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ジェイン・ジェイコブスーアーバン・ビジョナリーを読む [都市デザイン]

アリス・スパーバーグ・アレシウーによる「ジェイン・ジェイコブスーアーバン・ビジョナリー」を読む。ジェイン・ジェイコブスの評伝である。全然、期待せずにとりあえず購入して読み始めたのだが、これが非常に内容が濃い素晴らしいものであった。作者はジャーナリストであるのだが、関係者や文献を丹念に取材しただけでなく、ジェイン・ジェイコブスが活躍した時代背景をしっかりと整理しており、アメリカ人でない私のような人間が読んでも分かりやすい。ジェイコブスに対する批判もしっかりと紹介されており、ジェイコブス賛歌といったものではないことが、逆にジェイコブスの偉大さを読者に分からせてくれる。

幾つか面白い発見があった。
1)まず、ルイス・マンフォードとジェイコブスの関係であったが、マンフォードはジェイコブスを高く評価するのだが、ジェイコブスがマンフォードを扱き下ろしたので、その後、マンフォードはジェイコブスを攻撃するようになったそうだ。とはいえ、ローワー・マンハッタンに高速道路がつくられそうな時、ジェイコブスの依頼でマンフォードは、その計画の杜撰さ、問題点を整理した文章を新聞に投稿する。
2)ジェイコブスは高卒であり、しかも高校では相当の問題児であったということだ。イタズラ好きで、老いた後でも、若者向けの講演で「一日に一回はルールを破りなさい」などと言っていたことである。
3)ベトナム戦争に反対してトロントに移民として行った後は、トロントではほとんどスターであったということである。逆にアメリカではその存在感は薄れていったということだ。私のように都市計画をアメリカで勉強した人間にとっては、いつでもジェイコブスの存在は大きかったのだが、一般的にはその認知度は随分とアメリカでは低下したようである。

改めてジェイコブスの凄さが分かる。そして、ジェイコブスの知恵を今、日本の都市は必要としている。ジェイコブスの著作を読むよりも先に、その著作が書かれた時代背景までしっかりと整理された本書を、日本の都市行政、開発プロジェクト従事者には是非とも読んでもらいたい。名著である。これを読んだ出版社の人、私でよければ訳しますよ。




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