぷりで、エヴァンゲリオンの使徒のような絶対的な強さを備えていた。科学力で対処しようとした点や、美人の理系秀才が活躍することなどの類似点も多い。一点、興醒めだったのはパターソン女史が100%日本人的な風貌の女優である石原ひとみであったこと(まだ、スザンヌとかの方が説得力があった)と、アメリカ人なのに難しいところは日本語でしゃべり、簡単なところは英語でしゃべっていたことである。普通、逆でしょう。

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『マイカル・ムアー・イン・トランプランド』 [映画批評]

 『マイカル・ムアー・イン・トランプランド』は、マイカル・ムアーがトランプの支持率が極めて高いオハイオ州のウィリムトンに単身乗り込み、そこでワンマンショーをする模様を収めた映画である。ワンマンショーの観客は、マイカル・ムアーのファン、すなわちヒラリーの支持者が多かったが、それでも中にはトランプの支持者もいて、周りがマイカル・ムアーの冗談に笑っている中、仏頂面を貫き通しているのが映像に捉えられたりする。ただ、そのような厳しい一部の視線を受けつつ、マイカル・ムアーは噺家のような見事なおしゃべりで、極めて上手に、観客の関心を惹いていく。
 基本的にはトランプを支持することは極めてよく理解できる、と相手の立場を慮りつつ、しかも、自分はヒラリーを贔屓している訳ではないと証拠を示しつつ、それでもヒラリーが大統領の資質を十二分に有しており、またヒラリーが大統領になることが結果的にアメリカのためになる、ということを説明する。そして、このショーでマイカル・ムアーはトランプの悪口を一度も言わない。
 マイカル・ムアーがなぜ、これだけ人々に好かれるのか。その理由が分かるような素晴らしいショーの構成である。そして、私はこの映画を観て、ヒラリーの政治家としての素晴らしさを知らされた。このショーの観客の多くが終盤で涙を流していたが、私もヒラリーは一部のマスコミが伝えるのとは異なり、まさにアメリカの大統領にふさわしい人材であるということを確認した。
 明日は大統領選。

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ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ [映画批評]

キューバで忘れられていたミュージシャンをスライド・ギターの名手であるライ・クーダーが再び集めて、レコーディングをしたアルバムが大ヒットした。この映画は、その成功を踏まえて、再びライ・クーダーがキューバを訪れ、それらのミュージシャンに取材をする。ミュージシャンのパーソナリティを浮き彫りにさせつつ、ハバナのノスタルジー溢れる街並みの写真をカットで入れているのが素場らしい。彼らの音楽を生み出しているのが、個々の秀でた才能だけでなく、彼らを育んだ風土であることが分かるような編集が為されている。映像監督は、『パリ・テキサス』でライ・クーダーとコンビを組んだロビー・ミュラー。映画と音楽も見事にシナジー効果を出している。ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの面子が素場らしいのは勿論であるが、ライ・クーダーの音楽を愛する気持ちが観るものの心を揺さぶる。最後のマジソン・スクエア・ガーデンでのライブのクライマックスは感動的である。

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  • 発売日: 2012/11/29
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ザブリスキー・ポイント(砂丘) [映画批評]

去年の春にデス・ヴァレーにあるザブリスキー・ポイントを訪れたので、同名の映画『ザブリスキー・ポイント(砂丘)』を観た。『欲望』のイタリア人監督のミケランジェロ・アントニオーニが観た60年代後半のヒッピーカルチャーが全盛期のアメリカ西海岸が見事に映像に収められている。70年代のロスアンジェルスがとても牧歌的であることが印象的である。しかし、映画のストーリーは大したものはなく、あくまでも巨匠による映像美を楽しむといった姿勢で観るといいのではないかと思う。ザブリスキー・ポイントも美しいが、フィナーレのサグアロ・サボテンが林立するアリゾナの夕陽のランドスケープも息を呑むほど美しい。あと、個人的には、主人公の女優ダリア・ハルプリンがランドスケープ・アーキテクトの巨匠ローレンス・ハルプリンの娘であることは驚いた。アメリカ人はヘミングウェイもそうだが、その道の巨匠の娘が女優になるケースが多いような印象を受ける。


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スター・ウォーズを観て、宇宙人などのキャラのデザインを円谷プロに発注すべきだと思う [映画批評]

