映画『砂の器』 [映画批評]
松本清張の原作を野村芳太郎が監督をして映像化した作品。1974年製作。幾つかの見所がある。ストーリー的には方言が問題解決の糸口を提供したこと、ハンセン病をテーマとしたこと、どんな善人でも入ってはいけない親子の情の絆の一線があること、戸籍は戦後のどさくさではでっち上げられること、などだ。映画的には、なんといっても父と息子との回想シーンであろう。その演技力の凄味は言葉では表現できない。映画の圧倒的な力を思い知らされるようなシーンである。そして、これに絡むテーマ曲が素晴らしい。作曲も素晴らしいが音楽監督の力も凄いものがある。あと、個人的には1970年代の日本の風景をいろいろと見られるのはとても興味深い。改めてちょっと前までの日本の風土の美しさには息を呑む。いつから、こんな汚い景観になってしまったのだろうか。
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