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『グローバル化時代の都市』 [書評]

岩波講座の「都市の再生を考える」シリーズは、各巻8本の論文というか講座から構成されており、各巻とも8本のうち6本ぐらいは極めて優れていて勉強になり、なかなか評価している。しかし、この『グローバル化時代の都市』は全般的にあまり感心できない。特にサスキア・サッセンの論文は酷いというか読むに値しない。これは、サッセンの論文の内容が悪いのではおそらくなく、日本語訳が酷すぎるからである。寺田篤生氏が翻訳しているのだが、おそらく英語をしっかりと理解できていないのではないか。それとも日本語の文章力がないのか。どちらかは不明であるが、サッセンの論文を掲載するということで、あの岩波書店も舞い上がったのか、第一章に持ってきている。読者からすると、いきなりこの酷い日本語を読まされて苦痛以外の何ものでもない。特に第二章の岡田知弘氏の論文が内容、文章ともに優れているのとは対照的である。せめて第八章に持ってくればいいのに。サッセンは優れた思索家であるとは思うが、このシリーズの執筆群も同じ土俵にのぼれるレベルにある人が多いと思う。岩波書店ぐらいは、そういった見識を示し同レベルに取り扱って欲しかったし、もし翻訳して出すのであれば、もう少し翻訳能力が高い人に依頼するか、出版社の方でもしっかりとチェックをすべきであったと思う。私も2冊ほど翻訳書を出しているので、あまり批判をすると自分に返ってくるとは思うが、それにしても、この格調高い本シリーズに大きな汚点を残した章であると思う。これは大変残念なことであるなと個人的には思う。

グローバル化時代の都市 (岩波講座 都市の再生を考える)

グローバル化時代の都市 (岩波講座 都市の再生を考える)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2005/10/28
  • メディア: 単行本



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