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『バックミンスター・フラーの世界』 [書評]

思想家、デザイナー、建築家、詩人として極めてオリジナリティ溢れる製品、思想を創り上げた創造者であるバックミンスター・フラーの人、発明品、思想などがよく理解できる本である。本は分厚いがしっかりとした考えの構成の元、編集されているので読んでいてほとんどストレスを感じない。また、著者はバッキーに直接師事し、一緒に仕事もしていたジェイ・ボールドウェインであり、バッキーという人物をよく分かっており、彼の思想・哲学をも非常によく理解しており、さらに文章力もあるので、バッキー辞典としても優れている。さらに、訳者がバックミンスター・フラー研究所で共同研究に従事していた梶川泰司であるため、語彙や背景などの無理解からの誤訳がほとんどない。これも本書の優れているところである。
 さて、そして内容であるが、改めてバックミンスター・フラーの思想の根底にあるのは「サステイナブル・デザイン」であることを知る。まあ、そもそも「宇宙船地球号」というコンセプトを出した人だから、今のSDGの源流となるような人であるから当然なのだろうが。さて、その割には、SDGsと声高に叫ぶ人達の主張に、全然、バックミンスター・フラー的なコンテクストを感じられないのはなぜか。おそらく二つの理由がある。一つは、勉強不足で知らないだけ、ということ。もう一つは、本気でフラーの考えに従って行動していくと、既得権益などもぶっ飛ぶような大きな変革が必要となるから。でも、これだけ行き詰まってしまい、真っ直ぐ進むことがまったく正解ではないことが明らかになった今、バックミンスター・フラーを再び学ぶ意義はあるのじゃないかな。ということを本書を読み終わって強く思った。


バックミンスター・フラーの世界―21世紀エコロジー・デザインへの先駆

バックミンスター・フラーの世界―21世紀エコロジー・デザインへの先駆

  • 出版社/メーカー: 美術出版社
  • 発売日: 2001/11/15
  • メディア: ペーパーバック



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