 スター・ウォーズの最新作「ウェイク・オブ・フォース」を観る。悪と正義とが交叉する、キリスト教的な絶対的な価値がないところが、スター・ウォーズの物語性のいいところである。スター・ウォーズの第一作で出てきたレイア姫やハンス・ソロ、スカイウォーカーなどが年を経て出てくるところは、私のように40年前にスター・ウォーズを観たものにとってはちょっと嬉しいが、レイア姫とか本当に普通のおばさんになっていて、お姫様のこうカリスマがほとんどなかった。というか、レイア姫の時点でまったくオーラがなくてミスキャストだと思っていたが、まあ、おばさんになっても王女的な権威がなくて、校長先生ぐらいのカリスマしかない。それに比べるとハンス・ソロのハリソン・フォードは毅然としていて格好よかった。
 さて、ストーリー的には実はそこそこ楽しめたのだが、何しろ宇宙人やロボットのデザインの悪さが相変わらず個人的には気になる。中学生の時に見た時にもC3POのだささには呆れたが、最新作でもまったくロボットも宇宙人もイケテいない。というか、魚とは虫類から発想し過ぎである。私を始めとした日本人はウルトラマンやウルトラセブン、仮面ライダーなどで素場らしく創造的で格好いい宇宙人や怪人などに見慣れているので、スター・ウォーズの宇宙人のダサさが本当に気になるのである。ペガサス星人やバルタン星人、ジャミラ、エレキングのような、こう衝撃的で脳裏に残るような宇宙人を是非ともデザインして欲しい。というか、デザインできないのであれば円谷プロとか日本人に外注すべきである。円谷プロが存在するかどうか分からないが、本当、スター・ウォーズを観るといつもここが一番気になる。こういうことを指摘する人を私はあまり知らないので、ここで記させてもらう。


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蒲田行進曲 [映画批評]

1980年代を代表する邦画の大傑作そもそもプロットが特別に素場らしいし、風間杜夫、平田満の演技力も秀逸だが、なんといっても松坂慶子の色気と妖艶さ、そしてコケティッシュという女性の両義性を見事に演じている点が凄まじい。ほろ苦さの中にも、心が温かくなるような人情喜劇。サザンオールスターズの曲もこの映画の雰囲気をいい感じに演出している。そして、何より最後のオチ。映画史上でも傑出したそのオチだけでも、観てよかったと思わせる。

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タグ:蒲田行進曲
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マッド・マックス:怒りのデス・ロード [映画批評]

マッドマックスの最新作を観る。荒涼とした風景を舞台に、水を占有しているボスが多くの人を奴隷のように従わせている近未来の物語である。「北斗の拳」のような内容である。この映画のストーリーは極めて単純だが、その未来像がとても面白いし、ファッショナブルである。特に戦いの時に、ヘビメタを演奏するためだけの車が出ているところや、若い戦士が銀のスプレーを口に吹きかけるところや、ボスの女奴隷達の美貌などが興味深い。ただ、初期のマッドマックスを演じていたメル・ギブソンの方が、本作のマッドマックスよりもずっと似合っていた。一方で女性ヒロインのシャーリーズ・セロンは凄い存在感である。彼女の演技は相当よく、マッドマックスが完全に食われていたように思われる。この映画は、何しろ映像美が素場らしい。それだけでも大いに楽しめる映画であろう。


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『ターミネーター ジェネシス』 [映画批評]

 ターミネーターの最新作。ターミネーターは時空を行ったり来たりできるので、新作ごとに新しいパラレル・ワールド的な展開ができるという点で、焼き直しが可能だ。そういう意味では、次回作がつくりやすい作品である。ただ、焼き直しをするたびに訳が分からなくなってしまうなと思うのは私だけではない筈だ。1作目と2作目は紛れもない傑作であった。ここで終わればよかった。2作目のラスト・シーンは相当、感動ものであった。しかし、3作でまた復活させると、もうあとはぐだぐだでストーリーに矜持もくそもない。突っ込みどころが満載だ。それでも、まあギャグ的なノリでこれまでは観ることができたが、今回は酷い。ネタバレになってしまうが、主人公である息子までが悪者になってしまうというのは話の骨格をぐらつかせすぎである。ここまでパラレル・ワールドにフレームワークがなくなってしまうと、もう機械が勝とうが人間が勝とうがどうでもいいかな、と思わせる。ターミネーターが最後のシーンがあるのだが、何かこじつけて次作で復活させるんだろうな、と思っていたら、この映画が終わる前にもう復活していた。もう、ここまでくるとターミネーターはストーリーではなくて、ターミネーターという映画のシナリオ・コンペの各作品を観させられている印象さえ受ける。問題なのは、最初の2作までしか傑作がないことである。

