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『宇宙船地球号 操縦マニュアル』 [書評]

バックミンスター・フラーが1969年に発表した「Operating Manual for Spaceship Earth」の新訳。全ページ210のうち、フラーの文章を訳したものは139ページで、残りはフラーの年譜、そして訳者による注釈、さらには訳者の後書き。しかし、このフラーの年譜、そして訳者の注釈は付けたしというようなものではなく、この20世紀のレオナルド・ダヴィンチと称される発明家の代表的な著作を読み理解するうえでは、極めて有益である。フラーの基本的な考え方、特に「宇宙船地球号」というコンセプトを理解するうえでは不可欠の、フラー入門書である。以下、幾つか印象に残った文章を引用させてもらう。本書はこのような金言に溢れている。

(以下、引用)

建築家とか計画家、とりわけ計画家は、専門家と位置づけられてはいるものの、ほかの職能より多少は広い視野をもつ。彼らは人間として、しばしば専門家の、とりわけ施主である政治家の偏狭な視野と戦わねばならないし、今や亡霊にすぎないが、かつての大海賊たち、彼らの大権から引き継がれた財政、その他の法律とも戦わねばならない。

私たちが進めているのは、真の民主主義の手続きだ。中途半端な民主主義は多数派の独裁を受け入れて、自分勝手な、それゆえ自然に反する法律をつくってしまう。

富とは私たちの組織化された能力で、私たちの健全な再生が続けられるように、また、私たちの未来の日々を物質的、超物質的に制限する要因をなるべく減少させるように、環境に対して効果的に対処していくもの。

エネルギーを得るために「宇宙船地球号」本体を燃やすこともできるけれど、そんなことをしていたら、未来はお先まっくらだ。

そう、だからイニシアティブをとるのは計画家であり、建築家であり、技術者なのだ。仕事に取りかかって欲しい。とりわけ協働作業をして、たがいに抑制し合ったり、他人の犠牲で得をしようなどとはしないで欲しい。

(以上)


宇宙船地球号操縦マニュアル (ちくま学芸文庫)

宇宙船地球号操縦マニュアル (ちくま学芸文庫)

  • 作者: バックミンスター フラー
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2000/10
  • メディア: 文庫



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