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ドイツでは外国人が健康保険に入るのは大変だ [ドイツ便り]

 ドイツで滞在するためにいろいろと手続きをしている訳であるが、結構、面倒臭いのが健康保険に加入することであった。日本の健康保険に入っているので出来れば入らないで済ませたいぐらいなのだが、日本の健康保険だとカバーされる範囲と割合が極めて限定されているのと長期滞在ビザで健康保険に入っていることが条件なので(これは日本の健康保険に入っていることで許可されるかもしれない)、そして何より、子供達はやはり現地の保険に入っている方が何かといいだろうと考え入ることにしたのである。
 ドイツの健康保険は、公的な保険と民間保険とがある。公的な保険にはAOKとか雇用先が入っている勤労者保険などがある。民間保険に比べて遙かに価格がリーズナブルである。ということでAOKに入ろうとしたら断られた。長期滞在ビザを取得するためには健康保険に入らなくてはならないのに、公的な保険は外国人が入ることを断っているのである。しょうがないので民間保険に入ることにする。民間保険と公的保険の違いは、どうも知人のドイツ人達の説明によると、入院すると花束が贈られるということと、手術とかをする場合に外科部長がやってくれるということらしい。え!そんなの全然、有り難くないんですけど。そして、その保険料は年間で一人当たり20万円はかかるらしい。20万円払うということは、既に何かしらの保険に代わって払ってもらいたいくらいの負担であると思う高さである。とはいえ、ビザを取るためには入らなくてはならない。困惑していたのだが、何日か経つと、ドイツの友人が民間保険の国内旅行保険に入ればいいとの提案をしてくれた。これだと一人当たり年間6万円程度の負担で済む。年間6万円というのも結構な高額であるが背に腹は代えられない。これに入ることとする。ドルトモントのアリアンズ保険に入る手続きを取ることとする。友人に事務所に行くのに付き合ってもらう。なんと木曜であるにも関わらず、昼の1時で事務所を閉めるのでそれまでに来てくれという。何という営業精神の無さ!しかし、一人当たり国内旅行保険で年間6万円、通常の保険で20万円もぶんどっていれば、営業をろくにしなくても食っていけるのだろう。私なんかもビザのことがなければ絶対入らないのに、まあ要するにビザ取得代で彼らに高い保険料を支払っているようなものだ。ドイツ社会のこういうマイナスの歪みによって、外国人は高い負担を負わせられているのだ。まあ、好き勝手にドイツに来ているので文句は言えないのだが。
 しかし、こういうマイナスの歪みみたいなものはドイツの社会システムではあちらこちらに存在しているらしく、私の大学の同僚達は「カフカ現象だ」と言っている。私の同僚にチェコの国籍の助手がいるのだが、彼はドイツで就労するためには特に許可書は必要としないのだが、許可書を必要としないことを証明する書類を提出しろと大学側に言われたらしい。そして、就労するための許可書を取得する方が、許可証を必要としないことを証明する書類を取得するより簡単らしい。まさに「カフカ」的だ。カフカは役所(当時はプラハもオーストリア=ハンガリー帝国にあった)で働いていたことがあったが、そこでの板挟み攻撃によって、不条理な小説を書くきっかけになったかもしれない。まあ、彼は役所では非常に優秀で出世もしていたが。
 何はともあれ、AをするためにはBをしなくてはならないが、BをするためにはAをしなくてはらならない、といった発狂するようなループ状況にドイツではどうも多く巡り会うようだ。エクセルでも循環計算は拒否するが、そのようなものだ。以前、ブログで書いたシティ・バンクでの銀行口座開設拒否事件もどうもそういうループの一つだったらしい。すなわち、シティ・バンクは私の長期ビザのスタンプがパスポートに押されてないので口座開設を拒絶したらしいのだが、銀行で口座が開設されないと保険に入ることができず、保険に入らないと長期ビザは取得できないのである。まあ、幸いにしてドイチェ・バンクが口座を開設してくれたので問題はなかったのであるが、日本的な論理的な世界で生きていたものにとっては、気が狂いそうな状況に陥る場合が少なくない。コンピューターを壊すにはうってつけの課題であろう。まあ、これをキレネンコにならずに、乗り切れられるようになれば私もドイツで生活を無難にこなせるのであろう。とはいえ、小学生の頃からドイツで生活経験のある同僚のチェコ人も、さすがに上述した件では切れていた。ドイツ、恐るべしである。

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