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『ベルリンを知るための52章』 [書評]

私は明石書店の「○○を知るための○章」のエリア・スタディ・シリーズが結構、これまでも、好きでいろいろと読んでいる。さて、しかし、このベルリン本は、私が読んだ中で最も質が低く、しっかりと編集できていなくて、本当に明石書店が出版社かと確認したぐらいである。何か編集部に組織的問題があったのではないか、というほど酷い。

この本は浜本隆志という定年を迎えた大学教員と希代真理子というベルリン在住のフリーランスが書いているのだが、このコンビネーションがよくない。ジャズ・ギタリストとヘビー・メタルのベーシストでバンドを組ませたような感じである。浜本先生はドイツの歴史にはさすが詳しく、ワイマール共和国あたりのエッセイはなかなか勉強になるが、ベルリンとの関連性は薄い。一方の希代氏は、ベルリンの生活者からの視点でいろいろと彼女の感想文のようなものを書いているが、女優のエッセイというレベルで、著者に興味がなければ読むに値しない。これのどこがエリア・スタディなのだろうか。私もベルリンに住んでいるが、私のブログの方がまだまともなことを書いているのではないだろうか。これは著者の責任というより、この人に書かせた明石書店の問題じゃないだろうか。

あと、「増加」を「増化」とするなどの誤植があり、これは流石に編集レベルで気がつかないのは不味いだろう。私は、これまでこのエリア・スタディ・シリーズは無条件に信頼していたが、その信頼を大いに落とした本である。あと、ベルリンの内容にも異議を多く持つ。悪いけど、そんなに環境都市じゃあない。少なくとも、京都に比べてもごみの分別とかごみの処理はしていないし、街並みはごみに溢れていて汚い(といってもオランダよりはましだけど)。そして、生活排水の処理ができてないんだよねえ。ここは、本当、日本で生活していたものとしては心配になる。ドイツに長く住んでいる日本人にこの点を相談したら、「日本と違って生活排水はそのまま流すんです。ダメですよねえ」と言っていたから、希代さんも知っている筈だ。ということで、ベルリンに対して理解を促すというか、誤解を促すような本であるとも思う。まあ、読まない方がいい、というか他の本を読んだ方がベルリンを理解するうえではいいだろう。

例えば、平田達治氏の『ベルリン・歴史の旅』を読んだ方が10倍以上、というか『ベルリンを知るための52章』の読む価値はゼロに近いので、100倍以上はためになると思われる。まずは、こちらを手にすることを強く勧める。


ベルリン・歴史の旅-都市空間に刻まれた変容の歴史 (阪大リーブル025) (阪大リーブル 25)

ベルリン・歴史の旅-都市空間に刻まれた変容の歴史 (阪大リーブル025) (阪大リーブル 25)

  • 作者: 平田達治
  • 出版社/メーカー: 大阪大学出版会
  • 発売日: 2010/10/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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