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『みえない雲』 [映画批評]

2006年に公開されたドイツ映画。監督はグレゴール・シュニツラー。原発事故の悲惨さ、一度起きたら、その地域の人々の人生がメチャクチャになってしまうことが、若い二人の恋人を中心として描かれている。この映画のコピーは『原発事故が引き起こす極限状況下での愛を描いたパニック・エンタテイメント』となっているが、このコピーはちょっと映画の実態をしっかりと反映させていないと思われる。少なくとも、原発事故のパニックをエンタテイメントとして描いているようなものでは決してない。むしろ、原発で放射能を浴び、その中で病魔と闘いながらも、恋人のことを真摯に想い、残された日々を大切に生きようという主人公二人の生き様こそが、この映画が描きたいことなのではないだろうか。そして、そのような将来ある恋人二人の人生を破壊した原発というものの恐ろしさを、この映画は伝えたいのではないだろうか。パニック・エンタテイメントというコピーには個人的には抵抗を覚える。

さて、この映画はフクシマの事故をあたかも予言しているかのようで、フクシマの事故後にみると大変、訴えかけてくるものがある。こういうことがフィクションではなく、現実に日本でも起きてしまったということは愕然とさせられる。フクシマの原発被害者は、現在でも多くの人が自殺をしている。さらに、この映画で描かれていたように、多くの子供達において癌が今後、生じるだろう。多少、科学的にはおかしいような描写もあるが(例えば、放射能汚染患者と一緒にいると放射能が移るといったような点)、大きな流れとしては外していないと想われる。フクシマの事故が起きたからこそ、日本人としてはこの映画をしっかりと見てもらいたいと思う。フクシマの事故で、日本ではなくドイツが脱原発を決めたのは、この映画を含めて、原発の危険性についての国民がよく知らされていたということがあったのではないかと思われる。それにしても、ドイツ再統一後には、良質なドイツ映画がよく製作されるようになってきていると思われる。

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