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「おみおくりの作法」(スティル・ライフ) [映画批評]

イタリア人の監督、ウベルト・バゾリーニによるイギリス映画。孤独死をした人の近親者を捜すのを仕事とするロンドンの公務員が主人公である。近親者や知り合いを探し出しても、葬儀には参加しないと断られることが多く、労多くして功少なしといった仕事を続けている。ただ、主人公はこれら孤独死をした人の葬儀をしっかりと行い、見送る人が彼一人だけでもそれをやり通していた。しかし、役所の業務効率化の名の下にいきなり解雇を通知される。そして、最後の孤独死をした人の近親者を捜す旅に出かけるのだが・・・。主人公の落ち着いた演技、そして映像や音楽の美しさ。92分という短い映画なのだが、映画の時間がそのまま、この主人公や孤独死をした人達の人生の積み重ねを物語るような、穏やかではあるが静謐、そして寂しく空虚ではあるが敬虔な気持ちを起こさせるようなものとなっている。映画の素晴らしさを再確認させてくれるような傑作であると思う。往年のイタリア映画のペーソスに溢れるが、それがイギリスを舞台にしているために、独特の奥深い味わいをこの作品にもたらしている。

Still Life (2013) [Italian Edition]

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  • 出版社/メーカー: BIM
  • 発売日: 2014/05/22
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ビッグ・アイズ [映画批評]

 ティム・バートン監督の作品。主人公はビッグ・アイと呼ばれる目が大きな子供を描く若い女性の画家。娘を連れて、旦那と別れてサンフランシスコに出てくる。口が巧みでチャーミングな自称画家と出会い、再婚。主人公の描く絵が人々の注目を集め、売れ始めると、旦那は自分が描いたと自称する。絵が世間に受けいられれば、受けいられるほど、そして、自分が描いていることを実の娘にまで秘密にすることを旦那から強要される中、主人公は疎外感と孤独、そして何より自分の作品が自分のものであると理解されない空虚感を強く覚えることになる。
 ティム・バートンの作品には、異形ともいえる強烈な個性を持ったキャラクターが登場するが、主人公と結婚するウォルター・キーンも、その虚言癖や特異な行動などからして、まさにバートン的なキャラである。そのキャラに振り回される主人公が、しかし、対峙することを決意していく過程はなかなかスリリングである。そして、納得のエンディング。私は映画監督として、ティム・バートンを相当、信頼しているが、本作品もその期待に見事に応えてくれた。

ビッグ・アイズ [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ギャガ
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ベイマックス [映画批評]

ディズニーのアニメーション。子供向けのアニメであろうとほとんど期待せずに観たのだが、極めてしっかりとした良質のストーリーにいい意味で予想を裏切られた。特にエンディングの盛り上がりは秀逸。また、実写では不可能な迫力ある描写はアニメならでは。制作者は、アニメの長所をよく理解していると思われる。子供向けだろうと馬鹿にしないで観るだけの価値は十二分にある。騙されたと思って観ることをお勧めする。製作者としてのディズニーのクオリティの高さを再確認させられた。


ベイマックス 北米版 / Big Hero 6 [DVD][Import]

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『鉄道員』 [映画批評]

1956年のイタリア映画。ピエトロ・ジェルミが監督、脚本、主役を演じた。ある事故をきっかけに、左遷された鉄道機関士が長男、長女と対立し、また自分の待遇への不満をまったく取り上げない労働組合が決行したストライキ破りをすることで仲間からも孤立し、家にも帰らなくなる。これ以上はストーリーが分かってしまうので書かないが、この鉄道機関士の末っ子の子役エドアルド・ネボラが、分裂した人間関係を修復するうえでいろいろと行動するのだが、その可愛さは相当のものだ。この映画を観るものの心を惹きつけるのは、このネボラの演技というか存在感に負うところが大きいと思う。あと、長女役のシルヴァ・コシナの美貌は凄い。クロアチア人の彼女は、この映画でブレークするが、それも当然であろうと納得する美しさである。


鉄道員 デジタル・リマスター版 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: エスピーオー
  • 発売日: 2009/11/05
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タグ:『鉄道員』
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『グッドモーニング・ベトナム』 [映画批評]

