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『ミッドナイト・イン・パリ』 [映画批評]

冒頭のスライド・ショーのようなパリのスナップショットが美しい。パリってこんなに美しい街だったのか、と改めて感心する。本作品は20年前であれば、主人公はウディ・アレンが演じていたであろう。主人公のオーウェン・ウィルソンは、まるでアレンが憑依したかのようにアレンが演技するかのような演技をしている。そして、その演技がこの映画に見事にマッチしている。そして、アレンをも上回る演技をしているとさえ思われる。アレンのあくの強さがない分、むしろ主人公に感情移入しやすいのかもしれない。

ストーリーは、アレンの「アリス」や「カイロの紫のバラ」にも通じる大人のおとぎ話のジャンル。しかし、これら前作を上回る質の高さで、それはパリという都市の力に因るところが大きいかもしれない。そして、アレンは本作品でパリの魅力を見事に表現している。主人公が作品中で、「時々思うけど、どんな小説も絵画も交響曲もパリにはかなわないよ。だってこの街はどの路地も大通りも芸術品だから」。これが、この映画のそもそものコンセプトなのかもしれないが、この映画は、コール・ポーターを初めとした見事なジャズをバックに、パリの素晴らしさを描いている。パリ賛歌としても出色だが、映画単体としてもとても面白い。ウディ・アレンの優れた面が全面的に開花した、21世紀に入ってからの彼の最高傑作の一つであると思う。


ミッドナイト・イン・パリ [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • メディア: DVD



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