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ハノイの旧市街地を訪れる [都市デザイン]

ハノイに来ている。というか、本当の用事は翌日にダナンである学会の参加なのだが、その前にハノイの都市計画を調べに一日滞在できるようにスケジュールをセッティングしたのである。日本の都市計画学会を通じて、ベトナムの都市計画学会にアポの依頼をしたのだが、ガン無視された。私は結構、司会等の仕事もするのだが、腹が立ったのでドタキャンをしたいくらいの気分である(いや、出来ませんと返事をくれるだけでもいいのだが)。とはいえ、日程は抑えてしまったので、とりあえず旧市街地に行く。ハノイは初めてだ。ホーチミンには二回ほど行ったことがあるので、そことの違いとかも感じられるかなと期待もしていた。
 さて、ハノイはオートバイに溢れていた。そして自動車も多い。正直言って、カオス状態である。これはホーチミンでも経験済みだが、もう20年以上も経っているのだが、相変わらずのオートバイの氾濫状況にちょっとびびる。旧市街地は道路幅が狭く、立派な街路樹が都市の森のような状況をつくっており、とてもアーバニティに溢れている。とても空間的にはヒューマン・スケールで素晴らしい。しかし、歩くための空間がなく、歩くのに本当に一苦労する。歩道はあるのだが、歩道空間はお店の売り物が置かれていたり、カフェのイートインのための椅子や机が置いてあったりする。そして、それらが置かれていないところはほとんど隙間がないようにオートバイが置かれている。結果、車道を歩かなくてはならない。歩道が歩道として利用されていないのだ(一部、例外的に歩けるところもある)。せっかくのアーバニティ溢れる素晴らしいヒューマン・スケールの空間がまったく台無しだ。というか、台無しだけならいいが、いつオートバイや自動車にはねられるかもしれなく、命が危ない。基本、河のようにオートバイは常に流れているので、この狭い道を横断することが命がけになる。さらに、一方通行のような気もするのだが、自動車はともかくそれを無視するオートバイが多い。交差点には信号がないのだが、たまにある。信号もいわゆる日本の左折(こちらでは右折になる)はどうも信号を無視していいのか、またそもそもオートバイは信号無視も多いので、それほど役には立たないが、それでもあった方が安心する。信号が有り難いと思ったのは生まれて初めてかも知れない。
旧市街地は「ハノイ36通り」とも呼ばれている。ここは、ハノイに都がおかれていた11〜19世紀にかけて商業地区として栄え、空間的にも機能的にも今日まで伝えている。同じ職種の工房や店舗が通りごとに集まり、通りごとにその性格が異なっていて興味深い。例えば、トゥオックバック通りは金物、ハンティエック通りはブリキ製品、ランオン通りは漢方薬などである。集積の経済の効果を経験的にもしっかりと理解していたということだろうか。この地区は都市計画的にも、保存地域に指定されており、許可無く取り壊しや建替ができない。これが、個性的な街並みを維持できている大きな要因であろう。
空間的にも、その豊穣なアイデンティティの維持といった点からも素晴らしい場所であるにも関わらず、モビリティのコントロール、特に歩行者の動線をしっかりと確保できていないことで、その魅力が十二分に発揮できていない。これらハノイ36地区から自動車をほぼ撤退させ、オートバイが通れる道を限定し、そして、それ以外を歩行者空間地区にすれば、この地区は素晴らしい空間としてさらに魅力を発現するだろう。それこそ、コペンハーゲンのストロイエに双肩するような都市空間になれる(もしかしたら上回れる)ようなポテンシャルを有していると感じる。それだけに、現行の状況はとてももったいないと思う。

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<歩道はあるけど、そこはオートバイが駐輪されていたり、お店の延長の机や椅子で人々が食事をしたりして歩けない。結局、危険を冒しながら車道を歩かなくてはいけない>

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