ロビン・ウィリアムス主演の映画。コメディアンとしてのウィリアムスの魅力が十二分に発揮されている。しかし、そのコメディアンの魅力が、ベトナム戦争という悲惨さと、まったく相容れない。コメディという基本的に性善説を前提としたコンテクストと、人を信じず殺戮し合う性悪説に基づく戦争とのコンテクスト、そしてその戦争を遂行させる非人間的な官僚的システムのコントラストが痛々しく、観るものの心を抉る。戦争の残酷さと馬鹿らしさ、非人間さを伝えつつ、ヒューマン・ドラマ的側面も有したロビン・ウィリアムスの最高傑作。映画の力のようなものさえ感じる。


グッドモーニング,ベトナム [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
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『フランク』 [映画批評]

 ミュージシャン希望のセンスがないSNS好きの青年ジョンは、ふとしたことから巨大な顔のかぶりものをした素晴らしい声と楽曲の才能を有しているフランク率いるバンドに加入する。フランクにはなぜか好かれるが、音楽センスのないジョンは他のメンバーからは嫌悪される。しかし、バンド活動を逐一、報告していたジョンのツイッターのフォロー数が増えることをきっかけに、バンドは大きなミュージック・イベントに参加することになる。天才ならではの繊細性を有するフランク。しかし、凡人であるジョンは、そういうデリカシーがない。デリカシーがないから、音楽センスもまったくないのだが。大衆音楽イベントの卑俗さに耐えられない他のメンバーはバンドを脱退。それでも、夢が実現できると思ったジョンは、無理矢理フランクを連れてステージに立つのだが、そこでフランクは自分の音楽を表現する場と、また他のメンバーという自分の音楽を具体化する仲間を失い、崩れ落ちる。
 フランクをはじめとして才能豊かなアーティストが、そのような才能を持たない一人のナルシストによってバンドを分裂させられ、また精神的に不安定な状況に追い込まれるというストーリーは胸が痛むが、こういうことはよくある。この場合は音楽だったが、他でもよくみられる光景だ。そして、ジョンのような才能のないナルシストには私は強い憤りも覚える。私の周りにもそういう人が多くいて、私はフランクよりフランクを支えていたキャロルのような対応をする。徹底的に排除しようとするところがある。なぜなら危険分子であるだけでなく、我々をも崩壊させる敵であるからなのだ。ただ、私のような対応を冷たい人間とか、才能だけで人を評価するなどと批判する人も多い。私の周りにもフランクのように、いろいろと才能のない人に機会を与えようと努力する人もいるし、そのような人の中には私が敬う人も少なくない。
 ただ、本映画はラスト・シーンは素晴らしい。ちょっと涙腺を刺激される。ラスト・シーンが結構、うまく苦々しい映画を良質なものにしている。


FRANK フランク [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 東宝
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タグ:フランク
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映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 [映画批評]

気鋭の社会学者の北田暁大の本作の批評が大変、興味深かったので購入してみました。ということで、先入観を持っての視聴だったのですが、内容的には大変面白い。私は年齢的にも1960年代生まれなので、この昭和のニオイに影響を強く受ける世代です。そして、おそらく当時は子供や若者でいて夢をいだけていたのに、現在は生活に追われている日々を過ごしている、しんちゃんの親の世代が、夢を持つことができた昭和を懐かしむことはよく分かります。しかし、それでも人は未来を生きるべきである。この映画に込められたメッセージは「トゥルーマン・ショー」でトゥルーマンが外の世界の扉を開けた時と同じような感動があります。与えられた世界ではなく、それが不安定でまた危険を孕んでいても、自ら未来を切り開いていく。そして、そのようなことを大人に示唆させたのが、5歳児であるという設定、そして良質なギャグマンガであるということが、説教臭さをなくして、逆に人々の心を捉えることに成功したのではないでしょうか。


映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
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『それでも恋するバルセロナ』 [映画批評]

