映画『アマデウス』 [映画批評]
モーツァルトという希代の天才を、サリエリという才能はあるが凡庸の範疇を超えられない人の目を通して描く、素晴らしい映像作品である。元ネタはミュージカルであるが、18世紀を再現させるには、やはり映画の方がメディアとしては優れているのではないか。舞台となったプラハの町並みや、時代考証が映画という点では相当、誠実であって素晴らしい。とはいえ、実際のオペラは是非ともドイツ語でやってもらいたかった。モーツァルトは、ゲーテなどど同様に、ドイツ語圏という当時、文化後進国と思われていたところが生み出した天才であり、その点がサリエリというイタリア人との対比で非常に興味深いからである。映画のすさまじいポテンシャルを改めて認識させてくれる傑作だと思われる。