保坂展人著『88万人のコミュニティデザイン』 [書評]
世田谷区長の保坂展人によるエッセイ本。基本、保坂氏のこれまで世田谷区で実施してきた政策を自慢気に披露する、いかにも政治家によるエッセイ本であるが、不思議とそれほど嫌味に感じられない。それは、保坂氏が誠実に問題に取り組んできたためではないか、と思われる。区長になったからといって、いろいろとマニフェストで掲げた政策が具体化できる訳ではない。議会によっていろいろと手足が縛られることだって多い。ただ、三選を果たして、随分とその裁量度は増えてきたし、やれることも増えてきたかと思われる。保坂氏のアイデンティティは「内申」による苛めというか暴力によって、大きく将来の可能性が狭まれたという被害経験を源としている、と思われる。それゆえに冤罪の被害者やマイノリティ、若者へと心を寄せる。このような「苛められっ子」が政治をしていることは、実は結構、いいと思うのである。安倍や麻生、二階といったいかにも「苛めっ子」が牛耳る日本政府と比べると、ずっと保坂氏の方がましな政治家なのではないか、とこの著を読んで改めて感じた。