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カリフォルニアはセントラル・バレーの農家を訪れる [サステイナブルな問題]

 カリフォルニアのセントラル・バレーの農家を三軒ほど訪れた。デービスから西にいったプタ・クリークにある6ヘクタールの農地を持つ農家である。アメリカの農家としては極めて小規模である。しかし、これはここを管理しているマイク・マディソンさんが一人で農業を営んでいるからである。その代わり、小さいながらも145種の作物を育てている。これは、少ない種類の作物だけを育てていると、繁茂期と閑散期の時期の農場経営が困難になるためである。一人で経営するために、多様な農作物をつくるという戦略を採っている。基本的には花卉を中心として栽培している。これの代替作物としてマディソンさんが選んだのがオリーブである。オリーブは乾燥に強い。しかもオリーブ油として売れば、売る時期を農家側が決めることができる。花卉はその日に売らなくてはならないが、オリーブ油であれば売り時のタイミングを図ることができるのだ。そのためにマディソンさんは6万ドルを出資して、イタリアからオリーブ油を搾り取る機械を購入した。高い出資ではあるが、近所の農家に1トン400ドルで貸したりもしているそうだ。売り時のタイミングという点では、果実などはジャムにして保存するようにもしている。また花卉の収穫時は1月〜11月であるが、オリーブは12月である。オリーブにすることで農作業の平準化を意識している。
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(マディソンさんの農場は極めて多様な作物が植えられている)

 マディソンさんはまた化学肥料を使わずに、コンポストを使っている。最近、サンフランシスコのレストランでは生ゴミはコンポスト化しなくてはならないという条例ができたので、サンフランシスコのレストランから購入している。1トン3ドルくらいと通常の化学肥料よりは安いが、蒔くのには手間がかかるそうだ。水源は、近くに小川が流れているので、そこからポンプで汲み取っている。この際に必要とするエネルギーは太陽光を用いているそうだ。興味深いのは殺虫剤を使わないこと。これは鳥やコウモリが食べてくれるので問題がないそうだ。問題となるのは、鼠などの齧歯類である。これらの天敵のフクロウにこれら鼠たちを捕食してもらうために、フクロウの鳥箱を設置している。フクロウは二日もすれば棲み着くそうである。今、マディソンさんのところには6羽はフクロウがいるそうだ。これらのフクロウ以外にも、敷地内に小川が流れているために、夜、きつねやコヨーテが水を飲みにここに訪れる。その行きか帰りに鼠を捕ってくれるそうだ。天敵による害虫そして害獣管理をしている。エコロジカルである。出来上がった農産物は、デービスのファーマーズ・マーケットで販売されている。お話を聞いた後に、マディソンさんの農場でつくられたカンタロープ・メロンやすいか、イチジク、プラムをいただく。美味しい。特にカンタロープ、メロンとプラムは相当の美味しさであった。
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(明治学院大学の学生達にコンポストの説明をしてくれるマイク・マディソンさん)

 マディソンさんの農場の次には、クレイグ・マクナマラさんの農場を訪れる。マクナマラさんはくるみを育てている。ここも殺虫剤を使わない。そのために蛾のメスのフェロモンに似た成分を出す装置を木につけている。このフェロモンを出すことで、蛾のオスは混乱して、受精の機会が減少する。ゼロにすることはできないが、殺虫剤を使わなくてもある程度の生産性を確保するぐらいの効果はあるようだ。いろいろと面白い試みを展開していることに感心する。
 その次は、ハワード・ビーマンさんの農場に行く。農場といってもビーマンさんは、高齢であるのと息子さんが農業を引き継がなかったので、ほとんどが休耕地となってしまっている。ビーマンさんは米を作っていた。これは、彼の農地は、水をしっかりと確保できたからである。彼の話で面白かったのはカリフォルニアの稲作では害虫の問題がないということである。雑草の問題があるので除草剤は使うのだが、殺虫剤は使う必要がないとのことである。イナゴやウンカはいないようである。ちょっと驚きだ。彼の農場は1.6キロ×2.4キロの広大なものであったが、採算ラインを越えるには小さすぎるとのことだ。この程度の大きさだと、とてもではないがトラクターなどの農機具は購入できないとのこと。アメリカでも小規模農業の経営が難しいのであるから、日本ではなおさら難しいのかもしれない、とビーマンさんの話を聞きながら、しかしより小さな農地でうまくやっているマディソンさんのことを思い出す。マディソンさんのように工夫をすれば、高価な農機具を購入しなくても農業をやっていけるのではないだろうか。いろいろと考えさせられるセントラル・バレーの農家めぐりであった。


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