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チャタヌーガに研修に来るイオンの社員 [サステイナブルな問題]

チャタヌーガに来ている。チャタヌーガはテネシー州にある都市で、テネシー川のほとりにある同州四番目の人口15万程度の都市である。市民参加型の都市づくりで、リバーフロントの再生、ダウンタウンの再生に成功した都市である。1998年に取材で訪れたことがあり、今度新著を出すのだが、その中でチャタヌーガも紹介するので、データや統計のアップデートのために訪問したのだが、あまりにも状況が変わっており、てんやわんやしている。チャタヌーガの実行力の凄まじさを改めて思い知った次第である。チャタヌーガは私も二回ほど記事としてまとめたことがあるが、1990年代後半にNHKの番組を含めて、随分と日本に紹介された。その後、あまり紹介等されていなかったのだが、チャタヌーガが本当に変貌したのは、1990年代ではなくて2000年代であったことを知った。驚愕である。これは、2001年から市長を務めたクローガー市の手腕に負うところが大きい。というのは、どうも彼はせっかちでどんどんと先に進みたがある人だったからだそうだ。

まあ、我が国の自治体経営をするうえでも、いろいろと参考になる都市であり、しっかりとその都市の成功物語をまとめたいと思っているのだが、なんとこのチャタヌーガにイオンの社員が年に二回、研修旅行に来ることを知った。一回につき25名程度が訪れるのだそうだが、どうも営業成績に優れた社員に対してのご褒美研修旅行のようだ。イオンのコンサルタントをしている人が、チャタヌーガからは多くを学べるので是非とも見てこいとどうもアドバイスしているようである。この事実に私は腰をぬかして驚いた。なぜなら、日本においてチャタヌーガのような人口15万人前後の都市をことごとく潰しているのはイオンだからである。潰している張本人が、チャタヌーガのような都心再生に頑張っている都市を見に来るということはどういうことなのか。チャタヌーガは四方を山で囲まれている盆地に位置するために、基本的にコンパクトな都市となっている。土地も少ない。したがって、ウォルマートやイオンのような大規模ショッピングセンターの立地は比較的難しい。とはいえ、ハミルトン・プレースというテネシー州でも最大規模のショッピングセンターが1987年にでき、「ダウンタウンの小売業はほとんど壊滅した」(1982年から同市の都市公社で働いているジム・ボーエン氏の発言)。それから、ダウンタウンの再生に多額の資金を投入し、優れた都市デザインを実践し、ようやく多少の店舗(といってもほとんどがレストランで、ボーエン氏は小売りに来て貰えるよう奮闘している)が戻ってきて、少なくとも観光客的には多少魅力が出てきたような状況である。

イオンの社員がこういうところを訪れているということは、イオンやウォルマートが多くの中小都市のダウンタウンを壊滅しているという因果関係をしっかりと理解していないのか、まだチャタヌーガのように頑張っている都市があるから、徹底的にやっつけるように研究しろと発破をかけているのか、私には分からないが、もし前者であれば大変な問題である。というか、コンサルタントは何を考えているのか。まさか、イオンが頑張ると日本の中小都市もチャタヌーガのように再生できると考えているのではあるまいな。しかし、そんな馬鹿なコンサルタントがイオンをクライアントにしていることも有り得ないので、やはり、これはチャタヌーガのように不死鳥のように復活する都市もあるので、息の根を止めるためには徹底的に頑張らないと駄目だぞ、と社員を鼓舞させるためにここに来させているのだろう。群馬県太田市のように、東日本最大規模の敷地面積を誇るイオンをつくり、都心には風俗街しか残されないような状況をどんどんとつくることに邁進しているイオンにとって、チャタヌーガのように都心再生をしてしまった都市はやはり憎き敵なのであろうか。恐るべしイオン。しかし、よりチャタヌーガという敵を勉強するためにも、私の新著を社員が買ってくれると有難い。イオンの社員が全員、買ってくれたら相当の売上げになるだろう。イオンの社員研修の必読本にしてくれないかな。

というか、イオンはもしかして日本をアメリカにしようと考えているのだろうか??



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