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『森なしには生きられない − ヨーロッパ・自然美とエコロジーの文化史』 [書評]

『森なしには生きられない − ヨーロッパ・自然美とエコロジーの文化史』を読む。ヨーロッパと書かれているが、基本的にはドイツにおける自然美とエコロジーの文化史について書かれている。8本の論文と訳者による解説が書かれているが、訳者の解説が短いが一番読み応えがある。8本の論文は比較的、興味深いが、1本だけ他に比べてガクッと落ちる論文が含まれている。7章の論文がそれだ。全般的にこういう編者の知り合いがそれぞれ各章を担当するタイプの本は、その出来不出来が激しい場合が少なくなく、果たして1冊の本として出版する価値があるのかどうか疑わしいものも多いが、これはまさに通底するコンセプトが見えない本の例である。優れた論文もあるので、残念だ。デパートの福袋は、売れる商品と売れない商品をセットにして、売れない商品を処分するわけだが、こういう本において、売れないというかつまらないというか、価値のない論文を優れた論文とセットにして売る必要性はない。なぜなら、論文等を在庫処分する必要性は出版社にはないからである。もっと、しっかりと出版社や編者は本のコンセプトを考えてもらいたいと強く思わせる著書であった。ちなみに翻訳は結構、優れていて読みやすかった。訳者は解説文も優れていて評価したい。しかし、この訳者の能力を持ってしても7章はまったく意味不明に近く、よく分からなかった。これは訳者の問題ではなく、そもそもの原文が酷いではないのかと推察する。

森なしには生きられない―ヨーロッパ・自然美とエコロジーの文化史

森なしには生きられない―ヨーロッパ・自然美とエコロジーの文化史

  • 作者: ヨースト ヘルマント
  • 出版社/メーカー: 築地書館
  • 発売日: 1999/06
  • メディア: 単行本



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