SSブログ

ドイツの都市デザイナーを車で都内を案内する [都市デザイン]

ドイツの都市デザイナーであり建築家であるドルトムント工科大学のクリスタ・ライヒャー先生を車で都内を案内した。彼女は日本が初めてであり、彼女が東京という都市に対してどのような印象を抱くかというのは極めて興味深いものがあった。

さて、コースはとりあえず成田空港からレインボー・ブリッジを渡り、神楽坂へ。レインボー・ブリッジからみるウォーターフロント沿いの高層ビルには驚いたようで「ボー」(ドイツ語でのオーというような感嘆語)と連発する。さらに、芝公園周辺で首都高速道路がビルの谷間を縫うように走ることに驚いていた。こんなに自動車が人間空間に浸食しているなんて、という驚きであった。まあ、ドイツは高速道路をそもそも都市内に入れさせないから、このようなビルのすぐ横に高架の高速道路が走ることは驚きなのであろう。

神楽坂では自動車のコイン・パーキングに驚いていた。まあ、これは驚くであろうと想定してはいた。神楽坂では路地を歩く。とてもいい印象を覚えたようである。そして、昼食は中庭がちょっとある小料理屋に入る。加賀料理で、ちょっと東京とは関係がないのだが、そのような細かい点よりも、この和風の空間を体験してもらいたかったのだ。その料理の繊細な盛りつけ、食器類の繊細さには大変、感動されていた。しかし、この料理といいミクロな空間のつくりはとても洗練されて上手い日本人が、なぜ都市空間を美しくできないのは本当に何故である。

神楽坂を出て、早稲田に向かい、東京で唯一残っている都電荒川線を見せる。しかし、彼女の反応は、せっかくの都電の線路という緑化する貴重な空間を活かしていないのはもったいない、というものであった。確かにそうである。また、東京でも荒川線の運営は黒字であるといったら随分と驚き、ヨーロッパの都市の多くが路面電車を復活させているのに、なぜ東京はここだけなのだ、と質問された。いや、それは私こそ都庁とかに質問したいことである。荒川線という路面電車がランニング・コストをペイできているという事実は少なくとも先進国では奇跡的なことであるのだが、その奇跡を多くの日本人は奇跡と捉えていない。大変、もったいないことだ。

その後、新しく整備された山手通りを北上し、新宿副都心を通り、表参道を通り、高輪のホテルに送っていく。その過程で、やたら反応したのが立体交差であり、写真も多く撮られていた。特に、三層、四層になっているところ、例えば甲州街道と山手通りの上をまたぐように首都高が立体交差するところなどは、ウォーという感じで反応していた。確かに立体交差は二層ぐらいのものは例えばデュッセルドルフでもあるが、それを撤去させようとする動きと、モダニズムの遺構として保全しようとする動きとで分かれるくらいであるから(なぜか、そのまま残して使おうという意見はない)、都市内での道路の立体交差というのは確かに少ないのかなと思ったりもするが、それにしてもこの反応には驚いた。改めて、こういうものがヨーロッパ的な視点からは珍しいのであるなということに気づかされた(大橋のインターチェンジにつれていけばよかったと、ちょっと後悔する)。

総じて、東京はカオティックであるのと巨大であるとの印象を受けたようである。ドイツ人の都市デザイナーからすると、神楽坂の路地のようなミクロな空間スケールでの都市空間のアメニティの高さに対して、自動車空間の人間空間への浸食への乱暴さを感じ取られていたように思えた。私も大いに考えさせられる一日であり、大変、勉強になった。

nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0