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家政婦のミタ [映画批評]

テレビを観ない私は、当然、テレビドラマも観ない。しかし、半沢直樹があまりにも面白かったので、半沢直樹の最終回が破るまで21世紀のテレビドラマの視聴率のトップを記録していた「家政婦のミタ」を一挙に観た。さて、この「家政婦のミタ」は、アメリカ映画でいえば「アメリカン・ビューティ」、「普通の人々」をも彷彿させる、郊外における家族崩壊ドラマの範疇に入るであろう。しかし、これらと一線を画すのは、家族が再び結びつけられるという点であることと、崩壊する家族を支えたのが、ロボットのように無表情な家政婦であるというところだ。この松嶋菜々子演じる家政婦が、おそろしく無表情でなかなかよい。これだけ、無機質で不気味な表情を演じて、相当の迫力をもたらせるのは、やはり松嶋菜々子が美人であるからだろう。そして、その美人ゆえに、このドラマのクライマックスは劇的なものになっているのだ。

また、このドラマのテーマは家族の崩壊、そして再生ということになるのだが、もう一つの隠れテーマともいうべきことは「自分で責任を持って決める」ということである。現代の日本では、多くの人が、自分で責任を持って決めることができない。また、自分の発言に責任を持てない。平気で「人を殺せ」などと言ったり、人に「死ね」といったり、人に「自分を殺せ」などという。そして、その言葉通りにミタが業務を執行しようとすると、その予想外の状況に狂乱状態になるのだ。要するに当事者意識が希薄なのだ。このような当事者意識がない人たちが、しっかりとした家族を維持していくことなど不可能だ。その自分で決断しろ、ということと、自分の発言に責任を持つ、ということで世の中の問題は、ある程度自分でも解決できる。そういうことを他人依存の人が多いこの現代社会に、このドラマは訴えているような気がする。特に、原発問題という将来への不安を拡大させる政策を進めようとしていても、とりあえず平気なんじゃない、といってそれを支援しようとしている人たちに、このメッセージを伝えたい。事故なんて起きない、起きても平気、などといっても実際、事故が起きたり、または放射性廃棄物の処分に困ったりした場合には、大いに慌てふためいて、自分が支持したことなんて忘れて他人のせいにするような人たちに対してだ。まあ、家族もしっかりと維持できない人たちが集まっても社会をしっかりと維持することなど不可能だ。そのような単純なことが、この世界では理解されていない。したがって、原発のような管理不能なものまでも金儲けのためだけにつくってしまうのだ。そういうことをも、この映画は理解させてくれる。

それにしても、こんないいテレビドラマが放映されているのに、それをみない生活をしていることをちょっと後悔してしまう。とはいえ、テレビを観るという習慣がないので、結局観ないのだが。


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  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2012/04/17
  • メディア: DVD



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