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ゲーリッツ [都市デザイン]

ゲーリッツを訪れる。旧東ドイツの都市でポーランドとの国境沿いにある。Görlitzと綴り、ウムラウトがあり日本人には発音が厄介なのだが、私の耳にはどうしてもガーリッツと聞こえて、ゲーリッツとは聞こえにくい。ゴーリッツとは多少、聞こえるが、日本ではゲーリッツと表記されているようなのでそう記す。前置きが長くなったが、このゲーリッツは多くのドイツ人が異口同音に素晴らしく美しい都市であると褒め称えていたので、是非とも訪れたいと前から考えていた。実際は、実は5年前に訪れたことがある。ドレスデンに宿泊していたのだが、コットブスに行き、次いでにゲーリッツにまで足を伸ばした。とはいえ、夕方に駅前中心を見ただけである。ゲーリッツのポイントは市役所周辺の歴史地区であり、駅前は全然面白くないので、その素晴らしさは全く今回の旅行まで知ることはなかった。

 ゲーリッツの素晴らしさは歴史建造物の多さにある。ドイツの都市としてはめずらしく、このゲーリッツは大戦による爆撃を被らなかった。しかも旧東ドイツにあり、ポーランドの国境という辺境に位置していたため、開発の手もここまでは届かず、ほとんど手つかずのまま今日に至っている。したがって歴史建造物が多く現存する。ドイツの都市観光の目玉でもあるハイデルベルグよりも、ここゲーリッツは多くの歴史建造物を擁する。二つの大戦でやられにやられたドイツでは、歴史建造物や伝統的街並みはドイツの文化と誇りを現在に継承する貴重な資源である。ゲーリッツをドイツの人々が強い思い入れを持つことは、そのような背景を理解すると納得できる。
 さて、実際のゲーリッツがどの程度素晴らしいのか。これは似たような古都であるプラハに比べると、その集積の違いから、やはりプラハの方が遥かに優れている。それと都市が立地するランドスケープの迫力が弱い。これは、プラハやブダペストといった都市は勿論のこと、ハイデルベルグやフライブルグ、ドレスデンといったドイツの他の都市に比べても見劣りする。街が第二次世界大戦で壊滅的な被害を被ったドレスデンでさえ、最近の修復で観光都市としてはゲーリッツよりは人気を博するであろう。
 とすると、ゲーリッツはやはり現存する伝統的街並や歴史建造物を観光資源として再編集することが必要となるであろう。街の中心にある素晴らしい広場が、駐車場で使われているなど、せっかくの素晴らしい空間が現在では台無しにされている。よりその素晴らしさを理解できるよう、その展示、解説に力を入れることが求められる。そして、それらを都市デザインの力でやることが望ましい。
 おそらくゲーリッツはプラハやドレスデンのような観光都市にはなれない。それだけのポテンシャルは有していない。しかし、東ドイツに小さな宝石のようにキラリと輝く、プラハやドレスデンを拠点にちょっと立ち寄る観光地として開発していくことは可能である。ゲーリッツのような都市はドイツには少ない。その希少性を活かして、ドイツの伝統、文化、誇りを来訪者に理解してもらう博物館のような都市としての役割を果たすことが、この都市にとっては望ましいのではないだろうか。


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