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スペインを知るための60章 [書評]

明石書店が出版する「○○を知るための○章」シリーズは結構、好きだ。しかし、本ごとにその内容の質が随分と異なる。いい時はすこぶるよいのだが、悪い時は相当今ひとつなのである。まあ、今ひとつといっても内容に誤りがあるという訳ではなく、内容がすこぶる偏るというだけなのだが、その著者の専門分野のことばかり書かれると、ちょっと本のタイトルに偽りがあるんじゃないか、という読後感を覚える。さて、このスペイン版であるが、その網羅度は決して広くない。文句を言うほどは狭くないのだが、教育問題やカタロニア語の問題などに偏りすぎている。それも、結構、詳しく論じられているのだが、それらの内容は、本書を購入していたことが期待していることではないだろう。この本の読者の需要をはき違えているか、無視しているのであろう。例えば、地理面での記述はほとんど皆無だ。さらに映画を含むポップ・カルチャーも皆無。ペドロ・アルモドバルやペネロペ・クルスのことを一行でも書いてあれば、よかったのにと思うのは私だけではないだろう。バルセロナもカタロニア語のことは書かれているが、ガウディやFCバルセロナのことは皆無。レアル・マドリードも皆無、というかサッカーのことの記述もない。スペインの建築に関してもイスラム建築のことのみ少し触れられているだけで、ガウディの話もそうだが、ドミニクはもちろんのこと最近のビルバオの再開発などは一切書かれていない。さらに、高速道路事情や鉄道事情に関しても書かれていない。ということで、スペインの基本を大雑把に知りたいという読者には向いていない本であると思う。私も読んだ後、不満が残ったが、スペインの教育事情とカタロニア語をとりまく問題、そしてフランコ体制に関しては、意図せず、詳しくなった。


スペインを知るための60章 エリア・スタディーズ

スペインを知るための60章 エリア・スタディーズ

  • 作者: 野々山 真輝帆
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2002/10/25
  • メディア: 単行本



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