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バーゼル市の都市計画局を訪れる [都市デザイン]

 スイスのバーゼル市の都市計画局を訪れ、バーゼル市の都市計画事業、そして都市デザイン事業に関して説明を受ける。バーゼル市は、フランス、ドイツの国境沿いにある都市である。しかし、18万人の就業人口のうち4分の1くらいは毎日、国境を越えて通勤しているそうだ。したがって、広域計画をする必要性があるのだが、なかなかこれが難しい。まあ、自治体が異なるだけで調整するのが難しいのであるから、国が違えばさらに難しくなってしまうのは想像に難くない。法律まで違うのだから事態は深刻だ。例えば、ユニヴァーサル・デザイン的な考え方はスイスが一番しっかりしていて、ドイツ、フランスと続く。スイスでは、2020年までに公共交通を始めとした公共施設に関しては、ユニヴァーサル・デザインというかバリア・フリー的な条件(車イスの人が自力で利用できる)を満たすことを目指している。しかし、スイスとフランスの両方と通るトラムにおいて、スイス側がそのような条件を満たしてもフランス側が満たさなければ車イスの人にとっては、スイス側が改善しても不十分なままである。とはいえ、そのような課題を克服して、三国にまたがる広域バーゼルの将来像を決めようとしている。そのために、ドイツの都市開発の伝家の宝刀であるIBAをスイスであるが利用して、IBAバーゼルに取り組みつつある。

 さて、しかし都市計画局ではもっと具体的なプロジェクトに関しての話を聞いた。これまでフランスの国境まで高速道路が走っており、スイス側に入るところで終点になっていた。これはバーゼルの西側にあたる。一方でバーゼル市の東側にはドイツから南下してきた高速道路が南北に走っている。その結果、フランスの高速道路を走ってきた車は、市の東側に通る高速道路に乗るためにバーゼル市内を通ることになり、そのため渋滞を生じさせたりする問題が生じていた。これらを解決するために、バーゼル市はこのフランスの高速道路とドイツから来ている高速道路を結ぶ地下トンネルを整備することにした。そのために、この高速道路の上部空間を買取り、綺麗に整備し、沿道には新たな住宅もつくり、販売することにした。ここで興味深いのは、上部空間に出来た道路はトラムを走らせ、自動車の走行を制限するなどして人間空間へと変容させたことである。山手通りが地下に首都高速道路環状線を整備したにも関わらず、さらに、上部空間も自動車空間とし、より非人間的な空間利用にしてしまったこととは大違いである。まあ、このように自動車空間を人間空間に取り戻す試みは、もうヨーロッパ中でみられており、とりたてて驚くことでもないのだが、それでもこのような具体例を示されると、なんで日本の都市は世界的な潮流に逆行しているのか不思議でならない。ちなみにバーゼル市では、自動車の走行距離を10%削減する長期目標を設定しているそうだ。

 あとトラムには相当、力を入れており、中央駅にあるトラム乗り場には、まったく段差がなく、車イスでもシームレスに移動できるように設計されていた。このトラム乗り場は、私がドイツに住んでいた頃はずっと工事中だったので、中央駅前のイメージは悪かったのだが、工事が終わって、出来上がった完成形をみたら、そのデザインのよさに感銘を受けた。他にも、トラムの島型の停留所を歩道側に寄せるような同線の工夫をしたところなどは感心したし、また車道を公園へと変容した事業にも唸らされた。まあ、これなどはドイツの都市では結構、常套手段ともいえるのだが、バーゼルお前もか、と思い、なかなか感心する。

 バーゼルはどうもチューリッヒにライバル意識を持っているようで、それは私からすれば何を背伸びしているんだ、と思っていたのだが、こと都市計画、都市デザインに関しては、バーゼルはチューリッヒを上回っているかもしれない。もちろん、ヨーロッパ随一とも評価される公共交通システムでは足下にも及ばないかもしれないが、都市空間、公共空間のデザインや演出の仕方は、なかなかどうして相当いい線をいっているのではないかとの感想を抱く。ちょっと、これからもフォローしなくてはいけない都市だなと思って都市を後にする。

タグ:バーゼル
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