川喜田二郎『発想法』 [書評]
1967年に出版された大ロング・ベストセラー。私が1988年に就職した新入社員研修でも「KJ法」の研修がされたが、どうも今でもやっているらしい。確かに創造的なアイデア、企画をグループで考えるうえでは極めて有効な方法であると思われる。その民主主義的なボトムアップ型のアプローチは、民主主義下での問題解決法としては相当、優れているのではないかと思う。さて、本著であるが、6章からなる。まず1章はフィールドスタティ(野外科学)の特徴や重要性を述べている。そして2章ではその方法と条件などが述べられる。そして、その計画技法としてのKJ法について3章では述べられる。ここまでは非常に密度が濃い有益な内容となっている。しかし、4章の「創造体験と自己変革」では、日本人とアメリカ人の情報処理の仕方の違いとか創造性の違いとか、男女の違いとかが延々とエッセイ的に述べられており、その根拠も著者の思い込みであり、読んでいてガクッとくる。これまで背筋を伸ばして読んでいたので尚更だ。そして次は「KJ法の応用とその効果」であるが、これはその前の章よりはいいが、それでも、事例を箇条書きのように述べているだけで、3章までの迫力がなくなっている。そして、むすびになるのだが、実は最も読み応えのあったものは初版から20年ぐらい経って付け加えられた「あとがき」である。この「あとがき」は非常に参考となる有益な著者の知見が語られている。間違いなく必読本ではあると思うが、4章が玉に瑕である。