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「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか [書評]

著者は1984年生まれ。この本の刊行当時、若干、27歳という若さであった。帯には指導教官でもある上野千鶴子が「新進気鋭の社会学者の登場」との推薦文を書いているが、私もそう思う。他のレビュアーは、調査手法の拙さ、などから本書を評価していないものもいるが、この著書が凄まじいところは、原発というメディアを通じて、明治維新以降の中央の地方支配の深化、そして日本の成長神話と服従のメカニズムをみたというその視座であり、その眼力である。私は門外漢であるが、社会学というフィールドの凄みさえ本書は感じさせる。それは、フォーマリティーに則っていないといった方法論に対してのケチな言いがかりが空虚に空回りするような、世の中の構造を分解整理し、それを解説するための論理を組み立てていく、その編集力の凄さであると思われる。若い頃にこんな本に出会ったら、社会学に惹きつけられたかもしれないとさえ思わせる。加えて、本書は3月11日以前に書かれた。そのために原発事故というノイズが入っていないで、フクシマを生み出した成長という欲望をバイアス抜きでしっかりと捉えることに成功している。その事実は奇跡的であるし、その結果、読者は原発立地地区の現実をより客観的に理解することが可能となっている。どっしりとした読後感を覚えた。


「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか

「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか

  • 作者: 開沼 博
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2011/06/16
  • メディア: 単行本



タグ:開沼博
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