谷崎潤一郎の『陰影礼賛』 [書評]
世にエッセイ数多あれど、この谷崎潤一郎が昭和8年に記した『陰影礼賛』ほど、文化、民族そして美に対しての深い洞察がうかがえるものは少ないであろう。その見識の高さは国際レベルでも超一級であり、人類の宝である。能の妖艶さや羊羹の黒さは、明るくない環境の中で映えるという指摘、扇風機が和室に合わないといった考察など、彼の物事を捉える第一級の分析力、考察力の高さ、そして造詣の深さには感服するしかない。日本人は勿論のこと、日本に関心をもつ外国人にも是非とも読んでもらいたい。文化の相対性、価値の多様性が理解できる。
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