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排出権取引で温室効果ガスを買いまくっている日本はちょっと情けない [グローバルな問題]

地球温暖化防止で、ルクセンブルクで活動しているNPOの職員と会話をした。結構、会話が弾んできたら、なぜ日本は真剣に取り組まないのだ、と問い詰められて驚いた。筆者は恥ずかしながら、温室効果ガス削減は口約束なのだろうとこれまで勝手に考えていた。というのも、日本で本気でその約束を守ろうと頑張っている人や組織が見えなかったからである。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という気分に日本国民のほとんどがなっていると考える筆者は、他の国も似たようなものだろうと推察していたのである。しかし、ドイツやスウェーデンを始めとした北欧諸国は確実に温室効果ガスの削減を進めている。実際、統計でこの10年くらいの取り組みをみると、日本は大半のヨーロッパ諸国に比べて劣っている。特に、排出権取引の購入者リストを見せられた時、大口を買い漁っているのが日本政府や日本企業であり、ちょっとショックを受けた。「こんな姑息なことばかりしていて、情けない」とこのNPOの職員に言われたが、まったく何も言い返せなかった。

日本がこのような取り組みをするのは、おそらくアメリカ的に地球温暖化問題を捉えているからだと思う。私も1993年頃、アメリカの大学院で環境問題を勉強していたとき、排出権取引によって問題は解決されるだろうという講義を受けていた。なかなかアメリカは市場経済を手放せないのである。逆にドイツとかだと、そもそも市場経済をさほど信用していない。未だに古風な商店法(日曜は店を開けてはいけないとかを規定している法律)が存在するし、不必要な競争は嫌われる。それはそれで、消費者にとっては不便だったりするが、環境には優しく、社会の公平性は保たれる。長期的にはサステイナブルだなと思うし、慣れればそれほど不便でもない。

とはいえ、確かに排出権取引とかCDMとかに精を出し、地球温暖化を原発促進の口実にしている以上は、問題は解決していないし、そのうち、アメリカと一緒にEUに糾弾される日も来るかも知れない。なんとなく、それをEUは狙っているのではないかと思わずにはいられない。イソップ寓話の「ありとキリギリス」ではないが、10年後ぐらいには今のままだと相当、国際政治的にはEUにやられるかもしれない。アメリカはEUとかを無視して、嫌われ者としても勝手気ままにやれるだろうが、日本はそうもいかないであろう。石油が枯渇して、盛者必衰を地で行くであろうアラブ諸国と同様に、近いうちに国際舞台の隅に追いやられるかもしれない。それは、日本人としてはつまらないけれど、まあ今のままでいい気になっているのなら、そのような状況に追いやられても致し方ないのかもしれない。

あと、EUのこの脱化石エネルギーへの取り組みは何もCOP(気候変動枠組条約締約国会議)が開始された1990年代に端を発した訳ではないことを指摘しておきたい。1973年の石油ショック、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故などを契機として連綿と続けられてきたのである。そして、その日々積み重ねられてきた歩みが、徐々に我が国との差を広げつつあるのが現在の状況であると考えられる。我々は1960年代の公害問題を乗り越え、太陽光発電も世界一の時代があったのに、油断をしていたら抜かれまくっている。技術もあるだけに、もったいないと思わずにはいられない。技術があるが知恵がないのだ。金で解決することばかり考えている、馬鹿なボンボンのようなことばかりしていても軽蔑されるだけである。

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