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チューリッヒ市の再開発地区チューリッヒ・ヴェストを視察する [都市デザイン]

チューリッヒ市最大の再開発地区チューリッヒ・ヴェストを視察する。ここは船舶のタービン工場などが工業地区で、現在、チューリッヒ市はここを混在地区として再開発しようとしている。ポイントは多くの産業施設の建造物を保全してリノヴェーションをしようとしているところで、ドイツやフランスの工業都市で最近、よく見られる手法である。また、この工業地区を横断する新たなトラム路線も整備中で、これは2011年12月、すなわちあと2ヶ月ぐらいで開業する予定であるそうだ。このような古い建造物を保全しつつ、新たな用途で再生しようとした最初の事例は、シッフバウ、すなわち船舶のタービン工場を劇場へと再生したもので、これはスイスの中でも屈指の優れた劇場として評価されているそうだ。ここにはジャズ・クラブやレストランなども併設されているのだが、なかなかいい空間であって感心した。これは10年くらい前に、パイオニア的プロジェクトとして実施されたのだが、集客効果、またこの地区の将来像を暗示させる効果などを考えると、相当の成果を得られたと思うのだが、それ以後の開発はそれほどうまく行っていないような印象を受ける。というのは、この劇場のような高い質の空間、そして公共性を獲得できていないような印象を受けたからである。まあ、これは私の第一印象だけであるから間違っているかもしれない。とはいえ、チューリッヒ市というほぼ完成された都市において、このようなブラウン・フィールドの開発の機会が提供された時、その都市が構想するアイデアは多いに参考になる。

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(船舶のタービン工場を劇場へと再生したシッフバウ)

 チューリッヒ市はこれまで旧市街地や中央駅のそばしか訪れたことがなかったので、このチューリッヒ・ヴェストはなかなか衝撃的であった。旧市街地はしっかりと保全しているが、その一方でブラウン・フィールドは積極的に開発している。しっかりとした情報センターもあり、多くの情報もここで入手できる。
 とはいえ、ハンブルクのハーフェン・シティやベルリンのポツダム広場、デュッセルドルフのイエーガー・プラッツ、フライブルクのファウバーンのような都市計画の知恵が凝縮されたような迫力は感じない。これは先日、訪問したストックホルムのハンマルビー・ショーシュタットを訪れた時にも感じたことなのだが、ドイツの都市計画を多く知ると、他の国の都市計画がどうにも今ひとつに思えてしまうのである。例外はビルバオとバルセロナくらいか。あの環境先進都市として知られるデンマークのアルバーツラントに訪れた時も、市役所の職員は、ドイツを先進事例として勉強しているといっていたくらいだ。
 とはいえ、これからもスイスの都市、特にチューリッヒ、バーゼルは注目していきたいと思う。

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(新しく建設中のトラムライン)

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(デザイン的には今ひとつで、人があまり使っていない広場)

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