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内井昭蔵の『再び健康な建築』 [書評]

良心の建築家、内井昭蔵が亡くなられた後にそれまで書かれたエッセイ、論述を編集した本。そういった点で、首尾一貫したテーマで書かれている訳ではないが、著者自身が一貫した倫理的なる理念で仕事をしていたこともあり、その空間づくりへの意識にぶれがなく、著書を通じて語られる内井教とでもいうべく考えの数々は大変、勉強になる。幾つかの印象深い文章があるが、ここでは1点だけ紹介したい。「(前略)人間はそれら付加されるものと記憶との仲で鍛えられ成長する。そのなかから個性が磨かれ、創造性が生まれる」。あくまでも、日常の生活空間の中で、生活の厚みを意識した彼の建築と対峙する価値観、そしてそれが生み出した素晴らしき建築群。建築や空間、環境だけでなく、人が生きるということの意味までも考えさせてくれる素晴らしい本であると思う。このような建築家が設計したオフィスで私は日々、働いているという非常な幸運に恵まれている訳だが、その有り難さをも再確認させてくれる。とはいえ、多くの同僚はその有り難みを理解せずに、不平を多く言う。不平を言う前に本書を読むべきであると思ったりもする。


再び健康な建築―生活空間に倫理を求めて

再び健康な建築―生活空間に倫理を求めて

  • 作者: 内井 昭蔵
  • 出版社/メーカー: 彰国社
  • 発売日: 2003/08
  • メディア: 単行本



タグ:内井昭蔵
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