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ドイツの都市計画の謎 [都市デザイン]

ドイツの都市では一等地が緑地である場合が多い。ベルリンは都会のど真ん中に広大なティア・ガーテンという公園がある。その規模は210ヘクタール。ロンドンのハイドパークよりも大きい。これは皇居の230ヘクタールよりはちょっと小さいが、皇居と違ってアクセス・フリーというところが違う。ハンブルクも旧市街地の外側を走る環状道路の外側にグリーンベルトのようにヴァランラーゲンの緑地を設けている。ミュンヘンも都心部の東を流れるイーゼル川沿いに広大な回廊状の緑地を整備している。今、私がよく特急の乗換駅で使うシュパンダウ駅は、東京でいえば大宮駅のような高速鉄道の交通結節点である。この駅でハンブルク行き、ハノーファー行きとが分岐する。しかし、その駅前には公園が広がる。それも結構の規模である。
 なんでこういう都市計画ができるのか。というのは、このシュパンダウ駅前は一等地である。日本だったらまず土地開発をするであろう。この公園の土地は相当の確率でベルリン市かシュパンダウ区が所有していると思われるが、日本だったら役場が土地を所有しても、それを「有効」活用することを検討するであろう。さて、ここで何が「有効」なのか、ということがポイントであるのだが、それは投資対効果なのである。アメリカでも似たようなことが検討されると思われるが、アメリカの方が実は日本より結構、役所が力を持っているので、それほど乱暴な不動産開発はできない(ただし、アメリカは都市計画法が州法なので州によって異なる。例えばハワイ州とかは、相当、土地利用規制が厳しい)。
 このように駅前の一等地にドイツにて緑地が確保できるのは、これは都市計画がしっかりしているからだが、この計画をつくるうえであまり経済的な観点が配慮されていないことが分かった。そもそもドイツの都市計画家は経済の勉強をしてないらしい。都市経済学とかいう言葉がでると、ドイツの大学の都市計画系の先生とか都市デザインの先生とかは、いやあ、ドイツはこういうことを都市計画の分野で勉強しないから不味いんだ、みたいなことを言う。したがって、駅前の一等地にオフィスビルをつくれば雇用が増え、税収も増えるぞ、みたなことをどうも都市計画では考えてないようなのだ。いや、考えていたとしても定性的というか勘のようなものだと思う。と書きつつ、ベルリンでもポツダム広場の再開発では、ソニーやベンツなどの民間投資を随分と促して、驚くような開発を遂行したから、多少は考えていたのかもしれないけど、その後、ベルリン州は倒産に近いような状況になったからな。開発をする時も金計算はあまりしていないのかもしれない。
 そして経済性ではなく、もっとアメニティとかアイデンティティのようなことを優先に考えて計画を立てる。土地でいかに儲けるようなことを考えない、というかそういう発想がないようだ。そもそも住宅も7割近くが賃貸だし、土地転がしという考えがない。それの担い手である不動産会社も日本やアメリカ合衆国と違って恐ろしく政治力がない。その結果、短期的にみると土地から金を生み出さないので損をしたようなことになるが、長期的にみればその都市の利益に繋がる。都市のあるべき姿をしっかりと考えることができるのだ。ドイツはこの点は偉いな、と思っていたのだが、その人材を育てるドイツの大学の教員達はむしろ真逆のことを考えている。ドイツのよさを潰して、アメリカ的な都市経済学で都市をつくろうと考えているのである。なんか、がっかり。あと、都市経済学というのは基本、アメリカ人が発展させた体系であるので、アメリカの中小都市の分析には多少、役に立つが大都市圏の分析には役立たないし、また、人口減少や日本の東京や大阪のように複雑な系となっていて、アメリカ人と違う価値観を有する人達が住んでいる都市にはほとんど役に立たない。日本でもいろいろとフラストレーションが溜まるが、ドイツの専門家も結構、アホなのでフラストレーションが溜まる。しかも、コミュニケーションを英語でするので、どうも説得力に欠けるし(私は日本語で話してもそれほど説得力を有さない・・・見た目のせいもあると思う)、しかもドイツにビザで住まわせてもらっている身なので、そうそう強く主張するのにも抵抗があるし。ドイツ人は自分達のよさをしっかりと自覚しないと、不味いんじゃないかな。そうそう、都市計画の先生よりも都市社会学の先生の方がドイツではまだしっかりして理解しているような印象も受ける。しかし、実施、都市計画を担うのは、都市計画の学科を出た学生なんだよなあ。
 

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