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フランスの村は結構、美しく驚いた [都市デザイン]

フランスの村は結構、美しく驚いた。それは地域にもよるのだろうが、今回めぐったブルゴーニュ、ローヌ地方の村々だとイタリア的な雰囲気を湛えている。しかし、イタリア的ではあるが、気候の違いを反映させてか、石造りの中にもどこか緑の要素が濃い。イタリア的なものとドイツ的なものの中間といった印象を受ける。そして、イタリアほど個性が強烈ではない。かといってドイツほど整然とはしていない。どこか中途半端ではあるが、だからといって魅力がない訳ではまったくなく、人を惹きつける力を放っている。

ただし残念なのは生活感があまり感じられなかったことである。状況をしっかりと把握しているわけではまったくないのでいい加減な考察ではあるが、結構、小さな町のそばにもカルフールが出店していた。そのせいだろうか、町の商店街は結構、衰退していた。唯一、頑張れているのはパン屋や肉屋といった食料品店と美容院、そしてカフェやレストランであるなと観察した。つまり、雑貨系の小売り等はほとんど成立していないのではないかと思われた。これによって、何か寂れた印象を受けてしまう。コルマール程度の人口集積があれば問題がないのだが、人口5000人以下くらいだと寂れた感が強い。

マルロー法があり街並みなどはしっかりと保全できているが、ドイツと比べるしっかりと中心市街地を保全する施策が行き届いていない村や町も結構、多くあるのではないかとも察せられた。これは予算が不足していることと、ドイツと違って戦災をあまり受けていないフランス(何しろ破壊者ナポレオンを生んだ国ですから)は、歴史的な資産を有する村や町が多すぎて、素晴らしい街並みを有するところが多すぎるので、そのギャップが目立つということも要因としてあるのだろう。まあ、この点に関しては別に性急に対応せずともじっくりと対応していっても問題がないとは思うが、気になるのは人口の流出が進んでいるのではないかということである。いわゆる過疎化である。イタリアの山岳集落のように、フランスにおいても歴史のある美しい村を去る人が増えていると思われる。特に、大型店の規制がドイツなどに比べてゆるゆるの状況下においては、そのような集落でサービス産業を維持させることは難しい。結果、自動車に依存した生活を強いられ、集落を維持させてきた生活環境は著しく劣化していく。この劣化のスピードが速いと、村を修復する前に村が消滅といった事態も生じるかもしれない。この点は気になる。

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(スミュール・アン・ノーソワの美しい風景)

今回の旅で、特に気に入ったのはスミュール・アン・ノーソワという村であった。人口は約5千人ほどである。二つの三角錐の塔を抱く円柱の塔がアルマンソン川の絶壁にそそり立つ姿が印象的な村である。この村も随分と、建築は痛んでおり、特に塔の一つに入った亀裂が気になったが、しっかりと修復すれば元の資源は素晴らしいだけに、ちょっと努力しただけで状況はすぐ改善されるであろう。この点は羨ましい。絶世の美人が、よれよれの洋服を着てすっぴんで過ごしているようなものだ。ちょっと頑張るだけで見違えるようになるであろう。こういう村を訪れるとフランスの底力を感じざるを得ない。とはいえ、この村もレストランと幾つかの生鮮食料品店とパン屋を除くと、元気がなく、多くの割合の店舗がシャッターを下ろしていた。底力があっても、グローバリゼーションに的確に対応しないと、このような美しい村もゴーストタウンになってしまうかもしれない。人口5000人というのは、微妙な分水嶺的な数字であると感じる。何百年の歴史を誇るであろう村だろうが、ある意味で村が設立されて以来の最大の危機に直面しているのかもしれない。

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