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ドイツ人はどうもしっかりと主張するみたいだ [ドイツ便り]

ドイツでは自動車を持たずに公共交通で移動している。必然的によく鉄道に乗る。ドイツの鉄道では、乗客が結構うるさいが周りは全然、文句を言わなくて我慢強いみたいなことを以前、このブログでも書いたことがあったが、それほど我慢強くない人もいることが分かった。ドルトモントから急行列車でデュッセルドルフに向かっていた時のことだ。二人のパンクっぽい若者が相当、大きな声で話をしていた。私もなんかうるさいなあ、とは思っていたが、もうドイツの公共交通機関内での騒音に慣れてきたので、それほど気にはならなかった。すると、隣に座っていた若い女性が、「あんたらもう少し静かにしゃべれないの」みたいなことを言ったのである。ほう、新しい展開だ!とちょっとワクワクとする。すると、注意をされた方の若者は、「ここはドイツだ。話す権利がある」みたいなことを言い返した。女性も一歩も怯まずに、「その考えはおかしいんじゃないの」と言い返し、なんか侃々諤々と議論をし始めた。それは、それでよりうるさくなったとも言えるが、結構、私は感心した。その話が、どういう点で落ち着いたのかは私のドイツ語力ではまったく不明ではあったのだが、男性達は静かになった。この女性が注意をしてくれたお陰で、他の乗客も平和を得られたのである。

また、最近でも音を出してゲームをしていた子供達を注意するおじさんを見かけた。子供達は従っていた。私がドイツに来た当初に比べて、そこらへんの印象は変わりつつある。納得できないことは納得できない、と主張するような文化がこの国には流れている。多くの場合は、それでも「触らぬ神に祟りなし」という感じではあるが、そうでない事例も見られて、特に、若い女性がちょっと不良っぽい若者にちゃんと意見が出来るようなところは素晴らしいと感心したのである。

日本では車内とかでちょっと注意をすると、喧嘩をふっかけられたかと思って、逆ギレしたり、場合によってはその人を殴ったり、暴行したりする人さえいる。殺人にまで至った事件も一つや二つではない。JR西日本内の車内でどうどうと同乗の見知らぬ女性を強姦した事件もあったが、その時も、他の同乗客は怖くて見て見ぬふりをしていた。ドイツでもそういう異常な事態の時に、人々がどのように対応するかとかは、私は憶測でしか言えないが、もうちょっと責任をもって対応するような気がしないでもない。車内には、たまにネオナチのプロパガンダのシールが貼られたりする。そういうシールをおじさんとかが一生懸命、剥がそうとするのを見たりすると、この国の良心を知るのである。もちろん、一方でこのようなネオナチのシールを貼ったりしている人達がいる訳なので一般化する気持ちは露もないが、結構、この国の人達は信頼できるんじゃないか、という気持ちになったりする。

日本という国は結構、素晴らしい人達によって運営されている国なのではないかと思う。もちろん、麻生首相を始めとした政治家の顔を思い浮かべると、そういう気持ちは吹っ飛ぶのだが、政治家とかではない普通の市井の人達は真面目で優秀だと思うのである。しかし、全般的に大きな絵を描けずに、小市民的な利権を最優先するかのような生き方を志向する。これは、私もいざという時には、そのように振る舞う小市民的人間なので、自分のことを棚に上げていうことを許してもらいたいのだが、その自己の小さな利益のために全体と合わせるような行動指針は、時には大きく社会を歪めてしまう。黒澤明の『七人の侍』での農民達のような行動指針である。最後まで、自分は戦わない。自分の手は汚さない。しかし、どうにか状況を変えたいと願うような行動指針である。ドイツ人がそういう点で日本人より優れているというようなことはまったく指摘できないであろう。ただし、ナチスという人類史上、極めて恥ずべき組織を拡大させることに寄与してしまったという後悔と反省、そしてキリスト教的精神、法律を遵守する社会的土壌が、時折、首をもたげて、社会を是正させる方に働くというフィードバックが機能しているように思われる。逆に日本は、第二次世界大戦をしっかりと捉え直し、総括することをせずに、そのまま来てしまったので、戦後60年以上も経ったのに中国に反日運動をさせる機会を与えてしまっている。ドイツ人の同僚などとナチスの話をすると、彼らが非常に恥じているというか引け目に感じていることが分かる。しかし、その対応をしっかりとしているために、隣国にもそれなりには理解されているような印象を受ける。中国が日本にするようなスタイルで隣国が反独運動をしたら、そのような運動をした方が非難をされるぐらいの理解は得られていると思う。

車内での対応から、随分と話が飛んでしまったが、このしっかりとおかしいと思ったら自分の意見を言って、相手の理解を求めるというような社会環境はいいと思う。まだ表層的な整理しかできていないが、この点はドイツから日本が学べることではないかと思う。多くの日本人が賞賛する環境政策や都市政策の背景には、このドイツの社会環境があるように思われるのである。

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