ウディ・アレン監督の『それでも恋するバルセロナ』。本当のタイトルは『ヴィッキー、クリスティーナ、バルセロナ』。邦訳は相当、絶妙であると思う。アレンは、バルセロナをはじめとしたカタロニア地方の美しい景観を見事に映像に収めている。ランドスケープの美味さを映像に捉える点でいえば、『マンハッタン』、『ミッドナイト・イン・パリ』などでもうお墨付きであるが、その類い希なセンスは、バルセロナそしてカタロニア地方においても本映画で見事に発揮できている。やはり、アントニオ・ガウディの作品が多く背景に出てくる。その美しく魅力的な景観の中で、セクシーな女たらしの画家ファン・アントニオ、そして彼を取り巻くレベッカ・ホール、ペネロペ・クルース、スカーレット・ヨハンセン。ここらへんの三画、四角関係の複雑さにリリシズムと喜劇を注入させるのは、もうアレンの名人芸であり、この作品はとても面白い。というか、人生、本当いろいろと難しいよなと考えさせるのだが、それでも、鑑賞後、人生に肯定的な気分にさせるのは、アレン自身がそのような人生観を持っているからではないかと思わせる。あと、情熱的で紙一重の元妻を演じるペネロペ・クルースは、まさに適役で、彼女以外では考えられないほど迫真迫る演技だ。アカデミー賞助演女優賞を取るのも納得だ。傑作である。


それでも恋するバルセロナ [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 角川映画
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『ペイ・フォワード 可能の王国』 [映画批評]

ミミ・レダー監督による2000年のアメリカ映画。この映画はなかなか評価することが微妙である。主人公であるジョエル・オスメント、その先生であるケヴィン・スペイシー、そのアル中の母親であるヘレン・ハント。彼らの演技は素晴らしい。特にケヴィン・スペイシーは、心を揺さぶるような演技力である。そして、シナリオも悪くはない。ただし、最後のエンディングは後味が悪い。原作では、主人公は大統領とまで会う。映画は、そのようなクライマックスもなくエンディングを迎える。このまとめ方は、観るものに対しても、そして原作に対しても誠実ではないと思われる。俳優達が素晴らしい演技をしていることでかえって、監督のセンスの悪さを顕在化させてしまった印象を受ける。


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  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
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ヴィデオドローム [映画批評]

過激な映像のビデオを見ることで、その視聴者の神経と脳が支障を来していく、というシナリオの荒唐無稽さに加え、ストーリーは二転、三転していく。主人公は幻影を見るようになるのだが、我々が映像で見ているのはリアルなのか、主人公が見ている幻影なのかが不明であるため、話についていくのが困難だ。さて、それでは面白くないのか、というと全然そんなことはなく、この映画、なかなか目が離せない。そもそも短い映画なので退屈する時間もそれほどないというのもあるかもしれないが、結構、楽しい映画である。ストーリーに筋を持たせようとすると難しいかもしれないが、カルト映画として楽しむには十分のクオリティである。当時、人気絶頂であったブロンディのデボラ・ハリーが、主人公に一線を越えさせるミステリアスな女性を演じているのだが、その演技はなかなか惹かれるものがある。いい配役だ。


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  • 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
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『大病人』 [映画批評]

伊丹十三監督の作品。三国廉太郎、宮本信子、津川雅彦等が出演。三国廉太郎の演技は、鬼気迫るものがあり、主人公の世界観に引き込まれる。テーマはすべての人が必ず直面する「死に方」に関して。より詳しくいえば、死ぬことが分かった人が、いかに死ぬ日まで生きていくかに関してである。ガンの告知、延命治療、モルヒネの使用の有無など、この映画で提起している多くの問題は現在では随分と患者の立場で捉えるようになっているが、この映画の撮影時はそこはまだ大きな社会問題であった。この映画によって、少しは患者にとって好ましい状況になったのかもしれないなどと思ったりもする。伊丹十三の映画はどれも見応えがあるが、この映画は彼が必ず挿入するエロ場面がそれほど刺激的でなく、そういった点でも本筋から横道にそれずに話を追えたので個人的にはよかった。


大病人 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
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『ミツバチの羽音と地球の回転』 [映画批評]

『祝の島』の二番煎じかと、それほど期待しないで観ていたのだが、より住民にしっかりと密着してのドキュメンタリーは、観るモノに多くを訴えてくる。『祝の島』を観た人も、これは観るべきであろう。同じテーマではあるが、ドキュメンタリーとしての質の高さ、時宜にかなったテーマ(つくられたのは原発事故の前であるが)であることが、この映画を観るものを飽きさせない。

