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映画『ヘルター・スケルター』 [映画批評]

岡崎京子の傑作を蜷川実花が映画化した作品。岡崎京子が描いた主人公の狂気を沢尻エリカは高い演技で表現をしている。ヌードをも惜しげなく披露しての集中力溢れる演技は、観る者をその異常な世界へと強烈に引き込ませる。また、カラフルで独特な世界を表現した映像美は、ピーター・グリーナウェイを彷彿させる。この映像美だけでも、この映画はそれなりの価値があると思う。また、内容に関しても原作に忠実であり、岡崎京子のファンもそれなりに納得できるストーリーである。

それにも関わらず、この映画は傑作と評するには及ばない。それは、脇役である主人公のマネージャーの羽田を演じる寺島しのぶがミスキャストであるからだ。寺島しのぶの演技は悪くない。しかし、その驚くべきおばさんぶりが(恋人を最初、息子かと思ってしまったくらいだ)、主人公であるりりこの性的ないたぶりを極めて興醒めなものとしてしまっている。せっかく、桃井かおりや原田美枝子といったベテランがいい味を出しているにも関わらず、寺島しのぶによって、この映画は結構、台無しになってしまっている。とても残念である。


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