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石見銀山と出雲大社を訪れ、世界遺産登録に関して考察する [グローバルな問題]

自動車で山陰道を走っていた。石見銀山が6キロメートルと書かれていた標識があったので、6キロメートルならちょっと寄ろうということで寄ってみた。石見銀山は世界遺産に登録されるまで、私はその存在をほとんど知らなかった。私的には、世界遺産に登録されたことでその存在を認識したということで、世界遺産登録による宣伝効果が極めて高かった事例である。さて、あまり期待せずに訪れたのだが、期待を裏切って充実していた。同じような鉱山系の世界遺産としては、チェコのクトナー・ホラやポーランドのクラカウの岩塩採掘所などに訪れたことがあるが、それらに比べてもまったく遜色ない。日本人の律儀さが反映された、しっかりとした展示が為されていて好ましい。石見銀山のような観光知名度が低かったところは、なるほど世界遺産に登録されることの集客効果は高いのかもしれない。逆に平泉のように既に観光地として知られているところは、それほどの効果は期待できないかもしれないと考えたりもする。

その後、出雲大社を訪れる。ここも初めてである。生憎、修繕中であったのだが、その存在感に圧倒される。いやはや、これはなかなか素晴らしい。さて、しかし、この出雲大社は世界遺産に登録されていない。伊勢神宮もそうだ。

世界遺産の登録基準は下記の通りである。
1) 人類の創造的才能を表す傑作である。
2) ある期間、あるいは世界のある文化圏において、建築物、技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展における人類の価値の重要な交流を示していること。
3) 現存する、あるいはすでに消滅した文化的伝統や文明に関する独特な、あるいは稀な証拠を示していること。
4) 人類の歴史の重要な段階を物語る建築様式、あるいは建築的または技術的な集合体または景観に関する優れた見本であること。
5) ある文化(または複数の文化)を特徴づけるような人類の伝統的集落や土地・海洋利用、あるいは人類と環境の相互作用を示す優れた例であること。特に抗しきれない歴史の流れによってその存続が危うくなっている場合。
6) 顕著で普遍的な価値をもつ出来事、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または明白な関連があること(ただし、この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。
7) 類例を見ない自然美および美的要素をもつ優れた自然現象、あるいは地域を含むこと。
8) 生命進化の記録、地形形成において進行しつつある重要な地学的過程、あるいは重要な地質学的、自然地理学的特徴を含む、地球の歴史の主要な段階を代表とする顕著な例であること。
9) 陸上、淡水域、沿岸および海洋の生態系、動植物群集の進化や発展において、進行しつつある重要な生態学的・生物学的過程を代表する顕著な例であること。
10) 学術上、あるいは保全上の観点から見て、顕著で普遍的な価値をもつ、絶滅のおそれがある種を含む、生物の多様性の野生状態における保全にとって、もっとも重要な自然の生育地を含むこと。

 伊勢神宮にしろ、出雲大社にしろ、明らかに3)、4)、6)の条件は満たしているであろう。それなのに世界遺産に登録されていないのは、おそらく日本政府が申請していないからだろう。なぜ、申請していないのか。それは、あくまでも推測の域を出ないが、日本的文化を西洋的な価値観である世界遺産に審査されるような屈辱を避けたいからだと考えているからではないのか。
 まあ、世界遺産は極めて西洋的な価値尺度で決められるから、もしそのような考えであればしっかりしている。
 しかし、そのように考えると、日本人の世界遺産好きという傾向は興味深い。日本人ほど世界遺産が好きな国民は寡聞にして知らない。この極めて西洋的な価値観で決められるブランドに、日本人がこれほど興味を惹かれながら、一方で真打ちのような出雲大社や伊勢神宮を申請しないというプライド。これが共存するというところが、日本人の特異なところなのではと考えたりもする。


タグ:世界遺産
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