個人的に興味深いのは、中国電力上関原子力発電所寿運日事務所副所長の松蔭茂男さんが島民に対して次のように述べていることである。
「このまま第一次産業だけで島が良くなると本当にお考えですか。人口は年々減っていきます。お年寄りばかりの町になっていっていいのですか。」
私の最近の分析だと、人口縮小をあまりしない自治体は、一次産業比率が高い自治体である。むしろ、一次産業が唯一、自治体を持続させる経済活動である。例外としては、ニセコのような観光産業がうまく行っている自治体があるが、観光産業が失敗して占冠村のように著しく人口減が進んでいる地域もある。
(ここらへんに関しては、現在、投稿しているので、掲載されればまた紹介したいと思います)。

しかし、改めて原発はどうしょうもないな、というのがこの映画を観るとよく分かる。「絶対、海は壊れない」と主張した中国電力の人達は、福島原発事故後、どのように考えているのであろうか。松蔭さんは、相変わらず、原発は大丈夫であるという主張を島民に出来るのであろうか。あの渡部恒三ですら、宗旨替えをしたのだ。こういう人達が、今、何を考えているのかは興味深い。もし、それでも原発と考えているのであれば、本当に人の心が分からない人であろう。そうであれば、例え、エリート企業に勤めて、高給をもらっていても、人としては立派ではない。


ミツバチの羽音と地球の回転 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 2012/07/27
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HANABI [映画批評]

北野武の1998年の作品。美しい映像美と、武が演じる主人公の圧倒的な暴力性・残忍さとが交互に現れ、物語は進行していく。ゆっくりとした描写は生きることの寂しさのようなものを感じさせるが、その感傷的な気分は主人公が出てくるとぐっと緊張感を強いるものになる。さらに、ときたま武のギャグのような描写もあり、その時はどっと緊張が弛緩される。武の映画に特徴的なことかもしれないが、何が起きるか分からない、次は何?といったはらはら感と期待感を持ちつつ観させられるので、映像の中に引き込まれてしまう。元刑事の銀行強盗というある意味でピカレスクものとも捉えられるが、主人公が殺す対象がヤクザであるためか、主人公の妻への愛情の深さのためか、残酷な描写の後味の悪さを消し去っている。武は映画づくりがうまいな、という印象を強く受ける作品である。


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モンガに散る [映画批評]

台湾は台北の剥皮寮地区(モンガ)を舞台としたギャング映画。シナリオは結構、面白い。台湾版の「男組」的な世界観かなとも思ったりするが、日本のギャング映画、ヤクザ映画に比べるとおセンチである。そのおセンチさが、ちょっと鼻につく。そこは個人的にはマイナスだが、一方で、剥皮寮でロケをしたことによる空間の演出は素晴らしい。タイトルをモンガという場所の名前にするだけあって、その場所のユニークさが見事、映像にて表現されている。この点は個人的には大いにプラスである。ということでマイナスとプラスを相殺すると、そのストーリーはちょっと幼稚さが鼻につくが、台湾映画としては十二分に興味深いので観る価値はあるという落としどころの評価になる。


モンガに散る [DVD]

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  • 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
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誘惑のアフロディーテ [映画批評]

1995年のウディ・アレンの映画。1990年代のアレンの作品では最高傑作だと個人的には思う。養子があまりにも賢いので、彼の母親をアレンが捜そうとするところからストーリーは展開する。ようやく見つけた母親はなんとポルノ女優で娼婦であった。この女性は、しかし、アホ丸出しではあるのだが楽天的で気が優しい。この娼婦演じるミラ・ソルヴィーノの演技が非常に素晴らしい。アカデミー助演女優賞を取ったのも納得の演技だ。ソルヴィーノはハーバード大学で成績優秀者として表彰されるぐらいの才媛であることを考えると、なおさらその正反対のようなキャラを見事に演じきったその演技に感動する。ストーリーはツィステッド・フェイト、皮肉な運命の巡り合わせを描いているが、アレンの人生肯定論的な側面が前面に出ていて、どこか心温かくなる。脇を固まるヘレナ・ボーナム・カーター(ハリー・ポッターのベラトリックス・レストレンジ役)の演技もよい。





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ドライヴィング・ミス・デイジー [映画批評]

1989年の作品。ジェシカ・タンディ81歳時の主演作。共演は、モーガン・フリーマンとダン・アイクロイドという個性豊かな俳優。演技者揃いということもあり、映画は裕福な南部のユダヤ教徒の老婦人の25年間の日常を描いたものであるのだが、映像の世界に引きずり込まれていく。何気ない会話、何気ない事件を淡々と描いているだけなのだが、それらの日々の積み重ねが、人種差別が激しかったアメリカ南部を背景に、皮膚の色、ジェンダーを越えた友情を築き上げていくその過程を、美しい映像、美しい音楽によって見事に描いている。また25年間の月日を表現するための役者のメイクアップもなかなかである。人生賛歌とも捉えられる素晴らしい映画である。

