SSブログ

マカッサルで道路のことを考えてみる [都市デザイン]

マカッサルにて自動車のことを考える、などというブログを書いてしまったせいかもしれない。今、マカッサルのホテルから空港へ行く道の渋滞につかまってしまい、身動きがまったく取れない状況にある。片道一車線であるのだが、その車線が動かなくなると、皆、平気で側道や対抗車線を走り始める。当然、いつまでも側道や対向車線を走り続けられる訳もなく、また本車線に戻らなくてはならず、結局渋滞をさらに悪化させている。しかし、対向車線の側道を走っていたり、側道のさらに外側を走っていたりするのをみると、かえってその出鱈目さ加減に呆れを通り越して笑いを誘ってしまう。飛行機に乗り遅れそうな状態であるにも関わらず。しかし、側道の外側を運転しているペテペテの運転手とか側道に割り込む時に笑っているんだよねえ。日本じゃ、割り込まれる側の車と相当のバトルが起きるような状況なのに、いやはや、本当この国は寛容だよね。

さて、このような渋滞でにっちもさっちもいかない状況に遭遇すると、人々は何をしようと考えるのであろうか。道路の拡幅ですね。しかし、この渋滞のひどさは、道路を1車線増やした程度では解消できない。しかも、道路を広げると、そこの土地の利用を高度化させようとする動きが起きるので、交通需要はより多く発生し、結局渋滞は瞬間的には解消されても、持続的には解消できない。日本の地方都市は、都心の渋滞を解消しようとバイパスをいっぱい整備したのだが、バイパスを立派につくりすぎたこと、そしてバイパスの沿道開発を一生懸命やったために、中心市街地が廃れ、バイパスが都心になってしまった。まあ、都心を衰退させたために都心の道路渋滞は緩和されたかもしれないが、土地利用と交通計画をしっかりと考えられなかったために、多くの地方都市はこのような悲劇な都市空洞化に陥っている。なぜ、悲劇かというと、多くの都市が今、衰退した都心を再生させようとしているから。なんだ確信犯じゃなかったのか、というのが私の率直な感想である。

ちょっと話がそれたが、まあ道路の拡幅は瞬間的に効果があっても、長期的にはまた渋滞状況に陥ってしまい、根本的な解決にはならないというのは、自動車好きのアメリカ人でさえ気付いている。アンソニー・ダウンズの「Stuck in Traffic」は、道路を造り続けても渋滞解消には無駄なんだ、ということが分かりやすく説明されている。それじゃ、何をすればいいのか、というと公共交通を整備すればいいのである。しかも、自動車と混在されないような公共交通を整備することが肝要である。鉄道がいいと思うけど、専用レーンを走るバスでもいい。これは安上がりだし、渋滞を悪化させるというかもしれないが、渋滞が悪化すればするほどバスの相対的交通サービスとしての価値が上がるので人々が利用するようになり、渋滞は最適な状態に落ち着くでしょう。

マカッサルに話を戻す。まあ、渋滞が解消されたら運転手が飛ばす、飛ばす。乱暴な運転をするのはうちの運転手だけじゃなく、対向車が先方から走ってきたりするし、本当滅茶苦茶である。しかし、本当、これだけ公共交通が必要な状況であるにも関わらず、つくれないマカッサルって何なのだろう。どうして、これだけの都市規模があって、さらに郊外へ開発が進んでいき、道路の渋滞が深刻化していく中で、公共交通が必要であるという見識を持った人が出てこないのであろうか。というか、アドバイサー的な私の位置づけもあまり真剣に取り入られないのは何故だろうか。なんか、大学や役所で話をしても、祭り上げられてはいるが、話の内容はその時だけの戯言のようにしか受け入れられていないような気がするのはどうしてだろうか。

私がもといた会社では、結構出来ると評判の後輩は、道路の特定財源を一般財源化させないために、制度等を猛勉強しているそうだ。私がもといた会社で生き残ろうとしたら、3つの悪魔に魂を売らなくてはならない。原子力の悪魔、戦争の悪魔、そして道路の悪魔である。これらの悪魔を業務とする人達はお金をとてつもなく持っており、彼らを顧客とすれば出世競争に勝ち抜くことができる。この後輩は会社的にはポイントを見事についている。確かに特定財源が必要であるという結論の委託研究だったら、ばしばしとお金がつくだろう。しかし、どうみても日本でこれ以上の道路は必要ないでしょう。よしんば、道路が必要でも他にもっと必要な公共事業、公共サービスが山積みである。少なくとも教育費の高さをヨーロッパ並みに安くできないのか!!そういえば、出来る後輩は子供がいなかったなあ。まあ、ともかく豪華で高規格の道路をつくっているような財布の状況では我が国はないのである。年間400万円しか収入がない世帯で、6000万円のマンションが欲しいからといって、また多少は必要だからといって買わないのと同じ論理である。買ったら、即破産することが目に見えているでしょう。しかし、マカッサルだけでなく、日本でも道路ばかりがつくられて、我々は将来の懐だけでなく、ヒューマン・スケールの都心の衰退化が道路の整備によって促進され、貴重な都市空間を失っていくのである。

運転手が猛スピードで飛ばしたおかげでどうにか飛行機の時間には間に合った。南スラウェシの美しい山々が飛行場の窓から見える。まるでハワイのようである。しかし、ハワイのようなのはランドスケープだけであり、道路は排ガスにまみれ、路傍にはごみが散乱している。本当に、いろいろと考えさせられるマカッサルである。


nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0