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『格差はつくられた』 [書評]

英語のタイトルは「リベラルの良心」。このタイトルだったら読まなかったと思うから、本書の「格差はつくられた」というタイトルはなかなか悪くないと思う。内容は、共和党がいかに民主主義的でない政策を推進してきたか、というものが主であり、そのうちの一つとして「格差を拡大するような」政策を進めたこともあるので、そういう意味では邦題にも嘘はないと思う。本書はリーマン・ショック前の、まだ共和党の大統領が就いていて、オバマがまだ民主党の大統領候補としてもダーク・ホースであったような時点で書かれている。また、著者自身もまだノーベル賞を受賞する以前の著作である。そういった点で、若干、現在のアメリカの政策分析には参考にならないところがない訳ではないが、むしろ、現在の日本の政策がどちらかというと格差を拡大させる方向性にあることから、将来、より深刻化する日本の問題を予見するうえでは参考になる。経済問題が純粋に、経済的な要因で引き起こされるのではなく、政治的な判断によって起きる、という指摘が、ノーベル賞を受賞するほどの経済学者が指摘することの重みを真摯に受け取るべきであると思う。なぜなら、日本の多くの経済学者は、すべて経済的な政策で諸処の問題が魔法のように解決できると信じている輩が、驚くほど多いからだ。


格差はつくられた―保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略

格差はつくられた―保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略

  • 作者: ポール クルーグマン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2008/06
  • メディア: 単行本



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