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青森はなぜ原発中毒になったのか [原発問題]

朝日新聞の「プロメテウスの罠」の新しいシリーズ「ロスの灯り」が面白い。これまでのシリーズももちろん抜群に面白いのだが、核燃料サイクル基地がなぜ青森県六ケ所村にできたのか。その背景を探る最新シリーズは、この国の地域開発の歪みとでたらめさ加減を白日の下に晒す。

青森県でなぜ、核燃料サイクル基地ができてしまったのか。それは過去をひもとけば、北村正哉知事が海外視察でロスに行き、その煌々とした夜景に感銘を受け、青森をロスにしようという夢を描いたことに起因するそうだ。いやあ、驚いた。どうしたら、青森県をロスにしようなどと思ったのであろうか。それは、楽器がほとんど弾けず、カラオケでも気の利いた歌が歌えない高校生がレディー・ガガになりたいというようなものである。こういうことを荒唐無稽というのではないか。

ロスアンジェルスは人口800万人を越える都市だ。青森県は140万人。最大の都市は、市町村合併で無理矢理拡張した青森市だが31万人程度。そもそも、規模が違う。さらに産業構造をみれば、ロスアンジェルスを牽引したのは航空機を初めとした軍事産業と石油産業。石油産業はたまたま石油が掘れたので、それによって産業が起きる。まあ、棚からぼた餅的な幸運によって、都市として発展するきっかけがつくられ、さらに軍事産業が成長の後押しをする。市場経済によって拡張したというよりかは、軍需という公共事業によって政策的につくられた産業によって都市は発展する。その後、ハリウッドを初めとした娯楽産業、さらには不動産業などが発展するが、まあ、ある意味、あまり正当に発展してきた都市ではない。

ロスアンジェルスというのは、そもそも相当、無理がある都市である。まず、砂漠につくられたので、その水源をカリフォルニアのシエラネバダ山脈のオーエン谷から摂取し
なくてはならなかった。そこか何百キロメートル以上、水を引っ張ってきて上水とした。そのおかげでオーエン谷にある幻想的な湖モノ・レイクは年々、水位が下がり、その保全が問題となった。都市の成立条件として必須の水が圧倒的に不足しているというのは、おかしい。同じカリフォルニアの都市でも、そういう点、サンフランシスコと比べると、どうも都市として不自然さを感じるのは、そういう都市の成り立ちの経緯があると思う(とはいえ、サンフランシスコも水源としてヨセミテ国立公園にあるヘッチ・ヘッチー渓谷をダムにしてしまったが)。ロスアンジェルスをさらに酷くしたのが、ラスベガスである。

まあ、こういうそもそも有り難がるような都市ではないロスアンジェルスを賞賛することはセンスが悪い。ロッキン・オンの元編集長であり、ロック評論家の渋谷陽一がラスベガスを飛行機からみて、「これは狂っている」と看破したのとは正反対の知性のなさである。しかも、それを賞賛するだけでなく、青森をロスアンジェルスにしようと考える滑稽さ。そして、それを無理矢理、実行しようとして、当たり前だが失敗が失敗を呼び、挙げ句の果てには核燃料サイクル基地って、あまりにも酷い冗談である。ロスアンジェルスはいろいろと問題があるし、ロスアンジェルスとサンディエゴの中間地点には、全米でも相当危ない原発が立地していたりするが、核燃料サイクル基地の計画はない。

青森は東通原発や核燃料サイクル基地など、どうして、こうやけのやんぱちのような政策をしているのか、不思議であったのだが、その背景に、こういうセンスが悪い豪腕の政治家がいたことを知って、ある意味、納得すると同時に、なんて青森はついていないんだと同情する。しかし、同情するが、だから原発の立地を許せるかっていうと、それとこれとは話は別である。この荒唐無稽な夢を抱いた政治家の野望から、青森は独立すべきであろう。そうすることで、将来が見えてくるのではないだろうか。

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