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仕事を辞めたがる若者達 [サステイナブルな問題]

私も今の大学に奉職して10年以上が経つ。したがって、多くの学生が卒業して、社会に出て行くのを見てきた訳だが、最近もゼミ生でなかった卒業生が、話をしたいから会って欲しいと連絡をしてきた。こういう時は、ほとんど仕事への不平であり、そういう話は自分のゼミの先生にすればいいのだが、まあ、断るのも可哀想なので、ちょっと機会を設けて話を聞くと、やはり「仕事がつまらない」、「仕事を辞めたい」という内容であった。最近、30歳をもう過ぎた卒業生の動向を聞いたら、やはり「仕事がつまらないのでどうにか仕事を変えたい」と悩んでいたそうだ。この彼は、大手電機メーカーで、おもに法人の営業をしているのだが、仕事がワンパターンでつまらないそうである。こういうケースは多い。すなわち、自分が会社という組織においての一構成員であるという自覚を持てずに、あたかも仕事が自分を楽しませてくれる、自分を成長させてくれるはずであるという感覚で捉えていることに起因する問題である。仕事までも消費者意識丸出しで、くれくれタコラのようになってしまっている。この彼が、法人の営業をしているのは、おそらく、法人の営業ぐらいしか彼が出来る仕事がないからであろう。そのような事実になぜ、気づけないのであろうか。もし、本当に自分の能力が発揮されていない、そしてもらっている給料よりその能力が優れていると思っているのであれば、まあ転職市場にチャレンジしてもいいのではないか、と思われるのだが、こういう不平を言っている人に限って、なんかその置かれている立場にまったく同情できない自分がいる。

というか、私が学生の時から、ちょっといいものを持っているな、という学生は、例え、親に言われてコネでしょうがなく入った会社であっても、「結構、仕事は面白い」とポジティブに捉えていたりする。私は、金をもらっている以上、そうそう楽しい仕事がある筈はないとは思っている。仕事がそんなに楽しかったら、金をそれほど払われずにいても多くの人がやりたがるであろう。まあ、椎名林檎とかダルビッシュとかは自分が楽しいことをやっていても、お金をもらえるかもしれないが、それは特別な才能を持っている場合だけであろう。普通の仕事は、楽しくないからお金をもらえるのである。というか、自分にその価値がないので、お金をもらえる仕事がつまらない仕事しかない、とも言うことができるかもしれない。

まあ、そういう私ではあるが、実は今の仕事もそうだが、その前の会社勤めの時も、仕事を面白くないと思ったことはほとんどない。私は、前の会社でも委託研究という研究業務の仕事をしていたこともあり、研究することは結構、好きだったので仕事は内容的には全然、苦にならなかった。苦になるとしたら、嫌な上司とか嫌な同僚とか、社内の人間関係には苦労したり、嫌がらせを受けたりもしたが、まあ、仕事に関してはつまらないと思うことはなかった。営業ノルマはきつかったが、民間の研究職とかは自分のアイデアを売る仕事なので、周りというよりかは営業を取れないことは自分のせいであるという明瞭な因果関係があったので納得して仕事ができていた。確かに、管理職になって、管理の仕事をするのは嫌だったが、まあ、それはどの会社に入っても嫌なことであるから、そうそう会社に文句を言う筋合いのものではない。とはいえ、これが会社を辞めた大きな理由ではある。

大学の仕事は、まあ、嫌いではない研究を勝手に出来るし、研究費は以前に比べると大幅に少なくなったが、誰のためでもなく、自分のためにしているので、敵は自分の怠け心だけである。私は科研費を少額だがもらっているが、国民の税金で研究をさせてもらって、本当、有り難いことだと感謝している。あまり私の話に関心を持たない学生のために講義をするのは、ちょっと辛いかなと思う時もたまにあるが、全般的には楽しんでいる。会社時代は出版をすることにいろいろ規制が多く、私がいた頃は印税の95%が会社に帰属するなどのルールがあったが、今では私が印税の100%をもらえる。もちろん、私の本はあまり売れないので大した印税ではないが、95%取られたら、書く気も失せてしまう。

ということで仕事が嫌だと思ったことがないので、「仕事がつまらない」と私に相談に来る卒業生に何とアドバイスしていいかが分からない。しかし、確信しているのは、仕事の方でも、そんな人たちを「つまらなく」思っているということだ。「仕事がつまらない」と思う最大の理由は、自分がつまらないからなのではないか、と私は思う。少なくとも、自分が選んで入った会社であるので、その時点で自分にも問題があると自覚した方がいい。そうでなければ、仕事だけでなく、つまらない人生で終わることになると思う。

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