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地球をこわさない生き方の本 [書評]

本書は「槌田エントロピー理論」で有名な槌田敦の実弟の槌田劭の取材記事と、執筆当時20代後半であった駆け出しのルポライターの記事とが混在している。その結果、中途半端な内容となってしまっている。これは、槌田劭の哲学的ともいってよい環境問題への考えと、ルポライターがみつけてきた関連のありそうな人物や事例の身近な取材とがマッチできていないからだ。おそらく、編集者は観念的なものと現実的なものとを結びつけるために、このような二段階構成にしたのであろうが、それが必ずしも成功しているとは思えない。ルポライターの若いゆえの狭い視野による取材内容がかえって、槌田劭の奥行きのある視野を限定させてしまるような印象を受ける。槌田劭の伝えたいことは分かるが、それをそのまま若い子達に鵜呑みにさせてしまうことは可哀想でもある。もちろん、年寄りがもうほとんど期待できないので、若い世代に期待したくなる気持ちは痛いほど分かるが、世の中のシステムを変えずに、自分だけが世捨て人のような生活をすることのリスクに対しての配慮があった方がいいかとも思う。おそらく、もっと頁数があれば槌田劭もしっかりと伝えられたのかもしれないが、ジュニア新書という頁数の限界、さらにはそれを補填すべきルポライターの方向性のずれなどで、槌田劭が伝えたい点が中途半端になってしまっているかとも思われる。そういった点で、若い人に読ませるのには私は多いに躊躇する。


地球をこわさない生き方の本 (岩波ジュニア新書)

地球をこわさない生き方の本 (岩波ジュニア新書)

  • 作者: 槌田 劭
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1990/08/20
  • メディア: 新書



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