平松昭子の『不器用なシモキターゼ』 [書評]
平松昭子の漫画は毒が充満している。しかし、この毒がたばこのニコチンやアルコールのように、どこか心を軽くするような効果もあるから不思議だ。こんな不器用で性格も素直でない女性の子育て奮闘記は、それなりに読み応えがある。何しろ、開けっぴろげである。普通、ここまで晒さないだろうということまで晒している。まるで中村うさぎのようだ。ちなみに、私は平松昭子と話をしたことがある。相当の美人で、ちょっと直視できないほどである。しかし、その笑顔の裏にはなんか刃物が隠されているような殺気をも漂わせていた。私が今度、バンドでもやりましょうか、と呑気でいい加減なことを宣った時に特に強く発したような気がする。この本を読んで、私が感じた殺気は気のせいではないことを確認した。実際、スタジオに入ったりしたら、ハゲデブのギター下手中年親爺として描かれてしまったかもしれない。いやはや恐ろしい。とはいえ、この本を読んで、つくづく真剣に生きている人は立派だなと思わされる。私のような誤魔化し人生を歩んでいるものからすると、彼女のようにストレートで生きている人はただただ眩しく見えてしまう。
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