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バーゼルの人を優先した都市デザイン事業をチェックする [都市デザイン]

スイスの国境の都市バーゼルを訪れる。昨年の10月にバーゼルを訪れた。そこで都市計画局の方から、幾つかプロジェクトを紹介してもらった。非常に興味深い都市デザインのプロジェクトであったのだが、バーゼルでは時間がまったくなくて、それらをチェックすることが適わなかった。ということで、ちょっと遠いが足を伸ばしてみたのである。

さて、まずはフランスの高速道路をスイス国内まで地下道路で直結させた工事によって上部空間を改変したプロジェクト。これは、基本的にそれまでの通過交通が大幅に削減されたので、トラム優先の空間へと改変されたものだ。トラムが通行するところがアスファルトから芝生へと置き換えられ、さらに歩道と植栽が施されているバッファー空間が拡張され、自動車が走行できるスペースは車両一台分となっている。まあ、しかし、これはそのような情報を知らなければ特に感心するような事業ではない。ただ、山手通りとかが地下に首都高速道路を走らせ、さらにあれだけ上部空間の道路幅を拡張させたにも関わらず、相変わらず自動車優先の空間を整備してしまったことと比べると本当、対象的だ。ちょっと話がずれるが、山手通りは東中野から要町を経由させて池袋とを結ぶトラムを整備すべきであろう。空間的には余裕があって問題がないはずだ。

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次のプロジェクトは、交差点のプロジェクトで、歩道を拡張させたものだ。歩道を拡張して、そこにベンチなどを置いて、ちょっとした広場的な空間として使えるようにしている。交差する道路は袋小路とされているが、これは、この歩道拡張事業の前も植木を置いて、通過できないようにしていた。まあ、それをパーマネントにするのと同時に、植木が置かれていた空間を人々に開放したのである。

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三番目のプロジェクトは、ちょっと面白くて、トラムの駅が従来は、道の真ん中にあったのだが、それを歩道側に移し替えたというものだ。これによって、トラムの利用者は、乗車時、降車時に道路を横断しなくてもよくなった。じゃあ、自動車はどうなるのか、というとトラムが停車中は停車して待っているのである。日本の多くの都市からトラムが撤去されたのは、まさに、このように自動車の円滑な走行を妨げていたためであるが、バーゼルでは、そのような自動車に不便な状態に逆戻りさせている。よく、よい都市計画をするには、自動車をいじめるべきだと言われるが、これは本当に自動車苛めで、ちょっと驚く。バーゼルの都市計画、都市デザインの偏差値は高いとは薄々と感じていたが、これは相当、人優先、公共交通優先という考えが市民に共有されていないと出来ないであろう。地味ではあるが、たまげたプロジェクトである。

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あと自転車利用者に配慮した都市デザイン的工夫が多く見られたのが興味深かった。これは、最近の取り組みであると思われるが、ある意味で、自転車先進都市並みのインフラがつくられているような印象を受ける。これは、ここ数年の取り組みのようだが、取り組み始めるとあっという間に実行してしまう。これも日本の都市とは違うところだ。

まあ、どれも驚くようなプロジェクトではない。お金もかかっていないであろう(二つの高速道路を直結するプロジェクトは多額なお金がかかっているが、上部空間のそれはたいしたものではない)。しかし、「都市の針治療」的な効果はあるのではないかと思われる。バーゼルは地味だが、しっかりと都市計画、都市デザインが行われている都市であると思う。地味ではあるが、例えば3つ目のプロジェクトなどは、日本では本当に不可能に思える。簡単なようでいて、極めて実現が難しいプロジェクトではないかと思わせられた。

タグ:バーゼル
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