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桐島聡について、ちょっと考える [その他]

連続企業爆破事件で指名手配中であった桐島聡が入院先の病院で正体を明かした後、亡くなった。なぜ、桐島聡は、逃げおおせたのか。朝日新聞のデジタル版に、公安部への取材を元にした記事が掲載された。
https://digital.asahi.com/articles/ASS2V41Q8S27UTIL02C.html?pn=11&unlock=1#continuehere
 
桐島聡が最後に自分の正体を明かしたことで、公安部幹部の1人は「そのまま静かに死んでしまえばよかったのを、最後に名乗ったのは自己顕示欲だ。言いたいことがあるなら逃げ隠れせずに主張すればよかった」と言った。この発言には、強い違和感を覚えた。まず。最後に名乗ったのは、自己顕示欲ではなくて、それまでずっと嘘をつき通してきたことに対して後悔のようなものがあったからだろう。確かに多くの被害者を出した事件の犯人であるから、名乗れば捕まってしまう。捕まることには抵抗があったが、もう死ぬということが明らかになった時、嘘をつく必要もなくなったので名乗り出たのであろう。嘘をつき通さなくてはいけない人生を送ったことへの悔悟がなければ名乗り出ないと思われる。自己顕示欲で名乗るというケースもあるかもしれないが、それは、被害者や社会にざまあみろ、と言いたいような場合である。地味な社会生活をずっと送っていた桐島聡は、そのような気持ちはなかったと思われるのだ。むしろ、そのような過去を持たず市井の人として平凡な幸せを送りたかったと悔やんでいたような気がする。じゃなきゃ、バーに行って音楽とかを楽しんだりしないであろう。

そして「言いたいことがあるなら逃げ隠れせずに主張すればよかった」というのも、外した発言であると思う。まず、主張したいようなことは一分もないと思う。言いたいことがあるとしたら、謝罪であろう。とはいえ、これは単独犯ではなく組織での犯行である。自分がリーダーという訳ではない。何か言っても被害家族はもちろん、社会にも言いたいことは通じないであろう。もちろん、公安部幹部に伝わることがないのは、このような意見を公安部幹部が言っていることからも明らかである。謝罪をして一生、牢屋で過ごすよりかは、自分の些細な幸せを守りたかった。それは卑怯な行動かもしれないが、なかなか彼が自白するのは難しいような気がする。まあ、このように考えるのは私が卑怯なところがあるからかもしれないな、と思ったりもするが、正月の日航機との事故を起こした海上自衛隊のパイロットだって、本当のことを言えてないと思うので、こういうことはなかなか難しいことのような気がするのだ。

このようなことを書くと被害者や被害家族のことをまったく考えていない卑劣感のように思う読者もいるかもしれないが、私の父親は桐島聡が爆弾を仕掛けた三菱重工のサラリーマンであった。ということで、爆破事件が起きた時、私は小学生だったが非常に記憶に残っている。父親はその時、本社勤務ではなかったが、本社勤務であったら自分は父無し子になってしまったかもしれない、と犯人を憎く思ったことを記憶している。そのように、多少は自分とも関係があった事件であるのだが、それでも公安部幹部の意見はまったく、人の心理を分かってない発言だと思う。

このように桐島聡を多少、性善説的にみてしまうのは、彼が私の前任校の明治学院大学の学生だったこともあるかとも思う。彼からは、いかにも明治学院大学出身といった印象を受けるのだ。音楽が好きで、平気で夜中にギターを持って歌ってしまうことや、地元のバーで盛り上がって周りからも好かれたりするところなど、明治学院大学の出身者っぽい。そして、変な社会正義とかに感化されて、大した問題意識もなく社会から逸脱したようなことをしてしまう。私もゼミ生が飲み会の後で、目黒駅の周辺で暴れて捕まって、留置所に入れられたことがある。他のゼミ生から連絡を受けて親とかに私から連絡したことがある。そういえば、彼も歌が好きで、ギター持って歌っていたな。なんか、桐島聡の新聞記事などを読んでいたら、何人か、明治学院大学の学生を思い出してちょっと懐かしい気分になったことも、彼を心底、憎めない理由かもしれない。

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