DRIVING MISS DAISY

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  • 発売日: 2010/02/02
  • メディア: DVD



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ナージャの村 [映画批評]

 大いなる期待をもって観た映画。しかし、映画の3分後に私を大いに失望させるシーンが出てくる。立ち入り禁止のドゥヂチ村。この立ち入り禁止であることを示すために、踏切のようなゲートがドゥヂチ村に入る道路に設置されてあるシーンが出てくる。しかし、その踏切には英語で「STOP」と記されている。ベラルーシで一般大衆に情報を伝達するべくサインが「STOP」と書かれる筈がないだろう。日本人は英語が国際語だという誤解がされているが、そもそもローマ字表記も使っていないベラルーシ人の立ち入り禁止のために「STOP」と書くわけがない。それじゃあ、なぜ、このようなゲートが映されたのか。それは、この映画のために敢えてつくったからだ。このような映画はリアリティがすべてなのに、いきなり、この嘘っぽいシーン。このようなことをしたのは監督があまりにも無知なのか、視聴者を馬鹿にしているかのどちらかだ。さて、そのようなシーンを最初に見せられてしまったこともあり、他の話もすべて、眉唾を付けて観てしまう。
 ナージャに「さよなら私の村の学校」と言わせるのも嘘くさい。役人とナージャの親が口論しているのも、出来レースというかただの演出にしか見えなくなってしまう。80歳代の老婆の名前を「チャイコ・バーバ」と表記したりしているが、バーバが本名なのかこの映画用につけた名前かも分からない。このような曖昧な表記は、本作のようなドキュメンタリーには違和感を覚える。映画というのはドキュメンタリーであってもフィクションである。しかし、出来うる限り、真実に近づこうと努力するフィクションであると思われる。そのために、ドキュメンタリーは、リアリティに近づくために細心の注意を払わなくてはならないと思う。その努力、誠意といったものが不十分であることが分かると、その作品の説得力が急速になくなる。私自身が、ノンフィクション的な著作を出しているので、他山の石としなくてはと思わされる。
 一方で、ドゥヂチ村の映像そのものは凄まじい迫力である。そして100%が真実ではないかもしれないが、その多くは真実に近い。村民のニコライの「パンの代わりに放射能さ」と言うのも、シナリオではなく、この村民の本音なのではないかと思わせる迫力がある。そして、放射能汚染を恐れずドゥヂチ村で生きていく村民達の大らかさと逞しさ。
 この映画は福島原発事故以前につくられたが、日本はベラルーシ、ウクライナと同様に「ナージャの村」を作りだしてしまった。住民達の大らかさと逞しさは、勇気づけられる側面があるが、いろいろな状況を理解すると悲惨、というか痛い。特にキノコを皆が食べるところなどは、私からしても自殺行為としか思えない。チェルノブイリの事故が起きた後、1500キロメートル離れているバイエルンでも、事故後30年経ってもキノコは販売禁止である。放射能残留濃度が高すぎるからだ。
 内容的にはとても興味深いと思われるが、残念ながら、ルポルタージュの作品としては今ひとつと言わざるを得ない。せっかく、素晴らしいテーマであるにも関わらず、上記で指摘したようないい加減な姿勢が、本作を台無しにしてしまっている。

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『たんぽぽ』 [映画批評]

1985年の伊丹十三の映画。ラーメン屋を舞台としたマカロニ・ウエスタン風のコメディー。売れないラーメン屋を経営する線が細く見えて根性が座った努力家の未亡人を、彼女を取り巻く男性達が売れるラーメン屋へと立て直すというストーリーが本筋であるが、それと関係ない人と食べ物にまつわる性を考えさせられるようなエピソードが数点、挿入されている。これらが、人がなぜラーメンに拘るのかの背景を描いているようで、ストーリーとしては無関係であるが、ストーリーに奥深さを与える効果を与えている。出演者が今、振り返ると相当、豪華であり、特に渡辺謙、役所広司の若さが眩しい。

映画を見終わった後、猛烈にラーメンを食べたくなる。「熱くないラーメンはラーメンでない」。映画で主人公が言う言葉だが、なかなかの名言である。


タンポポ [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
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